珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

竜連れ7-2

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)
 第七話 惑星の守護神 (1)


 第七話 惑星《ほし》の守護神 (2)

「レベルIIまでは、見せたことがあったな」
「……そうか?」
 曇り空の大草原にそれはあった。独立行政法人ナノシステム研究所分室・ナノマシン開発室。その地下一階から五階までをレベルI、六階から十階までをレベルII、十一階と十二階をレベルIIIと呼び、セキュリティレベルが段階的に高くなっている。
「初めてここに呼んだ時に、見せたはずだ」
 地上設備から地下一階に降りながら、王が話しているのはサルネイアである。
「今からレベルIの支配権を、お前に譲る。ここの防衛に専念しろ」
「……わかった。初代はどうするんだ?」
 不機嫌そうな顔の王。
「面倒だが……セイリュウと共に、二十一代目を葬って来る。……ああ、お前自身がシステムを操作する必要はない」
「わかっている。その辺をうろちょろしているブラウニーに命じれば良いのだろう?」
 地下五階のレベルI総合制御室に入ると、茶色のボロを纏《まと》った小人たちが飛び回って、モニタを覗いたりキーボードを叩いたりしていた。家の精《ブラウニー》は木の精《ドライアード》と同じ精霊《スピリット》系の存在で、人に使役されるために存在するナノマシン上のプログラムだ。
「ブラウニーを通じて、俺からお前に指示を出すこともある。聞き漏らすなよ」
「なるべくこまめに頼む。あまり暇だと眠くなるんでな」
 ふん……と王が鼻を鳴らした。
(唯一任せられる奴が、この女しかおらんとは……。まあ二十一代目さえ殺せば、俺自身が出向く事態はもうなかろう)
 部屋の大画面モニタに映る地上の様子は、まだ平和だった。

   *

 レイウルフが、手に馴染んだ大きな弓を水平に構えていた。そこに二本の矢を同時につがえている。
「そんなことが、できるのか?」
 驚くカイリを見て、微笑むレイウルフ。
「誰にでもできる……というわけでは、ありません」
 カイリ達は森の出口にいた。そこから見渡せる大草原の二百メートルほど先に、巨大な液体窒素タンクや排水浄化設備が目立つ施設があった。施設をぐるりと囲む高い塀の上に、離れて設置された2つの黒い玉が見える。カイリが屋敷で読んだ本によれば、直径五十センチほどのその球状のものは、汎数《レベル》1の魔法〈単矢緒《マジックミサイル》〉を発射する自動攻撃システムだ。
「私たちを認識する前に、二体同時に破壊すれば良いのでしょう? 魔法を使うだけで反応すると言うなら、私がやるしかないでしょう」
 ――〝二掃射の技〟。二本の矢を同時に放ち、二百メートル離れた場所に並ぶ二つの的《まと》に当てる超高等技術だ。
(この技を再び使えるのは、あなたが右腕を再生してくれたおかげですよ、カイリ……)
 草原を渡る左からの微風によって、わずかに草が揺らめいている。矢が飛ぶ間に、どれくらいの強さの風に晒《さら》されるのかを、左側に広がる大地の草の波を見て正確に予想する。
 上に傾けて弓を構えるレイウルフの額に、汗が流れ……二本の矢が同時に放たれた。
 パシュッと小さな音が聞こえ、二つの黒球のそれぞれの一部が砕けて火を噴いた。そこに、しっかりと二本の矢が突き刺さっているらしいのだが、視力一・二のカイリには良く見えない。
「見事」
 素直に感心したのは、リュシアスだった。

   *

 レベルI総合制御室では、小さなアラーム音が鳴っていた。
「地上迎撃システムニ、故障ガ発生シタ模様デス。アラーム音ヲ停止シマシタ。イカガイタシマスカ?」
 静けさを取り戻した部屋で、ブラウニーからの報告にサルネイアが笑った。
「気にするな。どうせ今から、じゃんじゃん警報が鳴りだすんだ。いちいち音を止めなくてもいいからな。鳴ったり止んだりすると、余計に疲れる……ああ、音量は最小に設定しておいてくれ」
「了解シマシタ」
 背もたれ付きの大きな革張りの椅子の上で、サルネイアが伸びをした後に付け足した。
「……魔法感知感度を最大にして、防衛システムを全部稼動させておけ」
「予備システムモデスカ?」
 ――当然だ。そう言うと、サルネイアは頭の後ろで手を組み、大きなテーブルの上に投げ出した両脚を組んだ。
「地上では、大魔法戦が始まることになる。この施設を守ることが今の私の役目だ」
「了解シマシタ」
(なるべく抵抗して見せてくれよ、二十一代目……)
 サルネイアが正確に数えたところによれば、二十四人……の小人が、忙しそうに様々なシステムの起動手順を進めていた。 

   *

「いくら見つかるまでは魔法を使いたくないって言っても……いいのか、そんな派手なことをして?」
 リュシアスがニヤニヤしている。
「こんな薄い壁に穴をあけるくらい簡単だ……って言ったのは、リュシアスじゃないか」
 カイリがニヤリと笑った。ナノポーラス合金製の高い壁を見上げなら、コツコツと手の甲でその表面を叩く。ナノマシンには維持しやすい構造だが、それほど丈夫な壁でもないはずだ。ただし、厚さは三十センチ以上はあるだろう。
「離れてな……十メートルくらいな」
 巨大なウォーアクスに手をかけると、リュシアスの目が真剣になった。その両腕の筋肉が信じられないくらい膨れている。
 ――一閃《いっせん》。斧の先端が音速に達したのだろう。リュシアスの正面に、草が押しつぶされた光景が広がり、艶のない黒い壁が円形に窪むと同時に、その中心から巨大な亀裂がクモの巣状に走った。一瞬の間の後……大きな瓦礫がガラガラと降り注ぐ。幅五メートルに渡って、壁が完全に崩壊していた。
「すごい……」
 あっけにとられるレイウルフ。銀髪のドワーフは満足気だ。

「セイリュウ姉さん……」
 ぽつりと呟《つぶや》いたのはゲンブだった。壁の向こうに広がった空き地に、紺のチャイナドレスに身を包んだセイリュウが立っていた。とっさに身構えるカイリ達。セイリュウが無表情で独り言をもらした。
「不思議だわ……どうして、竜のあなた達まで生きているのかしら? ミ・ソーマの村で、破壊した筈なのに……」
 あの技から脱出する術《すべ》など、ないはずなのに……そう言うセイリュウの前に、ビャッコとゲンブが立った。
「セイリュウ……あなたは強いですね。あれだけの遠距離でナノマシンを操作できるなんて」
 ビャッコが睨んでいる。気後れ気味のゲンブも、セイリュウから視線を外さなかった。
「セイリュウ姉さん……今日は近距離戦です。昨日のようにはいきませんよ」
 その時、ゲンブの背後から声が飛んだ。
「一つだけ聞かせて!」
 ……突然大声を出したのは、スザクだった。
「私たちは、大切な人のためなら、いくらでも闘える……。セイリュウ姉は、誰のために……何のために、私たちと闘うの!?」
「…………」
 あっけにとられるビャッコとゲンブ。二人が正面に向き直った時、セイリュウの口からこぼれた言葉は、単純明快だった。
「……〝契約〟のために」
 セイリュウの身体が赤い光に包まれた……。

   *

「ビャッコ達は、大丈夫だろうか?」
 何度も後ろを振り返るリュシアスに、カイリが前を向いたまま答えた。
「わからない……けど、普通に考えれば、三体の竜を相手にして、セイリュウに勝ち目はないはずだ」
「彼女たちが飛び去ってしまった今、我々にできることはありません」
 レイウルフの言葉に落胆するリュシアス。
「そうだな……そうなんだが……」
 三人とマティが、施設内の建物の一つまでたどり着いた。ドライアードは、まだカイリの内ポケットの中で眠ったままだ。
「素直に玄関から入るのか?」
「そう簡単には……」
 リュシアスの質問にカイリが答えかけた時。サクッと軽い音がした。ドアの取っ手に伸ばした右腕が急に軽くなって、身体のバランスを崩すカイリ。正面の強化ガラス製のドアが、吹き出した血で真っ赤に染まっていく。
 一瞬言葉を失ったマティが、悲鳴を上げた。リュシアスとレイウルフが叫ぶ。
「カイリ……!」
 カイリの右腕が、ヒジの上で切断されていた。落ちた腕に躓《つまず》いて、ビチャッと赤い血だまりにヒザをつくカイリ。
「ぐ……」
 失血により頭が重くなり、視界から色が奪われる。息が荒くなり、耳の奥で血流の音が響く。
「……上から二枚におろしてやろうと思ったのに、ちょっとずれたか……歳は取りたくないものだな……」
 〈品浮《レビテート》〉で宙に浮いた王が、そこにいた。すぐに放たれたレイウルフの矢が、度等《ブースト》付きの〈衣蔽甲《シールド》〉に軽く弾かれる。
「なんだ、あの剣は……?」
 驚くリュシアス。王が手にしているのは、刀身も柄もすべて半透明の緋色の剣だった。
「役満《フルコマンド》を使えるのは、お前だけではないぞ、小僧……」
 王の言葉に反応して、顔を上げるカイリ。
「その魔法は……〈九蓮宝刀《ムラマサブレード》〉……」
 二人は、この施設から出てくれ――そう告げたカイリが、役満《フルコマンド》〈大産源《リジェネレート》〉を事前詠唱により役名《コマンド》だけで発動させた。切り口から肉芽が成長し、ゆっくりと再生される右腕。
「……ここからは……魔法戦だ」
 睨むカイリと、余裕の笑みを見せる王。二人とも戦いの準備は十分してあるという表情《かお》だ。カイリが再び、役名《コマンド》だけを口にした。
「……〈龍威槍《ドラゴンランス》〉」
 光り輝く長大な槍が、カイリの再生した右手に握られていた。

 ~(3)へ続く


コメント

浅い階層とはいえ、その支配権を任せられるほどに「王」から信頼されているサルネイア。
「王」は人のことなど信じなさそうなのに、サルネイアとの間になにがあったのか・・・。
サルネイアも「王」に対して横柄な口を利き、態度にも恐怖に縛られているようなところは見えないし、
まだまだ謎の多いキャラですね。

そしてカイリの戦い。
「……ここからは……魔法戦だ」と言いつつ、対峙する両者が手にするのは剣と槍。
斬り合いするように見えるのですが、あれ?【魔法】 【どこですか?】

◆Aryuさん
サルネイアについては、そろそろじっくり書かないといけませんね。
と言いつつ、タイミングを逸してばかりなのですが~( ̄▽ ̄;
魔法ですよ~。
カイリに槍術スキルなんて、あるわけもなくw

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