珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

竜連れ10-1

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 あらすじ
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4) (5)
 第六話 不死の支配者 (1) (2) (3) (4)
 第七話 惑星の守護神 (1) (2) (3) (4)
 第八話 世界を継ぐ者 (1) (2) (3) (4)
 第九話 未来への約束 (1) (2) (3) (4)


 最終話 生命《いのち》ある限り (1)

 空はどこまでも青く、雲一つない快晴。高い建物も大きな木もなく、大地には砂漠が広がっている。その砂漠の中に、オアシスと呼ぶには大きな湖がいくつも点在していた。
 上空から風の精《シルフ》が舞い降りてきて、男の手につかまった。シルフと言葉を交わす男に、金髪の女が話しかけた。
「どうだ、エシィ?」
「完璧です」
 エシィと呼ばれた男が、真面目な顔で答えた。
「ジノとユンがいい仕事をしました。正確には、彼らのノームとウンディーネが、ですが」
「そうか」
 彼女の色っぽい口元が、満足気にほころんだ。
「ハイランド・ホークは、受けた恩を忘れない。そして……我々がカイリに頼まれたのは、ここまでだ」
 アンジェリカに話しかけられて、日よけのフードを深くかぶった人物が頷いた。顔は見えない。ハイランド・ホークの面々五人と、フードをかぶった一人。計六人が、東の空に浮かぶ白く巨大な太陽に照らされて、六つの影を作っている。
 彼らの東側の大地に、高さ百メートル、直径百キロメートルに及ぶ広大な台地が形成されていた。ウンディーネが湖を移動させ、ノームが台地を形成したのだ。その意味を知る者は、ここにはいない。
「カイリには、他に誰も連れて来ないでくれと言われているんだ。くれぐれも顔を出さないでくれよ」
 フードの人物が再び頷いた。

 カイリと竜たちが姿を消して、約三年――。世界に何も変化はなかった。いや……ここ数日、ほんのわずかな変化があった。それに気づいた者は皆無だろう。もしかしたら、かすかな違和感を抱いた者はいたかもしれない。
 世界の終わりの兆候は、空に浮かぶピージの移動周期のズレから始まった。何千万年もの間、正確に二十四時間で地球を一周していたピージ……P.G.《プラネット・ガーディアン》が、その速度を落とし始めたのだ。その原因は、ピージに組み込まれた補助バッテリーの老朽化と、それに合わせて発動した自動落下プログラムの起動だった。
 ピージは、隕石など宇宙からの脅威から地球を守る重要な役目を果たしてきたが、その能力と権限は、一歩間違えば地球を滅ぼしかねない威力がある。補助バッテリーは、ピージがどのような異常事態においても、単独で正確な判断・処理を保障するもの。それが老朽化した際に、地球を狂ったピージの脅威から守るためのプログラムが、自動落下プログラムである。
 今の世界に住む人々は、ピージの役目もその危険性も知らないまま、ピージに守られてきた。そしてその危険性を晒すことなく、ピージはその姿を消すはずだった。自動落下プログラムによって……。

 今から五千万年近く前。地球上の様々なディスプレイに、誰かのイタズラとしか思えない謎のメッセージが表示されたことがある。当時、ナノマシンが安定稼動してすでに数百年たっていたが、人々は大いに不安を感じた。ナノマシン上のプログラムが引き起こした何かのエラーではないかと。だがそれ以降何事もなく、やはりイタズラだったのだろうと信じられた。

 精密な計算の結果
 P.G.が正確に私の上に落下することが判明
 至急対処されたし

 スケールの大きなイタズラとしか思えないこのメッセージの発信者が、地球上のどこかに建造されたテラ・フォーミング装置からだと気づいた学者がいた。さらにその十年後、落下しそうもないP.G.が、老朽化により落下する正確な年月日が算出された。
 これが、五千万年近く前にすでに予言されていた世界滅亡のシナリオである。

「来たな」
 アンジェリカが、広大な台地の上に小さく見える人影を見つけた。影は蜃気楼によって揺らめいていて正確にはわからないが、五つあるはずだ。カイリと四人の竜である。カイリからは、台地の陰に隠れているように言われているので、仲間に隠れるように声をかける。
「おい、頭を出すな。吹っ飛ばされても知らんぞ」
 フードをかぶった人物が台地の上を覗こうとするのをたしなめるアンジェリカ。
「ここからじゃ、何も見えないし……我々にはこれ以上、何もできん。後は任せるしかない……」
 まもなく世界が滅びようとしている……とてもそうは思えない晴れ渡った空が広がっていた。

 広大な台地の中心に、カイリと四人の竜が現れていた。カイリが〈離位置《テレポート》〉した場所は、テラ・フォーミング装置が存在する場所から正確に東に千キロメートルの地点。三年前に確かめに来た場所だ。そこを中心に円形の台地が形成されていることを確認して、カイリはアンジェリカ達に感謝した。
「始めよう」
 そう言うカイリは、二十一歳の青年になっていた。三年の歳月が、カイリを以前より精悍な顔つきにしている。
「できるはずだ……そのために三年を要したのだから」
 その言葉は、十八歳のカイリより優しく聞こえる。
「はい」
 四人の竜が、素直に返事をした。

 再び頭を出そうとするフードの人物を、呆れたように注意するアンジェリカ。
「心配なのは、わかるけど……ね」
「ごめんなさい」
 女性の声だった。

 腕を垂らして直立するカイリ。そのカイリを四方から囲んだ竜たちが、それぞれ右手を伸ばし、カイリに手のひらを当てた。その胸に、左肩に、背に、右肩に。東を向いたカイリの正面に立つのはセイリュウ、左に立つのはゲンブ、背後に立つのはビャッコ、右に立つのはスザクである。
「同調《シンクロ》する……」
 目を閉じたカイリが呟《つぶや》いた。竜たちも瞳を閉じた。地面が赤く円を描いて光り、彼らの身体が赤い光に包まれ始める。
 同調《シンクロ》。それは二つのステップからなる。最初のステップは竜同士の同調だ。
 セイリュウが周囲のナノマシンに干渉する。そのナノマシン群にゲンブが干渉する。すると、ナノマシンの支配権がゲンブに移る。水《リキッド》系の竜よりも土《ソリッド》系の竜の命令を優先するナノマシンのルールによるものだ。同様に、ゲンブからビャッコへ、ビャッコからスザクへ、スザクから再びセイリュウへ……これを高速で繰り返すことで、ナノマシンはその命令の主導権を求める先を失い不安定な状態に陥る。ここまで、約十五秒。無数の赤い光点が、カイリと竜たちの周囲を竜巻のように渦巻いている。
 次のステップへ移行。同調した竜たちが、さらにカイリの意識に同調を開始する。ここが難関だった。数日前まで、必ず最後にビャッコが同調を崩し、失敗を繰り返した。成功するようになったのは、ここ一日、二日のことなのだ。ここまできて、失敗は許されない。
 東の空に浮かぶ巨大な白い太陽。その大きな丸い光の中から、小さな光点がゆっくりと現れた。
 ――ピージだ。
 徐々に落下を開始したピージは、まもなく正確にカイリ達の真上を通る。そのタイミングで、間違いなくシンクロを成功させなければならない。ちなみに、ダブル役満《フルコマンド》でもピージまでは到達しない。なぜなら、ナノマシンは宇宙空間にまで存在しないから。衛星軌道まで届かないのだ。
 竜たちの同調した意識が、カイリの意識に重なる。そうすることで、命令者を求めていたナノマシン群が、その主導権の全てをカイリに向け始める……。
 竜たちのシンクロにより、無限に活性化されたナノマシン群。
 竜たちとシンクロした人間が呪文を介さず、直接そのナノマシン群に干渉する。
 それが同調《シンクロ》の目的であり、そうすることで初めて解放される魔法が存在する。
 ……シンクロが見事に成功していることを確認するカイリ。
「トリプル役満《フルコマンド》を解放する……」
 
 届かないはずの場所へ、直接ナノマシンを送り込む魔法。不可能を可能にする魔法。召喚された過去の人間と、四体の竜が揃って、初めて成し得る魔法。それが唯一、この世界を救う魔法……。
(サルネイア……今こそ、全ての幸運を俺に……)

「〈通移位相枢暗光大産源《ホワイトホール》〉――!」
 
 雲と気流を押し分け、天を突き抜ける光。それが上空数十キロメートルの成層圏で、時空の歪みに飲み込まれる。その光が再び現れるのは……生まれたばかりのスザクが発したプラズマでも届かなかった空の彼方……上空三万五千七百八十六キロメートルの宇宙空間……ピージが浮かぶ衛星軌道である。
 砂漠地帯の茶色と、生命圏の青色と、氷雪地帯の白色に塗り分けられた地球を背景に、ナノマシンの奔流に飲み込まれるピージ……。そのエネルギーに対抗する行動は、すでに自動落下プログラムによって封印されている。

「……ありがとう、みんな……成功だ」

 ゆっくりとそう呟いたカイリが、地面に倒れた。四人の竜たちもまた、地にヒザをつき、次々と倒れる。
 舞い上がった砂嵐がおさまる頃。アンジェリカ達が、カイリの元へ駆けた。

 ~(2)へ続く


コメント

いつも楽しみに読ませてもらってます。

天砲と通移位相がシンクロして意図せず四暗刻発動しそうで怖いw

ってツッコミはダメですか?w

◆隠れファンさん
いつもありがとうございます。
お。
おおぉ。
確かに!!w<四暗刻発動しそう
というわけで、後で修正しておきます(あっさり)。
するどいツッコミ、ありがとうございましたw
 ×天砲通移位相大産源
 ○通移位相枢暗光大産源
天砲はイメージ違いだったのですが、元々、「破コ天(コの漢字は未定)」にしようと思っていたのを、急遽変更したので、その名残りで天砲が残っていただけなんですよ。
実際は、
 天崩……ステラクラッシュ(仮)
 地崩……プラネットクラッシュ(仮)
の使い方にしたいです……この竜連れでは出てきませんが( ̄▽ ̄;

3年の月日はさらりと流して
さらにあっさりと「成功」
滅亡は阻止されたようですね。
魔法の効果などの解説は次話以降におあずけ。
フードをかぶった女性はやっぱりアノ人・・・
ムズムズw

◆Aryuさん
いつもコメントをありがとうございます。
もう一気に終わらせる気満々です。
……というか。
本当は、幻の(w)第十話があるべきなのです。
ただ、思いっきり十八禁に走りそうなので、自重したというか、そういう文章力に自身がないというか( ̄▽ ̄;
フードの女性は、セリフがあることで少し想像しやすくなってます。
もうバレたかなぁ……?

なるほど~~~

最後の謎解きはこうなっていたんですか!

3年という長い間に、カイリと竜達は、シンクロするために
どんな特訓をしていたんでしょうねー?

5人で揃ってダンスとかw by エヴァ

◆Leppardさん
こうなっていました。
どんな特訓をしたのかは、私の中でもまだ割とあやふやなままですw
ただ、家族愛でも博愛でもなんでもいいのですが、愛情は絡んでいたはずです。
どこかでこっそり、第十話を書くかも?
こっそり……w

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