ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ7-3

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)
 第七話 惑星の守護神 (1) (2)


 第七話 惑星《ほし》の守護神 (3)

 カイリの顔の前に何かが飛び出してきて、視界を塞いだ。
「待ってください、マスター! 私たちは世界を救うために来たんです。マスター……何があったんですか? 私のことを、忘れてしまったんですか?」
 マティだった。テクニティファ・マティ・マヌファ……二千年の時を生きる、フェアリ族最後の生き残り。王が、その小さな妖精に目を止めた。
「…………」
 今にも泣きそうな顔のマティを見て、王が優しく声をかけた。
「覚えているとも、テクニティファ……君と過ごした日々が懐かしい……」
 カイリは黙っている。王が、柔和な表情を見せた。
「……どうしてそんな男といるんだい? 私のところへ戻っておいで」
「マスター……」
 マティの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。小さな身体が震えている。
「さあ」
 すがるような表情のマティを、迎えるように両手を広げる王。溢れる涙を拭うことも忘れ、王を見つめたままマティがつぶやいた。
「……あなたは、誰なの?」
 王の動きが止まった。マティは泣き続けている。
「本物のマスターなら、私を〝マティ〟と呼ぶはずです」
 憎々しげな表情で、マティを見つめる王。
「小僧が動揺する間は、生かしておいてやったものを……」
「〈障遮隣《プロテクト》〉!」
 カイリが役満《フルコマンド》の防御魔法を発動すると、王が手にする〈九蓮宝刀《ムラマサブレード》〉の切っ先が、マティの小さな顔の前で止まっていた。六角形の光のプレートが連なる〈障遮隣《プロテクト》〉と、半透明の紅《あか》い〈九蓮宝刀《ムラマサブレード》〉が接した部分で、空気がプラズマ化し、光と熱が飛び散っている。
 〈障遮隣《プロテクト》〉越しに見つめ合う王に、カイリが話しかけた。
「……セイリュウを渡せ。主人が命じれば、委譲が成立する」
 王がニヤリと笑った。
「お前たちが連れてきた竜ども……かなりの上玉だ。俺に委譲すれば、命だけは助けてやる」
「それは無理だ……三人とも、〝箱〟を使わずに生まれたからな」
 王がいた場所に、まるで竜が大きなアゴを開いて牙を剥くように稲妻が走った時には、王が空中に跳んでいた。〈龍威槍《ドラゴンランス》〉から発して術者の意のままに踊るプラズマ流を、今度は〈障遮隣《プロテクト》〉で防いだ王が笑った。
「ふふ……はははは! 間近で顔を見て確信したぞ。召喚システムめ……二十一代目に再現した情報をシステムから消去していやがったから、どんな奴かと思っていたが……くくく」
 暴れる光の竜は〈障遮隣《プロテクト》〉で完全に防がれている。役満《フルコマンド》同士の闘いでは、攻撃より防御の方が有利なのだ。
「どうりでな……いきなり役満《フルコマンド》まで使いこなす秘密は〝瞬間記憶〟か」
「なに」
 カイリの攻撃が止まった。余裕の表情で見おろす王。
「お前の知識は、全て俺にある。お前の知らない膨大な知識も俺にはある。……お前は俺に勝てんぞ、小僧。この世界では……知識が力だ」
 十八歳の滝谷海里そのものであるカイリ。この世界と、魔法に関するカイリの知識は、カイ・リューベンスフィアの屋敷にあった本のみである。対して王は、ナノマシン開発・統括プログラマーとしての五十六歳の滝谷海里の記憶を持ち、この世界で二千年を生きている。今は三体の竜が味方についているカイリだが、竜の力も役満《フルコマンド》の魔法には及ばない。誰がどう考えても、カイリに勝ち目があるとは思えないだろう。
「一つだけ、教えておいてやる……」
 王がゆっくりと言った。
「このエリアでは、昨夜から〈離位置《テレポート》〉系の空間移動魔法は使えん。……逃げようとしても無駄ということだ」
 〝不死システム〟が稼動したことによる副作用だった。王の復活には、広範囲の〈離位置《テレポート》〉系ナノマシンが動員され、復活後の再起動に丸一日かかるのだ。
 不安な表情のマティに、カイリが微笑んだ。
「〝信じて、ついていきます〟……そう言ってくれたよね」
 カイリの顔を、じっと見つめるマティ。心に根づいた〝信頼〟の光を、互いの瞳の中に確認する。かつてカイリは言った。――君がいてくれたおかげだ、と。エステル達に向かって〈一気通貫《ライトニング》・度等《ブースト》2〉を放つ……それ以上の過ちを犯さずに済んだのは、マティが見せた涙のおかげだと。
 今は、逆だった。カイリの偽りのない微笑みが、不安に揺らぐマティの心を、ゆっくりと落ち着かせた。
「……はい。カイリを信じます」
「……ありがとう」
 リュシアス達と一緒にいてくれ……それだけをマティに伝えると、カイリは呪文の詠唱を始めた。あきれる王。
「ここまできて、事前詠唱を忘れたというのか。若さゆえか……ありえないミスだな」
 王の姿が消えた。〈品浮《レビテート》〉と〈放底《メイジハンド》〉による短距離空中移動で、カイリの背後に回り込んだ王が、〈九蓮宝刀《ムラマサブレード》〉の紅《あか》い刃を容赦なくカイリの背に突き立てた。バチバチと音を立てて、光がスパークする。〈障遮隣《プロテクト》〉はまだ有効で、カイリを護っていた。役満《フルコマンド》同士の闘いでは、攻撃より防御の方が有利なのだ。
「その呪文は……」
 カイリの詠唱が王の耳に届いた。事前詠唱は、汎数《レベル》が高い魔法ほど、その有効時間が短い。今、カイリが唱えた魔法は、詠唱完了から役名《コマンド》明示までの有効時間が役満《フルコマンド》よりも短く、五分しかない。つまり、事前詠唱はできないのと同じだった。
「ばかな……やめろ……それを地上で使って、ただで済むと思っているのか!?」
 カイリが王を振り返った。その目に、独特の冷徹な光が宿っている。
「無茶なことは、わかっている」
 九十秒間の長い詠唱を終え、あとは役名《コマンド》を口にするだけになったカイリが、答えた。
「ダブル役満《フルコマンド》……将来、宇宙戦争にまでナノマシンを持ち出すことを想定した役名《コマンド》……地球上では禁呪だが、どうせこのままでは、世界は滅びるんだ」
「くそ、間に合わん……!」
 狼狽する王。〈離位置《テレポート》〉は使えない。ダブル役満《フルコマンド》の攻撃魔法に耐えられるのは、同じダブル役満《フルコマンド》の防御魔法だけだ。しかし、今から詠唱しても間に合わない。そして足元には、王が自分の身よりも心配するものがあった。――〝不死システム〟である。

   *

「サルネイア、急イデ、レベルIII総合制御室ヘ行ケ。ソコノ支配権ヲ一時的ニ、クレテヤル。〝不死システム〟ヲ死守スルンダ!」
 サルネイアが組んだ足を載せている大きなテーブルの上で、一人のブラウニーがわめき散らした。
「了解した」
 冷静に答える茶髪の女エルフ。レベルI制御室の中は、今や部屋中の警報が鳴り響き、あらゆる魔法感知ゲージが振り切れていた。
「お前らも来い。ここは見捨てるそうだ」
 二十四人のブラウニーが飛び上がって、サルネイアの後に続く。
(王は、私を信用してなどいない……それでもレベルIIIの支配権を許したとなると……よほどのピンチらしいな)
 非常時にエレベータは使えないので、階段を駆け下りる。階段を踏み外した数匹のブラウニーが足元を転がっていく。
「急げよ。おそらくレベルIIまでは、跡形もなく吹っ飛ぶぞ」

   *

 人の姿に戻ったセイリュウが、何かに気づいた。セイリュウと対峙する三人の娘もほぼ同時に気づく。地面の下を、とてつもない量のエネルギーが、カイリ達のいるナノマシン開発室に向かって流れている。
 ゲンブが震えた。
「これは……役満《フルコマンド》? ううん、その十倍くらいある……」
「嘘でしょう……東アジアが吹き飛ぶわよ。誰も助からないわ!」
 ビャッコが怯えた。静かに呟《つぶや》くセイリュウ。
「ダブル役満《フルコマンド》……〝禁呪〟が使用されるのは、システム完成以来、初めてでしょうね……」
「どうして……王は、今すぐ世界を滅ぼすつもりなの!?」
 叫ぶスザクを見て、セイリュウが微笑んだ。
「王は、そんな魔法を使いません……少なくとも、あの場所では。おそらく、あなたの主人でしょう」
「そんな……」
 愕然とするスザク。
「世界を救うカイリが、そんなことするわけないよ!」
「…………」
 誰も何も答えなかった。ただ、四体の竜が争う理由がなくなろうとしているのを感じていた。

   *

「地下深クマデ、穴ヲ! 急イデクダサイ!」
 レイウルフに預けられていたドライアードにせかされて、リュシアスのノームが、その螺旋状の金属に見える触覚器《フィーラー》四本をフル稼働させていた。焦るレイウルフ。
「どういうことなんだ、ドライアード? カイリの身に何か?」
「今ハ、自分達ノ身ヲ心配シテクダサイ。大キナエネルギーノ流レヲ感ジルノデス」
 落ち着かない様子のドライアードがそう言うと、小さな老人姿のノームを支えながら、リュシアスが叫んだ。
「言う通りにしよう、レイウルフ。〈離位置《テレポート》〉は発動しなかったんだろう? 嫌な予感がする」
「ええ……」
 レイウルフは、ドライアードの哀しそうな表情が気になっていた。緑の髪と褐色の肌を持つ少女の小人が、ぽつりと漏らした。
「コンナ穴クライデハ……助カラナイカモシレマセンケド……」
 その少女の頬に触れる手があった。少女の倍の身長……と言っても、三十センチしかないマティが、ドライアードに優しく声をかけた。
「信じましょう、カイリを。私は、信じています……世界を救うと言ったカイリの言葉を」
「ウ……ウン……」

   *

「……思い直すなら今のうちだぞ。役名《コマンド》さえ明示しなければ、あと数分で詠唱は無効になる」
 王の言葉が聞こえないかのように、カイリは晴れた空を見上げていた。そして、あたかも独り言のように呟《つぶや》いた。
「王……そんなセリフが有効だと思っているなら、あんたにも知らないことがあるんだな」
「……なんだと?」
 マティが言っていたように……この男は、初代カイ・リューベンスフィアではない。初代なら知っているはずだ。初代が日本語の本を読めたなら……の話だが。
「サルネイアという人に、屋敷の本を渡さなかったのは正解だった。あんたは、ナノマシンには詳しそうだが、その後に開発されたもの……竜の本当の価値も、テラ・フォーミング装置についても、詳しいことは知らないんだろう?」
「……禁呪を行使して、助かる方法などありえない……俺もお前も……お前の仲間も死ぬだけだぞ!」
 王の言葉に、空を見上げたままのカイリが微笑んだ。
「死ぬのは、あんただけだ。この惑星《ほし》には守護神がいるからね……」
「何を言って……」
 会話で時間を稼ごうとする王の言葉を遮って、カイリがその有効時間まで二分を残して、役名《コマンド》を口にした。
「――〈大枢至《ビッグバン》〉」
 ……視界が白く染まった。

 ~(4)へ続く



コメント

「……ここからは……魔法戦だ」で、魔法の応酬になるのかと思いきや、
いきなりダブル役満《フルコマンド》炸裂で終わりそうな・・・
「惑星の守護神」がどんなものなのか妄想しつつ、次回を楽しみにしています。

◆Aryuさん
ご期待にそえなくてすみません。
たぶん私自身が割と戦闘シーンに重きを置いていないせいですね。
惑星の守護神については、特にひねっていませんので、予想通りかもしれません。


【むむむ】
ボスはカイリであっても、初代ではないんだ!

謎がまたひとつw

◆Leppardさん
うーん、Leppardさんになかなか理解していただけなくて、いつも自分の力不足を感じます。
わかりにくくて申し訳なしです( ̄▽ ̄;

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