珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

竜連れ6-3

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2)


 第六話 不死の支配者 (3)

 後ろ手に縛られ、縄で腕や脚ごとグルグル巻きにされたリュシアスが言った。
「さっさとカイリを連れ出して、村を抜けようと思っただけなのに……うまくいかんものだな」
 隣で同じように縛られて、ブツブツ言っていたレイウルフが答えた。
「ここで争うと、話がややこしくなると思っておとなしく捕まりましたが……こうなると、ゲンブ達を村の出口に置いてきたのは失敗だったかも知れませんね」
「がははは!」
 笑うリュシアス。
「ここにビャッコがいたら大変だったぞ。俺以外の男があいつに触ろうものなら、みんな吹き飛ばされておったわ! あいつを初めて連れ帰った時は、大変だった……」
 苦笑いを浮かべた後、レイウルフが真面目な顔で言った。
「実は、先ほどから魔法で縄を切ろうとしているんですが……魔法が発動しないんですよ」
「なに……実は、俺もドワーフ族で一、二を争う腕力で引きちぎろうとしてみたんだがな。丈夫な縄で、さっぱりなんともならん」
 二人で溜息をつく。ここは、狭い納屋の中。近くを人が通る気配もなかった。

   *

「ねぇ、マティ。いつまでここにいればいいのかな?」
 スザクの幼い声が、暗く狭い石造りの部屋の中でこだました。フタ付きの壷が一つ置いてあるだけで、他には何もない。部屋の明かりは上の方にある小さな窓一つ。そこには鉄格子がはまっていた。
「ヒューマン族のもてなし方って、変わってるよね~」
 黙ったままのマティに、同じ調子で話しかけるスザク。ようやくマティが口を開いた。
「スザク……。ビャッコやゲンブがどこにいるか感じられる?」
「うん!」
 結構遠くにいて、そこから動いていないことをスザクが説明する。それから、おもむろに部屋に置いてある壷のフタを取って中を覗いた。おもいきり顔をしかめる。
「……くさっ!!」
「……ばかね、それはこの部屋のトイレよ……精霊《スピリット》系のスザクには、用がない物」
 うぅ~と、涙を浮かべて唸るスザク。マティが真剣な顔で言った。
「そうね、ビャッコ達が動いたら、スザクもここを出て合流しなさい。壁を破っていいから」
「え……マティは、どうするの?」
 すいっと上に飛ぶマティ。鉄格子がはまった小さな窓の縁にたどりつく。
「カイリを見にいくわ。あっちだけ豪勢なもてなしだったら、ずるいじゃない?」
 そう言いながら、鉄格子の間をすり抜けるマティ。スザクが驚いた。
「ず……ずるいのは、マティだよ! 私も行きたい!」
「あなたは目立ち過ぎるから、もう少しだけそこにいなさい」
 それだけを言い残して、マティが窓から消えた。
「ちぇーっ!」
 不満そうなスザクの声が、村に一つだけある牢の中で響いた。

   *

 風が強いのか、閉ざされた窓がガタガタと音を立てている。間もなくピージが西の山に隠れようとしていた。
 綺麗な服を脱ぎかけた美しい母娘《おやこ》の前で、カイリが溜息をついた。
「そんなに哀しい目の人を見たのは初めてです」
 二人の動きが止まった。何かを言いかけるのだが、すぐに口を閉じてしまう。
「……この国の王って、どんな人なんですか?」
 ぶるっと震えて身を寄せ合う母娘。答えてもらえそうもないことを悟り、カイリが目をそらした。
 視線の先に窓があり、そこに外からガラスをたたく身長三十センチの少女がいた。フェアリ族のマティだ。驚くカイリが、マティのジェスチャーに気づくのに一秒かかった。
 マティが必死で、カイリの背後を指差している……。
「お楽しみ中のところを悪いが……」
 振り返ったカイリの目の前に、剣の切っ先があった。
「我々が王から力を取り戻すための、人質になってもらうぞ」
 帽子とマフラーで顔が見えない女がそこにいた。背後には五人の男達。状況が理解できないまま頷く。
「わかりました」
 今の魔法が使えないカイリは、ただの高校生にすぎない。従うしかなかった。

 部屋の中で手際よく縛られたカイリ。後ろ手に縛られたうえに、腕の上からも縄を巻かれている。地下抵抗組織《レジスタンス》ハイランド・ホークのリーダー、アンジェリカが声をかけた。
「その縄は、家の精《ブラウニー》に作らせた特別製だ。ドワーフの怪力でも切れんぞ」
 ハイランド・ホークの一人が、カイリを見おろして顔をしかめた。
「こんな小僧が、ほんとに王の客人なのかねぇ? だいたい、他の人間を家畜くらいにしか思っていないあの王に、客人がいるってのが、どうも俺には信じられねぇんだよなぁ」
「黙ってろ、ディール。だからこそ俺達は、この話に賭けたんだ。名高い俺達も、あのエルフ女のせいで今は無力だってことを忘れるな」
「へいへい、エシィはいつも真面目だねぇ」
 二人のやりとりの間、カイリを見おろす他の男達は黙ったままだ。いきなり、アンジェリカがカイリのアゴを持ち上げた。
「お前に人質の価値がなければ、我々もここまでだ。お前が王の唯一の弱みであることを期待したい」
「……マティは、無事なのか?」
 にらみ返すカイリを見て、アンジェリカがにやりと笑った。
「ほう、金持ちのボンボンかと思ったが、そんな目もするんだな。心配するな、眠り液で眠っているだけだ」
 カイリのそばの床の上で、マティが寝息を立てている。
 その時だった。
 アンジェリカの背筋に、ゾクリと冷たいものが走り抜けた。その場の全員が、部屋の一角を振り返る。縛られたままのカイリが目を細めた。
 部屋の中を支配する本能的な恐怖。それを作り出している存在がそこにいた。いきなり出現したとしか思えない一人の男と、一人の女。
 〈離位置《テレポート》〉だ……そう確信するカイリ。魔法が使えないと思っていたこの村では、〈離位置《テレポート》〉で消えることはもちろん、出現することだって不可能なはずだ。それができるのは……。この魔法を使えない場所を作り上げた本人に違いない、とカイリは思った。他人の魔法を封じ、自分は魔法を使いたい放題……そんな都合のいい仕掛けを、どうやって作ったのであろうか……。
「王……」
 アンジェリカが、それだけをつぶやいた。王と呼ばれた男は、グレーの髪と瞳、そしてあごひげを持ち、ゆったりとしたラフな格好をした初老の男だった。その横にいるのは、紺色のチャイナドレスを身に付けた若い女性で、短くカットされたライトブルーのストレート・ヘアと深く青い瞳を持っている。まるで湿ったようにしっとりとした白い肌が印象的で、その首には、皮製の黒い首輪が付けられていた。
 王がぼそりと言った。
「お前が二十一代目か……一代で竜を三匹も手に入れるとはな……こんな子供とは思わなかったぞ」
「…………」
 誰も発言できる雰囲気ではなかった。カイリは、絶対的恐怖を押し付けているオーラが、実は王ではなく隣の女性からであることに気づいた……が、彼女が王に従っている以上、同じことだ。そして、このオーラをカイリは知っている。
(こんな形で、最後の竜に出会うことになるとは……)
 王が、今頃になって気づいたように、アンジェリカの方を向いた。
「なんだ、お前たちか……サルネイアに力を取られて、大人しくなったと思っていたのだがな……」
 我に返ったアンジェリカが、かろうじて口にした言葉は弱々しかった。
「お……前の客人は、我々の手の中だ。おとなしく……」
 カイリに向けられた剣の先が震えている。不愉快そうな顔をした王が、面倒そうに腕を一振りした。同時に、アンジェリカの身体が、部屋の壁まで吹っ飛ぶ。
「アンジェリカ!」
 仲間の声が飛んだ先では、アンジェリカがぐったりとして動かなかった。
 ――事前詠唱魔法だ。おそらく汎数《レベル》1の〈放底《メイジハンド》〉。大した魔法ではないが、普通の人間には驚異である。
「よせ、ディール!」
「うるせえっ!」
 ディールと呼ばれた男が、大声を上げて王に切りかかった。無謀だった。王が動く前に、男の全身が赤くなった。真っ赤に染まったのだ。口、鼻、耳はもちろん、目や全身の毛穴から血が吹き出していた。そのまま床に転がった身体は、赤い血の塊にしか見えない。
「ナノマシンは、人の身体の中にももちろん存在している。セイリュウが生きた人間の血液を操ることなど、造作もないことだ……」
「……!」
 王の言葉に、カイリは耳を疑った。〝ナノマシン〟……その言葉を、確かに口にしたのだ。
「おまえは……」
「言葉に気をつけろ、小僧。顔を見てみたかっただけでな……お前ら全員、すぐに殺してやるから、安心しろ」
 誰も何もできない。このヒューマン族の王の前では誰も逆らえない。そう思えた、その時。
「な……に……」
 余裕を見せていた王の顔が、初めて苦痛に歪んだ。ゆっくりと自分のわき腹を見おろす王。少女がいた。死角から忍び寄った少女が、両目から涙を溢れさせている。その手に、果物ナイフが握られていた。
「リンファ……」
 離れた場所で、母親も涙を流していた。二人とも死を覚悟しているのだ。
「父の……仇《かたき》……」
 ナイフを王の身体に押し込む少女。少女の身体が返り血で赤く染まっていく。王が少女を突き飛ばした。
「ふん……お前たちは殺さん……後で、たっぷりと仕置きしてやる。死にたいと思うくらいのな」
 王の出血はすぐに止まった。セイリュウが止めたのだろう。やはり事前詠唱の〈産触導潤《キュア》〉で瞬時に傷を治療する王。わずか一、二秒でも隙があるように見えるが、もはや動こうとする者はいなかった。その中で、カイリの視線に王が気づいた。
「なぜ〈衣蔽甲《シールド》〉を事前詠唱しておかないのか……という顔だな」
 王が、独り言のようにつぶやいた。
「簡単なことだ。〈衣蔽甲《シールド》〉が発動すると、快楽が得られんからな……」
 くくくと笑いながら、血まみれで横たわる少女を踏みつけ、母親のランファを呼びつけた。ナイフでえぐられた傷はすでに完治している。
「お前たちを即死させることなど、いつでもできる。ちなみに……」
 呼びつけたランファが近づくと、震えるその身体に手を伸ばした。
「きさまがアテにしている竜どもは、今頃死んでいるかもな、二十一代目」
 ……カイリの目が見開かれた。

 ~(4)へ続く




コメント

ほほー
こんな形で先代と対面するとは!

自分だけ魔法が使えるなんて、卑怯なところが
ほんと悪役にぴったりな設定ですね。

それにしても、どうやってそんな都合のいいことができるんだろ?
ナノマシンにセキュリティをかけて自分しか使えなく
してるのかな?

リュシアスとレイウルフが 仲良くしてますねー。
お互いに縛られて転がされてる状態で親近感が芽生えたのかな?
登場したころはまじめだったのに、レイウルフがお笑いキャラになっていくよー

◆Leppardさん
こんな形で対面してみました。
どうやってかは、たぶんそのうち出てくると期待したいです……( ̄▽ ̄;

◆Aryuさん
エルフとドワーフが案外仲良くしているのは、とりあえず許容していただくとしてw
レイウルフのキャラ……ついでに言うとリュシアスのキャラも……どうも落ち着きませんね( ̄▽ ̄;
信条は割とはっきりしているのですが、性格をもっと極端にしておけば書きやすかったのになぁ……と思ったりしています……あぁ。

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。
トラックバックURL

HOME

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

最新の記事
最近のコメント
カテゴリ
月別アーカイブ

リンク
プロフィール

  • Author:あず霧絵(笹谷周平/ささ)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

最近のトラックバック
商標/著作権等