ささやかに駅メモ!

ひよっこマスターのお気楽プレイログ since 2018

駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ9-2

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)
 第七話 惑星の守護神 (1) (2) (3) (4)
 第八話 世界を継ぐ者 (1) (2) (3) (4)
 第九話 未来への約束 (1)


 第九話 未来への約束 (2)

 エルフ族の中央神殿エリア。そのほぼ中心に位置する中央神殿の白い石壁が、明るい陽射しに照らされている。内部にある謁見の間では、久しぶりに姿を見せた族長のエステルが、高い背もたれ付きの椅子に座って白い便箋に視線を落としていた。
「ルシア」
「はい」
 エステルが便箋を、金髪のエルフ女性に返した。
「ありがとう」
「いえ、エステル様にお見せしておきたかったのです。失礼いたします」
 退室しようとするルシア。その背中をエステルが呼び止めた。ルシアは背を向けたまま、その震える言葉を聞いた。
「サルネイアを導いたのは、この私だ……。お前から大切な者を奪うのは、これで二度目だな。謝罪はしない……すべきではないと思っている。だが……」
 それに答えるルシアの言葉も震えた。
「わかっております。カシムは……そしてサルネイアは、私のような者とは違い、自らの意思で自らの人生を切り開く者でした。私はそれを誇りに思っております」
「私もだ」
「失礼いたします」
 ルシアが去った部屋で、エステルは座ったまま天井を見上げ、両目を閉じた。
(エグゼクティブ・ハッカー……お前は、これで満足か?)
 彼は、幼いサルネイアの心に直接話しかけることができた。だが、具体的な指示は何もなかったと、サルネイアから聞いている。それは当たり前で、彼の役目は彼らの支配者に支配権を取り返すことであり、支配者に口を出すことではない。
(お前は太古の亡霊だ、ハッカー。サルネイアはお前達の支配者と同じ血を持っていたかもしれないが、全く別の人間だ……)
 だがエステルは、成長したサルネイアにエグゼクティブ・ハッカーの言葉を思い出させた。それは、世界を救うために必要だと信じたからだ……。
 神となっても世界の滅びを止められるかどうかはわからない――と、サルネイアは手紙に書いている。だが彼女は彼女の判断で、カイ・リューベンスフィアと竜に最後の助力をすることを決めてくれた。
(サルネイア……お前は、昔から無欲で……戦術よりも戦略に長けていた。常に私よりも先を見通して行動していた。もし、禁断の山に入った十八歳の私が、お前より先にエグゼクティブ・ハッカーに選ばれていたら……きっと肉体を捨てることもなく、エルフ族による世界の支配を願っただろう……)
 エステルの顔に笑みが浮かんだ。
(滅びに向かっているこの世界で……お前が生まれ、選ばれたことは、この世界の意志だったのかもしれないな……)
 それから、陶磁器のように白く美しい頬に、涙が伝った。
「それでも……生きていてほしかった……。私のそばで……世界が救われるのを一緒に迎え……お前に、族長を継いでほしかった……」
 他に誰もいない部屋で、エルフ族族長エステルが初めて漏らした、個人の願いだった。

   *

「宿舎に戻りましょう」
 レイウルフが明るく言った。ゲンブ発掘のために作られたエステルの簡易住居が、今は彼らの宿舎になっている。
 ナノマシン開発室のレベルIII、IVが眠る大地を渡る風が湿り気を帯び、空に雲が広がりはじめていた。
「そうだな。世界が滅びるまで、まだ三年ある。少し休んで、これからのことを話そうぜ」
 がははは、と笑うリュシアス。
 一つの旅が終わり、皆が気を抜いている。そんな中で、カイリが低い声を出した。
「いや……まだ、やることがある」
 カイリの真面目な顔つきを見て、レイウルフとリュシアスが怪訝な表情になった。
「そういうことなら、協力しますよ。何をするんですか?」
「ああ、さっさと済ませようぜ」
 短い旅ではあったが、様々なことがあった。ここにいる者は皆すでに仲間であり、カイリに協力的だ。その仲間にこれから話さなければならないことを考えると、カイリは気が重かった。
「少しでも早くしなければならないことがある。俺が今から言うことに、皆が心から同意してくれれば、それで話は終わる。だが、そうでなければ……」
「何ですか、じれったいですね」
 レイウルフが笑った。リュシアスは、少々ムッとしている。
「はっきり言え。グズグズするのは、好きじゃないぞ」
「ああ、言うよ……」
 それでもカイリは言いにくそうだった。少し離れて立っている四人の竜たちを見てから、口を開いた。
「スザクは問題ないと思う。セイリュウも、時間はかかるが大丈夫だ。だが、ゲンブと……特に、ビャッコは、簡単にはいかないだろう」
「何を言っているんです?」
 レイウルフの顔に、警戒の色が浮かぶ。リュシアスは黙ったままだ。カイリが意を決したように、その言葉を口にした。
「……正式に、四人の竜を俺のものにしなければならない」
 誰かが口を挟む前に、カイリが言葉を続けた。
「彼女たち全員が一人の人間に完全に同調《シンクロ》することで、竜が持つ真の力が引き出される。箱によって起動された竜なら、起動者自身か、あるいは起動者から支配権を引き継いだ者に同調するのは簡単だった。だが、彼女たちは四人ともそうじゃない。セイリュウは箱によって起動されたけど、王から支配者引継ぎの言葉を聞いたわけじゃないからね。……時間をかけてシンクロする必要があるんだ……そのために……俺と四人の竜だけで、しばらく暮らすことになる。それが、数日でいいのか……三年必要なのか……は、わからない」
 何か言いたげだが、誰も言葉が見つからない様子だった。
「シンクロするべき相手が俺だと、彼女たちの心と身体が納得すれば、シンクロできるはずだ。だが今の状態は、まるでかけ離れている。スザクはまだいい。セイリュウは時間が解決するだろう。……だが、ゲンブはレイウルフを慕っている。ビャッコは……リュシアスを伴侶とさえ感じているだろう。つまり……」
「待って!」
 叫んだのは、フェアリ族のマティだった。小さな身体を宙に浮かせたまま、泣きそうな顔で訴える。
「シンクロする相手は、カイリじゃなくてもいいんでしょう? 私がなるわ。私でダメなら、エステルに頼みましょう。彼女なら……」
「ダメなんだ。シンクロするには、この時代の人間は、身体が変わりすぎている。ナノマシンが常に存在する環境が、生物の進化にまで影響を与えたせいだ……。ヒューマン族ならまだなんとかなるかも知れないけど……それでも、確実じゃない。竜たちは、俺が生きていた時代の人間を主人と想定して設計されている……」
 レイウルフが静かに言った。
「そうですか……それで今度は、あなたがヒューマン族の王のように、ゲンブを支配すると?」
 リュシアスが短く言った。
「続きを話せ」
 黒髪の青年が、自分の運命と向き合う勇気を振り絞っていた。
「ここにいる皆が、世界を救うためにここまで来た。だが、それで納得できる問題じゃないことはわかっている。だから……」
 カイリは想像していた。あの王が〝世界を救うために、スザクを差し出せ〟と言ってきたとしたら……それが本当に世界を救うためだとしても、差し出せるだろうか?
 一瞬の間を置いて、はっきりと言った。
「レイウルフ、君に決闘を申し込む。次は、リュシアス。二人に勝てたら……最後は、マティだ」
「私……?」
 意表を突かれたマティが驚いた。
「そうだ」
 そう返事をするカイリの胸元を、いきなりリュシアスが乱暴につかんで、自分の目の高さに引き寄せた。
「……いいんだな? 殺すぞ。シンクロとか言って、お前がビャッコに何をするつもりかは知らん。だが、俺からアイツを奪おうとする奴に、遠慮はしない。世界が滅びることになっても、だ!」
 仲間から疑いと憎しみの視線を向けられる辛さに、カイリは耐えた。目をそらさないようにするだけで、勇気を根こそぎ奪われそうになる。
「わかってる……俺は勝って、四人の竜を連れて行く……」
「待ってください。ご指名は、私が先ですよ」
 そう言って、レイウルフがリュシアスの肩を叩いた。その瞳から、いつもの優しい光が消えている。
「正直、魔法に耐性があり速攻が得意なドワーフ族のリュシアスに比べれば、私の勝ち目は無いに等しいかもしれません。それでも……エルフ族森林防衛隊隊長の肩書きは、ダテではありませんよ」
「ああ……」
 カイリがこぶしを握り締めた。決めたことだと自分に言い聞かせる。
「これはケンカじゃなくて、決闘だ。最初に、二十歩分の距離を取って向かい合って立ち、立会い者の合図で開始する。その後は、何でもあり……これでいいか?」
「いいでしょう」
「いいだろう」
 ようやくリュシアスが、カイリから手を離した時。マティの頬に水滴が当たった。雨だった。今や空は流れる薄暗い雲に覆われ、さらに黒く分厚い雨雲が南の空から近づいていた。
「どうして……どうして、こんな決闘が必要なの?」
 マティの小さな呟きが、強さを増した風にかき消された――。

 ~(3)へ続く


コメント

シンクロという新たな謎が出てきましたね。

決闘に勝ったからという理由で、ビャッコとゲンブがカイリを主人と認め、納得するとは今のところ思えません。
レイウルフとリュシアスを傷つければ反感を買うことは必至です。
どのように解決していくのか、(カイリはまず、3人に勝たなければなりませんが)お手並み拝見です。

◆Aryuさん
カイリくんが無茶なことを言い出して、困っている作者です。
彼はどう責任を取ってくれるつもりなんでしょうか。
キャラが勝手に動くにもほどがある……( ̄▽ ̄;

むむむ・・・
意外な展開になってきましたね。

4匹の竜の力が必要だとは思うんですが
はたして、仲間達同士の戦いはどういった結末になるか?
続きが楽しみです。

まだ先の話になるんでしょうが
地球が滅びることになるのは、自転が止まったのが原因なのかな?
(昔の大戦で地軸がずれて、自転が止まったとか・・・)
と、最後をいろいろ想像するのも楽しいです。

◆Leppardさん
いつもコメントをありがとうございます。
一応、今回の第九話は、先ほど書き上げたところですので、あとでアップします。
最後はまだ秘密ですが、ヒントはやたら残してきたつもりではあります。
ただ、毎週連載なので、続けて読めない分、記憶に残りにくいとは思いますが……( ̄▽ ̄;
いろいろ想像してもらえるのは、とても嬉しいです。
でも自転が遅くなった理由は、すでに第五話の最終回で書いていたりしてw

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