ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
→遭遇リスト

駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ6-2

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1)


 第六話 不死の支配者 (2)

「なあ、マティ……ヒューマン族っていうのは……」
 カイリのいぶかしむ声が低く漏れた。村に入って、二百メートルは歩いただろう。最初に痩せた畑で見かけた中年夫婦も、貧しそうな家々の前ですれ違う少年少女さえ、陰鬱な重い雰囲気をまとっていた。皆、耳が尖っていないヒューマン族だ。その誰もが、村に入ってきたカイリとスザクにほとんど関心を示す様子がなかった。
「なんと言うか……暗い性格の種族なのかな」
「…………」
 カイリの襟元から少しだけ頭を出したマティは、キョロキョロとあたりを見回してから考え込んだ。
「私の知っているヒューマン族は、エルフやドワーフよりも活気がありましたけど……こちらでは違うのでしょうか…………あ!」
 マティが声をあげた時には遅かった。スザクが道を歩いていた少年に走り寄って、正面に立ったのだ。ぶつかりそうになった少年が驚いて顔を上げた。
「な……何だよ、俺は忙しいンだよ」
「ねぇ、何が忙しいの?」
 赤い巻き毛を揺らして、にっこりと微笑むスザク。光がこぼれるような笑顔だ。
「なんだ、お前……」
 スザクと目を合わせた途端、少年の声が消えた。みるみるうちに、顔が赤くなる。
「う……あ……」
「ん?」
 カイリには、少年の気持ちが手に取るようにわかった。竜たちは皆、日本人好みの一流の美人・美少女にデザインされている。暗い雰囲気を漂わせている村人を見慣れている少年にとって、スザクは輝く天使にさえ見えたかもしれない。
「う……うるせ……」
 少年がスザクから視線をそらすように、美少女の連れであるカイリ達の方を見た。そして少年の動きが止まった。
「…………!!」
 驚きに顔色を変える少年。しまった……と思ったのは、カイリとマティが同時だったろう。
 ――マティが顔を出したままであった。
「う……うぁあ!」
 カイリとマティを交互に見つめた少年は、スザクの存在を忘れたように、きびすを返して走り去っていった。その方向は、道の先……村の中心と思われる方角だ。
「もう出ていいよ、マティ……いきなり失敗しちゃったなぁ」
 力を落とすカイリの襟元から、マティが飛び出した。カイ・リューベンスフィアの上着についている内ポケットはかなり大きかったが、それでもマティにとっては狭かったに違いない。
「……それにしても、驚き方が普通じゃないような……なんだか失礼だわ」
 スザクには顔を赤くしたくせに……という心の声が漏れそうになり、慌てて口をつぐむマティ。カイリがポツリと言った。
「……嫌な予感がするな」

10032504.jpg
イラスト:J様

   *

 他人に無関心な村人達の様子から、先に行ったリュシアスやレイウルフ達は、無事に村を抜けられるだろうと思われた。心配なのは、マティを見た少年の反応が異常に大きかったことだ。
 ……悪い予感が的中した。
 早足で歩くカイリ達の前に、数人の大人が現れて道を塞いだのだ。中心にいるのは老人である。不穏な雰囲気はない……全員が、カイリに頭を下げた。
「カイ・リューベンスフィア様ですな……村長のヌルクスと申します」
「……どうして、その名前を?」
 おかしな話だった。過去のカイ・リューベンスフィア達は、この村どころか、北海道にさえ上陸していないはずである。こちらの人間がその名を知っている理由がないし、ましてやカイリ達の登場を待っていることなど、ありえない。先代が死んだのは九十年前のことであり、カイリがこの世界に現れたのは、ほんの八日前のことなのだ。
 ヌルクスが頭を下げたまま言った。
「昨夜、王より命令がございました。フェアリ族を連れた者は、王の客カイ・リューベンスフィア様であり、村に泊めて王と同等にもてなし、王の到着を待て……と」
「…………顔を上げてください」
 村長と目を合わせる……何かを企んでいるようには見えない。むしろ怯えているようにさえ感じられる。
「カイリ……」
 不安そうなマティに、「ああ」とだけ答えた。
「俺達には約束があって、先を急いでいます。どうかおかまいなく」
 リュシアス達を待たせることになるのは本当だが、村長の反応を見る意味もあった。
「それでは……」
 村長の顔が、真っ青になっていた。
「村の者全員が、〝粛清〟されてしまいますのじゃ! どうか……どうか、この通りでございます!」
 村長を含めた村人たちが、地面に額をこすりつけていた。演技とは思えない必死さが伝わってくる。
「〝粛清〟……って……。俺達がとどまらなければ、村人全員が殺されるというんですか?」
「……おっしゃる通りでございます」
 沈黙が訪れた。村長たちが、カイリの返事を待っているのだ。
「や~な感じの王様だねっ」
 スザクの何気ない言葉に、地面に顔を伏せたままビクリと反応する村長と村人たち。 
 カイリが溜息をついた。
「……わかりました。宿に、ご案内願います」
「ありがとうございます」
 その言葉に、心からの安堵がにじみ出ていた。

   *

「お連れのお二人は、こちらへ」
 王の客とその連れでは、もてなし方が違うのだという。カイリと離れることに抵抗を示したマティとスザクだったが、〝王の命令〟と〝粛清〟の言葉が出ると逆らえなかった。この村の人々には何の義理もないが、恨んで死んでいかれるのはカイリとしても気持ちのいいものではない。ましてやマティなら〝世界を救うのは、この村の人々のためでもある〟と言うはずだ。
 魔法が使えなくても、スザクがいればマティは大丈夫だろう。……心配なのは自分の方だな、とカイリは思った。この村では、事前詠唱の〈衣蔽甲《シールド》〉も発動しない……刃物で刺されるだけで簡単に死ねるのだ。

 通された大きな部屋の食卓には、豪勢な料理が並んでいた。痩せた畑とみすぼらしい家々しか見ていないカイリには、どこからこれだけの食材が出てきたのか不思議だった。わずかな食料のほとんどを、王のために備蓄しているということなのだろう。
 部屋には、綺麗に着飾った女性二人だけが残り、給仕をした。村長の話では、以前村に〝巡回〟に来た王をもてなした母娘《おやこ》だという。娘は十四、五歳だろう。母親の方は、姉かと思えるほど若く見え、二人とも美しい。母親はランファ、娘はリンファと名乗った。
「では、私から」
 驚いたことに、カイリが何も言わなくても、母親のランファが、続けて娘のリンファが毒見をした。なるほど、前回の王への接待で、王から命じられた手順なのだろう。そのことが、信頼ではなく、恐怖によって支配する王であることを裏付けていた。民から恨まれていることを知っているのだ。

「くそ、俺は耐えられん!」
 木製のテーブルを叩いたのは、角刈りで筋肉質の大きな男だった。カイリが通された二階建て宿屋の下の階である。テーブルを村長と数人の男達が囲んでいた。
「落ち着くんじゃ、ダイキ……ワシらにはどうにもならん」
 なだめる村長に、ダイキと呼ばれた男が叫んだ。
「村長も知っているだろう! ランファの旦那リューイと俺は、子供の頃から親友だったんだ。それを王は……村で見かけた母娘《おやこ》が気に入ったというだけで、リューイを〝粛清〟しやがったんだぞ……!」
「こ……声が大きいぞ、ダイキ」
 オドオドと天井を見上げる者、周囲を見回す者。しかし、頭に血が昇ったダイキの口は閉じなかった。
「ランファとリンファは、旦那を……父親を殺した王に、感謝の言葉を口にしながら夜を共にさせられたんだ! どんなに……どんなに悔しかったか……苦しかったか……」
 最後は涙声になっていた。彼女たちが、どのような奉仕を強制されたのかは、わからない。……ただその後、村人が母娘《おやこ》の笑顔を目にすることは二度となかった。

「いっそ、刺し違えてでも仇《あだ》を討《う》つ気にはならんのか」
「母娘《おやこ》で互いを人質に取られているようなものでしょう、酷いやり方です」
 村長と村人数人が集まる一階の部屋入口に、背の低いがっちりした体格の老人と、背の高いほっそりとした男が立っていた。
「誰だ、お前たちは!?」
 ダイキが叫ぶと、村長のヌルクスがつぶやいた。
「昼に村を通った者たちじゃな。どこの者かは知らんが、今はたて込んでおる。さっさと村から出ていってもらいたい」
 待てよ、村長……と、銀のひげをたくわえた老人が、真剣な顔で提案した。
「可憐な母娘《おやこ》が毒牙にかかる前に、今来ている客人とやらを俺達が殺してやろう。なぁに、心配はいらん。俺達よそ者が勝手にやることだ」
「な……何を言っておるんじゃ、そんなことをしたら……」
 慌てる村長の肩に、手を置く者がいた。ダイキだ。
「面白い提案だ……が、目的は何だ?」
「俺の名は、リュシアス……いい女の涙が見過ごせないだけだ」
 やれやれという手振りの後、金髪金目の男が笑顔を見せた。
「レイウルフと申します。ご安心ください、これでも腕はたちますし……すぐにここから去るつもりですから」
 村長が何かを言おうとする前に、ダイキが声をあげた。
「よし、今から三人で上に行こう! 村長、これが終わったら、俺は村を出るからな。なぁに、王自身を相手にするわけじゃない。すぐに……」
「待て」
 女の低い声が、ダイキの勢いを止めた。入口とは逆にある奥の扉が開いている。マフラーを首に高く巻き、帽子を深くかぶっていて顔が見えないヒューマン族の女。彼女を中心に、一クセも二クセもありそうな五人の男が奥の部屋にいた。
「何だ、こいつら……村長が呼んだのか?」
 ダイキのセリフに、憂鬱な表情を見せるヌルクス。
「そうじゃ……とは言えん。ワシは、話を受けただけじゃ。この者達が何者か……お前たちは知らん方がええ」
 女が指でマフラーを下げ、色っぽい口元だけを見せてニヤリと笑った。
「いや、知っておいてもらおう……地下抵抗組織《レジスタンス》〝ハイランド・ホーク〟。私がリーダーのアンジェリカ……この国を救う者だ」
 部屋の中がざわついた。あのハイランド・ホークだって……? そんな声が聞こえ、名の知れた組織であることがわかる。そのアンジェリカが、きっぱりと言った。
「だまされるな……そのコンビは、王の客人の仲間だ」
 リュシアスとレイウルフが、顔を見合わせた。

 ~(3)へ続く


コメント

次回は リュシアス vs ダイキ 「脳筋」対決!!?

名前はアンジェリカ
マフラーと言えばコーネリア
でも、想像したキャラはライオンでした(笑)

◆Aryuさん
ライオンきたw
話を早く進めたいという勝手な都合により、見せ場はあまりないかもですw
さくさく進めたいです、さくさく……さくさ……く……無理かな~( ̄▽ ̄;

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。
トラックバックURL

HOME

駅メモ関連リンク
最新の記事
最近のコメント
駅メモ!便利ツール
駅メモ!個人サイト
ブログ内検索

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

月別アーカイブ

プロフィール

  • Author:笹谷周平(ささやか)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

カテゴリ
旧知リンク
商標/著作権等