ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ7-1

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)


 第七話 惑星《ほし》の守護神 (1)

 短くカットされたストレートの髪の色は、ライトブルー。その瞳は深い蒼色で、紺色のチャイナドレスからは、真っ白な肌がのぞいている。人型に戻ったセイリュウが〝王の間〟に入ると、薄明かりの中に仁王立ちする影があった。
「おい」
「はい、ご主人様」
 王の口数が少ない時は、危険だった。不機嫌な証拠なのだ。彼女は急いで王の前に跪《ひざまず》き、口を開いた。
 ぴちゃぴちゃという音が部屋の中に響いて、十分が過ぎた頃。玉座に移動してゆったりと腰掛けた王が、足元のセイリュウに声をかけた。
「あの小僧の顔を見たところまでは、覚えている。その後、何があった?」
 口元から糸を引く唾液《だえき》を拭うことも許されず、セイリュウが答える。
「天井と床から伸びたドライアードの触覚器《フィーラー》が、ご主人様の身体を貫きました」
「そうか……」

 ここにいるのは、その死から五分前の王だった。
 魔道士が〈離位置《テレポート》〉を唱えると、その身体は一瞬で原子レベルまで分解される。術者の身体の構成情報は、光導波路とグラフェン・ラインを通って瞬時に移動し、出現先で再構成されることで〈離位置《テレポート》〉が完了する。通常、身体の構成情報は再構成と同時に消失するのだが……。
 身体の調子を確かめるように、王が右腕を回した。
「俺の構成情報を五分毎に保存するプログラムは、健全に働いているな。カイ・リューベンスフィアを百年毎に召喚するシステムを応用したものだが……おかげで、元のシステムを破壊するわけにもいかず、あの小僧のような存在が一世紀毎に誕生することになる……」

 現在生きている人間の遺伝子情報を元に、過去に存在した人間の身体の構成情報を予想する。それは、普通に考えれば無理な話だ。様々なランダム要素を交えつつ、たまたま過去に存在した人間に一致する遺伝子情報を見つけることは、できるかもしれない。だが、身体の構成情報を一致させるには、その人間がどのような環境で、何を食べ、何を経験したのかで全く変わってくる。膨大なシミュレーションによって身体のあらゆる成分を一致させたとしても、その人間が持つ記憶情報まで一致させるのは、不可能に思える。
 だが、実際には可能だった。人間とは、その成分も記憶も自分で思っているよりも曖昧なものだ。いくらかの部分が抜けていたり間違っていても、普通に生きている……それが人間なのである。
 ただ不思議なことに、過去に実在した人間でなければ〝造る〟ことはできなかった。それがどのような作用によるものかは、わかっていない。

「サルネイアが見つけた屋敷から本を持ってくることに失敗しなければ、ここにある本の知識とあわせて、さらに都合の良いプログラムに改造できたかもしれんが……どうせこの世界はあと三年しかもたん」
 口数が多くなってきた王に、セイリュウが口を休めて声をかけた。
「ご主人様……」
「なんだ?」
 一瞬の間をあけて、言葉を続けるセイリュウ。
「二十一代目と一緒にいたフェアリ族が、ご主人様を知っているようでした」
「フェアリ族……? ああ、床に転がっていたな」
 しばらくの沈黙の後、王がおもむろに口を開いた。
「俺の記憶にはない……ということは、〝もう一人の〟初代の知り合いだろう。フェアリ族は、長生きだからな……」
 カイ・リューベンスフィアを百年毎に過去から呼び出す〝召喚〟システム……正確には、過去の人間を再現するシステム……それを誰が作ったのかは、わかっていない。それを応用して王が完成させたのが、〝転生〟プログラムである。〈離位置《テレポート》〉によって抽出される身体の構成情報を保存・転送することに成功した。元の身体が死を迎えた場合に、五分前の身体の構成情報を自動で再現してみせたのが、今回の結果である。これとは別に、召喚システムに残る召喚時の身体構成情報から四十歳の肉体を再生し、そこに五分前の記憶を転送することが可能である。こうして王は、二千年の時を生きてきた。
「あの〝エラー〟が、俺という存在の始まりだった。十の三十乗分の一の確率で起きたあの〝エラー〟が……」
 かつて……マティと一緒にいた初代カイ・リューベンスフィアが、〈離位置《テレポート》〉を唱えても〈離位置《テレポート》〉できなかったことが一度だけあった。再詠唱で成功したので、そのまま記憶から消えたのだが……。
 その〝エラー〟で、地球の反対側……大昔に〝日本〟という国があった島に、もう一人のカイ・リューベンスフィアが出現した。この時から、二人の初代カイ・リューベンスフィアが同時に存在することになった。
 もう一人の初代……ヒューマン族が暮らすその島国で、彼は一代で王になった。なぜなら、彼には……〝召喚〟システムが、本来召喚しようとして肉体情報を再現しきれずに断念した人間の記憶情報が転送されていたから。
 かつて、超遺伝子と呼べる詳細な惑星設計プログラムを内蔵したナノマシンを、日本と呼ばれる国のとある研究チームが完成させた。その統括プログラマーである天才的な日本人……どれほど膨大で複雑なプログラムであっても、一度見れば全てを記憶できるという噂の五十六歳の日本人……滝谷海里《たきたにかいり》の記憶が。
 王には、元のカイ・リューベンスフィアの記憶はほとんどなかった。カイ・リューベンスフィアという名を知っているのも、〝召喚〟システムに残されていた記憶情報を読み取ったにすぎない。ただ、この狭い島国にいながら、世界中の情報は常に彼の元にあった。
 ここは、かつてナノマシンの開発室があった場所。かつてのシステムはナノマシンによってまだ生かされており、王は二千年の間に、そのシステムと脳内のナノマシンをリンクさせることに成功していた。
「あの村は東日本で唯一、俺に都合よくナノマシン・システムを改造できた場所だ。ナノマシン分布のダークスポットで、改造しやすかったからな。そこで小僧を仕留めるつもりだったが、逆にやられるとは……」
 王の独り言が続いていた。セイリュウは口を挟まない。感想や同意は不要だった。ダークスポットとは、ナノマシンの密集度が少ない場所のことである。
「まぁよい……。〝ここ〟の支配権が俺にある限り、この惑星《ほし》で俺に勝てる者はいない……」
 ただ、と王は続けた。
「ナノマシンの影響を受けない〝あれ〟だけは止められん……この世界は滅びるのだ……」
 部屋の中の照明は消されたままだった。ただ非常灯の小さな明かりだけが、部屋を薄暗くぼんやりさせていた。

   *

「ねえカイリ、もういいの?」
 スザクの声が響き、カイリが答えた。
「いいんだ。あの王がまだ生きているというなら、悠長なことは言ってられない」
 朝。ミ・ソーマ村から南に進んだ場所に〈離位置《テレポート》〉で戻ってきたカイリ達は、そこから南西に向かって飛んでいた。ゲンブが大地を削り、それをビャッコが浮かせている。
 すでに、いくつもの村の上空を過ぎていた。村人たちは不思議に思ったろうが、ただ眺めるだけだ。不審な飛行物体を調査したり攻撃したりするような社会にはなっていない。あの王が造り上げたのは、ただ王の命令に服従するだけの、消極的な国民なのである。
「ここまでは、予想通りですね。ただ、あの王に再会した時……我々は勝てるのでしょうか?」
 レイウルフだった。それを聞いて、大声で笑うリュシアス。
「がははは! 昨日は迂闊だったが、心配するな。少々の攻撃では死なんドワーフ族の俺が、一撃で脳天をかち割ってくれるわ!」
 実際には、王と顔を合わせているのは、カイリとマティ、ドライアードだけだ。そして、あの王の力は未知数のまま。わかっているのは、セイリュウが彼に従っているということだけである。ベージュ色のタイトスカートの女性が、眼鏡を持ち上げた。
「怖いのはセイリュウでございます。私一人では勝てませんが……ゲンブと力を合わせれば、なんとかなるやもしれません」
「ちょ……ちょっと、私は!? ねぇ、私は??」
 大声を出すスザクに、ビャッコが冷ややかに言い放った。
「火《プラズマ》系のあなたでは、水《リキッド》系のセイリュウには勝てません。ただでさえ、突っ込むしか能がないあなたでは……」
「え……えええ。そ……そうかな?」
 自信がなさそうなスザクに、ビャッコが決定的な事実を突きつけた。
「いいですか、スザク。この地球上に、固体も液体も気体もあふれています。でも、あなたが操れるプラズマは、普通には存在しません。雷や、極地のオーロラはもちろん、一番身近な火であっても、今ここにはありません。他に、ここから見えるプラズマがありますか?」
 おずおずと、指を伸ばすスザク。
「あ……あそこに……」
 その言葉に、皆が視線を上げた。スザクが指さしたのは、東の地平線に浮かぶ巨大な太陽だった。上空から眺める太陽は、ひときわ大きく見える。一瞬ぽかんとしたビャッコが、あきれた。
「た……確かにね。でも、ナノマシンも宇宙にまでは存在しませんから。あなたが、あの太陽を操れるなら、無敵でしょうね」
「……というか、破壊神だな。三年待たずに、地球を滅ぼせる」
 カイリが苦笑していた。むくれるスザク。
 その時、ずっと黙ったままだったゲンブが、そっと言った。
「……ねえ、感じない?」
「感じますわ」
「え……うん」
 ビャッコとスザクが同意した。
「どうした、ゲンブ?」
 尋ねるレイウルフに、ゲンブが慎重に答えた。
「お父様……たぶん、近づいたからだと思うんですけど……セイリュウ姉さんがいるのを感じます」
「ああ、そろそろだ」
 カイリが地上を見下ろしていた。
「あの東西に二つ連なっている山を越えれば、目的地。これは勘だけど……王もセイリュウも、そこにいる気がするよ」
 ずっと気になっていた。どうやって王が、あの村では自分しか魔法を使えないようにできたのか。それは、王自身が〝ナノマシン〟という言葉を口にしたことと無関係ではないはずだ。
(本当にやっかいなのは……セイリュウよりも、王だろうな……)
 警戒するカイリの横で、マティだけが無口なままだった。

 ~(2)へ続く


コメント

「王」は初代ではなくて、初代の姿と天才プログラマー滝谷海里の知識を持った
だけど性格の悪い人だったのですね。
そしてカイリも時空を超えて召喚されたのではなく、地球を救うために造られた模造品だったなんて・・・
「王」の不死の秘密は、バックアップだったとか
謎が色々解き明かされましたね。このあと、「王」との対決はどうなるのか
17歳のカイリ と 56歳の滝谷海里 の対決とも言えますが・・・

先日のコメントに対し、わたしが物語りを読み込んでいるとお返事いただきましたが、
サシュさんの物語が読みやすいので、すんなり入ってくるのです。サシュさんの文章力が素晴らしいのだと思います。

◆Aryuさん
補足していただき、ありがとうございます。
書いていただいた通りです。
タネ明かしは、なるべくまとめてして、あとは動きのある展開にもっていけたらなぁと思ってのことですが、今回は詰めすぎたかも。
文章力について過大評価ではありますが、ありがとうございます。
リズムのある文章を書きたいと思っているのですが、なかなか上達しません……が、少し元気が出てきました。

なるほど~
ここにきて、一気に謎解きが来ましたか!

それにしても、ナノマシンシステムを改造できる初代でさえ
コントロールできないアレとは?
また、あらたな謎ですね^^

◆Leppard
今回の話は長くなるかもです。
タイトルに書いた部分までなかなか辿りつかない……( ̄▽ ̄;

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