珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

竜連れ6-1

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)


 第六話 不死の支配者 (1)

 旅装束に身を包んだ一行が、石だらけの平地を歩いている。先頭は、背が低く筋肉で膨れ上がった身体のドワーフ族の男。豊かな銀のひげを揺らせている。
「こっちで間違いないか?」
「現座標、北緯三十七度三十八分三十秒、東経百四十度五十八分五十九秒……目的地まで直線距離で百七十八キロメートルです、リュシアス」
 少し下がって歩く丸眼鏡の若い女性がそう告げた。その絹のような白髪を結い上げたシニヨンを後ろから指でつついたのは、赤い天然巻毛の少女だ。
「ビャッコ姉が飛ばしてくれたら、すぐ着くのにぃー」
「もうヒューマン族の生活圏に入るから、目立つ行動はダメって言ったでしょ、スザク」
 赤髪の少女を諫《いさ》めたのは、緑がかった透明な翅《はね》をもつ身長三十センチのフェアリ族の少女。彼女が飛ぶすぐ横を歩いている黒髪の青年が同意した。
「マティの言うとおりだ。先代のカイが、北海道目前まで旅を進めていてくれたことに感謝しないとな。おかげで、マティの〈離位置《テレポート》〉の後、ここまではビャッコに飛ばしてもらって、一時間で来れたんだから」
 九十年前の旅を知っているのは、先頭を歩くリュシアスと隣で浮いているマティだけだ。
「俺達がいた南アメリカから北アメリカを抜けて、日本まで……いくら〈離位置《テレポート》〉で夜は屋敷に戻れたとはいえ、先代は惑星《ほし》の反対側まで歩いたんだ……その苦労は想像を絶するよ」
「そうですね……我々がいきなりここまで来れたのは、エステル様たちのおかげです。そして、ここからは未知の旅……わかっているのは、ヒューマン族の故郷ということくらいです。我々のような異種族は、警戒されるかもしれませんね」
 エルフ族の金髪の男がもっともな意見を言うと、その隣に寄り添っている黒髪の少女がすぐに反応した。
「お父様を傷つける者は、私が許しません」
「ゲンブは、本当にレイウルフが好きなんだなぁ」
 素直な感想を述べたカイリを見て、ゲンブが顔を赤くした。複雑な表情の少女を見おろして、レイウルフが微笑む。
(我が娘の初恋は、前途多難だな……)
 この地では、太陽が東の地平線に貼り付いている。沈まない太陽ではなく、昇らない太陽と言うべきだろう。朝焼けの空は赤いはずだが、カイリには青い空に見える。目が慣れてしまっているせいだ。

 やがて、木の標識にたどり着いた。向こう側に枝振りのいい大きな樹と、簡素な柵が見える。標識にはこの世界の文字が書かれているのだが、その前でがっくりとうなだれるカイリ。
「やっぱり……マティにかけてもらった魔法で言葉は話せても、文字は読めないのか……」
 カイ・リューベンスフィアの屋敷で読んだのは、日本語や英語など五千万年前の言語だけだ。この世界の文字を目にするのは、初めてなのである。
「ふん、俺が読んでやる」
 リュシアスが自慢気に読んでみせた。
「ミ・ソーマ……この先の村の名前みたいだな」
「いよいよ、ヒューマン族のエリアですね……我々の大陸にもヒューマン族の小さな集落はありましたが……こちらにも、エルフ族やドワーフ族はいるんでしょうか?」
 レイウルフの疑問に答えられる者はいない。彼が振り返ると、カイリが少し離れた場所でしゃがんでいた。
「どうしました、カイリ?」
「ん……ちょっとね。ドライアードに頼みごとを……」
 カイリの目の前の地面に、身長わずか十五センチの褐色の肌をもつ緑髪の少女が立っている。じゃあ頼んだよ……そうカイリが呟《つぶや》くと、ドライアードが姿を消した。

「さて……」
 そう言って立ち上がると、カイリが皆に声をかけた。
「レイウルフが気にしていることは、もっともだと俺も思う。たぶん俺達は目立ちすぎるだろう。だから……ここからは、別行動にしよう」
「賛成です」
 レイウルフが即答した。頷いてカイリが話を進める。
「リュシアスとレイウルフは、中の様子がわかるまで待っていてくれないか。本当にヒューマン族だけの村だった場合……君達が姿を見せたら、何が起こるかわからない」
「反対だ」
 即答したのは、リュシアスだった。
「ここはヒューマン族のエリアの中でも、まだ辺境だろう……種族が何だろうと、よそ者が目立つことには変わらん」
「…………」
 リュシアスの言うことにも一理ある……が。
「別行動はかまわんが、俺は待つのが嫌いなんだ」
 腕組みをして、あっさりと本音を吐くリュシアスに、思わず顔が笑ってしまうカイリ。
「……わかった。リュシアスもレイウルフも一流の戦士だ。ここが敵地だと思って行動してくれれば、それでいい」
 うむ……と、リュシアスが満足した笑みを見せた。村の反対側に抜けたところで待ち合わせることだけを決める。
 この村を抜けた後も、おそらくヒューマン族が暮らすエリアの中心へ向かうことになる。これからの旅がどんなものになるのか……それを占う大切な一歩だ。
「俺達から行く」
 尖った耳を隠すようにターバンを巻いたリュシアスが、ローブのフードを深くかぶったビャッコと共に柵を越えていった。
「では、私達も……」
 次は、レイウルフとゲンブだった。レイウルフは、バンダナで長い耳を隠した上に、さらにローブのフードをかぶった。振り返ってカイリに微笑む。
「旅人として、あっさり抜けられるとありがたいですね。おとなしい村人なら、噂のネタにはしても、よそ者に関わろうとはしないでしょう」
 柵のそばに衛兵の類《たぐい》はいない。ここまで凶暴な生物に出くわすようなことはなかったし、盗賊の出没を警戒する必要もないのだろう。平和な村なら、簡単に抜けられる可能性もあるのだ。
 最後が、カイ、マティ、スザクの三人だった。外見で気を付けなければいけないのは、マティだ。フェアリ族最後の生き残りであるマティは、この地でも極めて珍しい存在に違いない。
「きつくないか?」
「大丈夫です」
 ゆったりとしたカイリの上着の内ポケットに身を隠したマティは、その翅を小さくたたんで顔だけを出していた。

   *

 カイリ、マティ、スザクの三人が柵を越えた。
「…………!!」
 カイリの動きが止まった。
「どうしたの、カイリ?」
 振り返るスザク。カイリがいったん柵の外に戻った。それから、もう一度柵の中に入ってくる。
「どうしたの、カイリってば?」
 不思議そうな顔のスザクに、苦笑いを見せるカイリ。そして独り言のように呟いた。
「まいったな……」
「???」
 スザクは、カイリが何を言っているのか、わからない。
「マティは、感じるか?」
 カイリの質問に、くぐもった声が答えた。
「かすかに……魔力を奪われる感覚……と言ったら、いいでしょうか」
「そうだな……俺は、ナノマシンにそっぽを向かれたような気分だ……」
 人は、魔法を使うと世界とつながったような感覚を持つ。それは、脳が感じるナノマシンとの一体感に起因していて、使った魔法の汎数《レベル》に応じて、その感覚が強くなる――カイ・リューベンスフィアの屋敷で読んだ本からの知識だ。
 気がつくと、スザクの顔がカイリの目の前にあった。
「どうしたのか、教えてよ!」
「ああ、ごめん。どういうわけかは、わからないけど……どうやらこの村では、魔法が使えないらしい……」
「えぇっ!?」
 驚くスザク。
「でも、リュシアスもレイウルフも、平気で入っていったよ? 私も特に変わった感じは……」
 カイリの広い襟元から、マティが顔だけを出した。
「レイウルフは、汎数《レベル》1までの魔法しか使えないから、小さすぎる変化に気づかなかったのだと思います。リュシアスは、もともと魔法を使えないから、問題外」
 カイリが考えるように言葉をもらして、補足した。
「竜は、ナノマシンとのやり取りに、呪文を必要としないからな……そう考えると、ナノマシンは存在しているのに、呪文の受理だけを拒否されているってところか……」
 試してみる。〈離位置《テレポート》〉で一センチだけ移動する呪文を唱えてみた。
 ……いつもは白く光るはずの地面が、無反応……もちろん、〈離位置《テレポート》〉もできない。
「私が……」
「よせ」
 何かを試そうとしたスザクを、カイリがすぐに止めた。
「お前たちが力を使うと、セイリュウに気づかれる。向こうが動きを見せない以上、こちらも簡単に動きを見せるのは得策じゃない」
「う……うん」
 世界を救う旅に踏み切ったものの、四体目の竜・セイリュウについては、全く情報がないままだった。箱に入った卵のままなら問題ないが、すでに誰かの支配下にいる場合……その存在が好意的か敵対するのかは、その主人しだいである。
「俺達のことを、ヒューマン族はまだ知らないはずだ。罠ってわけでもないだろうから、できるだけ穏便に、ここを抜けよう……」
 頷くマティとスザク。三人は、未知の村へ足を進めた。

 大きな樹の枝の上から、カイリ達を見おろすヒューマン族の人物がいた。身なりがいいとは言えない。口元が隠れるほどマフラーを高く巻き、帽子を深くかぶっていて顔は見えない。
「幻のフェアリ族を連れた男……ただの若造に見えるが……あれが、王の客人に違いない」
 女の声だ。下側の枝に控えた男が進言した。
「すぐに仲間を集めましょう。今なら、村人にも気づかれずに……」
「いや……」
 女は慎重だった。
「村長とは、話がついている。しばらく様子を見よう」
「御意」
 ヒューマン族が暮らすエリア……そこは、二千年を生きたマティさえ、初めて訪れる領域である。この地からも見える天空の光点・ピージが、村の真上を通り過ぎていくところだった。

 ~(2)へ続く


コメント

こんにちは。アップお疲れ様です。
今週はあらすじだけで終わりなのかと思っていたので
続きが読めてうれしいです。ありがとうございます。

ミナミソーマ村って、現地球の福島県南相馬市あたりのことなのでしょうか?
ビャッコが言っている緯度経度ですが、西経百四十度だとアメリカ大陸側にならないでしょうか?日本側だと東経だと思うのですが。間違っていたらすみません。
舞台が日本に移ったことで、どのあたりを歩いているのか気になって
調べてみたりしたものですから・・・

話は変わって、新たなキャラが登場しましたね。
カイリたちを「王の客人」と呼んでいる割に客人扱いしていないようです。
遠くからコソコソと眺めてみたり・・・でも何か知ってるっぽい

◆Aryuさん
こんにちは。
ありがとうございます。
毎週日曜日は、朝から小説書きの時間なのですw

村の名前は、後で少しだけ変えることにします。
うん、由来はその通りなのでw
で、びっくりしました。
おかしいな、自分では東経と書いたつもりでいたのに、確かに西経と書いてあるっΣ( ̄▽ ̄;
これも後で直しておきます~。
親切なご指摘、ありがとうございます!

日本と言っても、五千万年後の日本ですから、何でもありなんですけどね……一応現代の日本の位置を少しは気にしていることがもうバレてしまいました。
逆に、プレートテクトニクスでどれくらいずれるのかとかは気にしていませんw

新キャラについては、ノーコメントにしておきますっ。

いよいよ、PTでの冒険がはじまった!

これから、どんな敵が出て来て、どんな難関があるのか
楽しみですw

◆Leppardさん
いつもコメントをありがとうございます!
これはネタバレとは違うと思うので、少し書いてしまうと、ファンタジーの冒険のようにはならないかもです、ごめんなさい。
……モンスターとか出てきてないし……ジャンルをSFにした方がいいのかなぁ……SFというほど、科学的考察をしていない気もする……( ̄▽ ̄;
難関はたぶんありますw

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