珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

竜連れ7-4

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)
 第七話 惑星の守護神 (1) (2) (3)


 第七話 惑星《ほし》の守護神 (4)

 ナノマシン・システムにより生じる現象は、五体系に分類される。エネルギー系、固定系、分解系、再構成系、解析系の五つである。一方、〝魔法〟としては別の五体系に整理され、攻撃魔法、防御魔法、移動魔法、回復魔法、認知魔法となる。例えば、〈一気通貫《ライトニング》〉はエネルギー系の攻撃魔法であり、〈衣蔽甲《シールド》〉は固定系の防御魔法である。
 魔法の中でも最高位の汎数《レベル》26に相当するダブル役満《フルコマンド》には、エネルギー系攻撃魔法が二つ、固定系防御魔法が一つ、再構成系回復魔法が一つ、解析系認知魔法が一つで、計五つの魔法が存在する。その中でカイリが唱えた〈大枢至《ビッグバン》〉は、あらゆる魔法の中で最大の破壊力を持つ攻撃魔法であり、たった一つの魔法を除いて、これを防ぐことはできない。その魔法とは、もちろんダブル役満《フルコマンド》の防御魔法であり……役名《コマンド》を〈大遮隣《ビッグバリア》〉と言う。

 〝彼〟は、まるで眠っているようだった……その時までは。
 実際には、彼が眠ることはない。その証拠に、彼の中にある無人のメンテナンス・ルームには、常にグリーンのパネルが二つ点灯している。もう、五千万年近く……である。ただし、それ以外に光るものも音を出すものもなく……彼は永い間平穏な心持ちだった。
 その時――彼の意識は、二千万年振りに掻《か》き乱された。彼のメンテナンス・ルームにある無数のパネルが突然、様々な色で明滅したのだ。彼に備え付けられた広範囲の……はるか天王星まで届くセンサが、膨大なエネルギーを感知したのである。その場所が問題だった。
 二千万年前にセンサが反応した時には、巨大な質量が彼の棲む惑星《ほし》に向かってきていた。それは小惑星が地球に衝突するという大きな脅威ではあったが、彼にとっては二度目の経験であり、基本メニューに沿って対処すれば問題なかった。彼が指令を出すことで、地上から準備されたロケットが打ち上げられ、ロケットから正確に発射されたミサイルが小惑星の軌道を変えて、木星に衝突させた。全ては、彼のシミュレーション通りに解決された。
 彼には、もちろん様々なアクシデントに対するプログラムも用意されている。ロケットが発射されなかった場合や小惑星まで到達しなかった場合、ミサイルが発射されなかった場合や外れた場合などである。それらのあらゆるバックアップ・プログラムが全て失敗した時でも、彼には最終手段がある。それは、小惑星が地上に激突したその刹那《せつな》に発動する。
 地球の衛星軌道上に浮かぶ彼には、人が付けた名前があった。P.G.――プラネット・ガーディアンである。フェアリ族とエルフ族が〝精霊騎士《エレメンタルナイト》〟と呼ぶ彼を、マティは〝ピージ〟と呼んでいた。過去のカイ・リューベンスフィアの誰かが教えたP.G.《ピー・ジー》を、マティなりに発音したものだ。
 ピージは混乱していた。それまで、地球に近づく小惑星など検知していなかったにも関わらず、彼の足元……地上にいきなり小惑星が衝突したほどのエネルギー集約を検知したからである。彼は、混乱しながらも、最終プログラムを瞬時に発動させた。それは、地上のナノマシン・システムへの通信。竜以外に、魔法を使用せずにナノマシンに指令を出せるのは、この世界で彼だけである。

 カイリの魔法〈大枢至《ビッグバン》〉により生じた大爆発は、その迸《ほとばし》るエネルギーを壁に遮られた。〈大遮隣《ビッグバリア》〉の壁は、ナノマシン開発室を中心に直径六百メートルの円筒形に空高く形成され、弾ける奔流は大気を突き抜けて宇宙に拡散した。ほっと胸をなで下ろすように安心するピージ。彼の人工知能が把握する限り、次に危険な小惑星が地球に近づくのは、百万年以上先のことである。それもあくまで衝突の〝可能性〟があるにすぎず、質量も小さい。

 地上での大爆発の中にいたのは、〈大枢至《ビッグバン》〉の詠唱直前に〈大遮隣《ビッグバリア》〉を自分に詠唱していたカイリと。瞬時に蒸発した王。そして、レベルIIIの〈大遮隣《ビッグバリア》〉に守られたサルネイアとブラウニー達である。
 いや……。
 一人増えた。
 不完全なまま、強引に再起動を完了した〈離位置《テレポート》〉系ナノマシン群。造り上げられた新しい肉体が、不死システムのベッドの上に横たわっていた。
 王は、不安だった。不死システムをこのように連日使用したことはない。いつでも〈離位置《テレポート》〉系ナノマシン群が、その再起動プログラムを完全に消化した後での、復活だった。
 案の定、不死システムのディスプレイに、エラーメッセージが出ている。ベッドに横たわったまま目の前のそれを確認した王は、逆に安心した。エラーメッセージを読めるということは、少なくとも眼球を動かす筋肉は動き、視力は存在し、記憶も再生されているからだ。
(充分だ……)
 王は思った。ここは外の世界から完全に隔離されたレベルIII。いくらでも時間はある。もう一日待てば、ナノマシン・システムが勝手にエラーを解決する処置をしてくれるだろう。
 自然に漏れていた笑みを認識して、さらに安心する。顔の筋肉も再生されているということだ。
 いきなり。
 ディスプレイを遮るように、王の目の前に何かが現れた。茶色のボロを纏《まと》った小人、ブラウニーの顔だった。
「お前か……喉が渇いた……水を持ってこい」
 声が出たことに、再び安心する王。だが王は、あることを思い出せないでいた。
「……どうした?」
 王の顔を覗くブラウニーの数が、二人、三人……と増えている。それぞれの手に、短剣やハンマーが握られていた。
「ゴ主人様の命令デス」
「何を言っている?」
 狼狽する王。無表情のまま、一人のブラウニーが言った。
「サヨウナラ……〝元〟ゴ主人様……」

   *

「ど……どうしたの、セイリュウ姉!?」
 スザクに声を掛けられて、ライトブルーの髪の女性は初めて認識した。自分の頬に、涙が伝っていることに……。それが止まらないことに。
「どうして……契約が、解除された……それだけのことなのに」
 自分で自分が不思議だった。
「けして……大切にされていたわけでは、ないのに……」
 涙は止まらなかった。それが、狼狽と哀しみの涙であることを、セイリュウ自身が自覚していた……。
 そっと声を掛けたのはゲンブだった。
「行こう、セイリュウ姉さん。……私たちが、姉さんの新しい家族だよ」
 流れた涙を、まるで子供のように手で拭っていたセイリュウが、コクリと頷いた。

   *

 破壊された不死システムが、バチバチと音を立てて火花を散らしている。王の死体を見もしないでサルネイアが言った。
「ここレベルIIIだけは、お前のせいで、どうしても入れなかった。それまでは生かし、味方である振りをしておく必要があった……初代カイ・リューベンスフィアよ……いや、単に〝王〟と呼ぶのが、やはり正しいんだろうな……」
 サルネイアは、幼少の頃からの悲願に一歩近づいていた。
「……ナノマシン・システムよ、待たせたな」
 サルネイアの前にあるコンソールに、一枚の紙が広げられていた。以前、王に翻訳させたものだ。その原文を、この施設の近くで拾った……と王には伝えていた。嘘である。燃えるカイ・リューベンスフィアの屋敷から、盗むのに成功していた一冊の本の最初のページだ。
「このページだけで充分だった。王は、まるで興味を示さなかったがな……」
 紙の一行目には、こう書かれている。
 ――ナノマシン・システム総合責任者認証方法。
 サルネイアがテーブルの上のスイッチに触れると、三十センチ四方の四角いエリアが現れた。ここに他人が触れても意味はない。五千万年前に死亡したナノマシン・システム総合責任者しか認識しないのだから。今では役に立たない認証システムのはずであり、こんな認証がなくても、王はシステムのほとんどを掌握していた。
 そこに、サルネイアが右の手のひらを置いた。
 読み取られるDNA情報。この地球で……たった一人の特別な存在。その特殊な能力から、エルフの族長エステルが大切にし……あの王が、一目置いて客人として接した存在。そのサルネイアのDNA情報を、システムが瞬時に解析した。
 ナノマシン・システムが、初めて人の言葉をしゃべった。アナウンスのように聞き取りやすく、弾むように明るい女性の声だ。
「おはようございます、プレジデント。システムは全て正常。なんなりとご命令ください」
「いい声だ」
 特に感慨もなくサルネイアが呟《つぶや》いた。重要なのはこれからだ。
「ありがとうございます」
 丁寧に答えるナノマシン・システム。
 一人のエルフが、全世界を支配した瞬間だった……。

 ~第七話完、第八話へ続く



コメント

おおおおお

ここでサルネイアが牙をむくとは!

王は、あっけない最後でしたね・・・

いよいよクライマックスかな?

◆Leppardさん
王は、もう面倒になっちゃいました。
もし書き直すことがあれば、もっと壮絶な闘いをするべきかなぁ。
実際のところ、カイリは王に恨みがないから、いまいち燃えないんですよね(書き手として)。

「王」はブラウニー達に倒されましたが、
不死システムがあればまた再生されるはず・・・
LV3を掌握したサルネイアが不死システムを止めたか
自分を対象に設定し直したということでしょうか?

さて、いよいよ謎の人物サルネイアが本格的に動き出しますね。
プレジデントと呼ばれる彼女のことがこれから語られていくのでしょう。
4匹の竜を揃えたカイリ達の今後の行動や
惑星の守護神であるPGが起こす?地球滅亡の謎など
毎週楽しみにしていますので、これからもがんばってください。

◆Aryuさん
ぎく。
不死システムについては、どうなったか書いてはあるのですが、その効果の大きさを考えて、もっと目立つように書くべきでしたね。
火花が散り……とかなんとか後で書き足しておきます。
毎週書かないとちっとも終わらないので、なんとか頑張れたらなぁと思っています。

不死システムは破壊されたと書いてありましたね。
失礼しました。
読みが浅いなぁわたし。(^-^;

◆Aryuさん
いえいえ、私があっさり書きすぎました。
まだ修正できていなくてすみません( ̄▽ ̄;

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