ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

FP1-2

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1)


 第一話 黒髪と金髪 (2)

 空気が重く濁って、異臭を放っていた。まるで汚水の底にいるようで、それが肺に入って血液に溶け、身体中に染み渡っていると想像するだけで気分が悪い……。
 夕陽に照らされた女子寮の重い扉を美和が引こうとした時、大柄の女生徒が青ざめた顔で中から出てきた。
「時任!」
 寮内の廊下の方からそう呼ばれ、彼女がビクリと振り返った。時任と呼ばれた大柄な女生徒は、明らかに怯えている。
「な……なに?」
 震える声。彼女を呼び止めた人物が、華麗な仕草で、自分の肩にかかった金髪を払った。
「明日、B組の弓香という子を、あなたが締めなさい」
「え……」
「あなた達を押さえれば、もうこの高校で、私に許可なく勝手なことをする生徒はいなくなるでしょう。……返事は?」
「わ……わかった。でも、弓香は賢いから……他の生徒を使ったりとか……メールで追い込んだりとか……」
「あなたに逆らうようなら、私が直接相手をします。面倒だけどね……その時は、あなたにも連帯責任を取ってもらうわ」
「ひっ……」
 時任のかかとが玄関ポーチの床から2センチ浮くのを、美和は見た。金髪の女生徒……美和と同じ転校生の彼女が、ようやく時任を解放した。
「行っていいわよ」
 その言葉を待っていたかのように、外に駆け出していく時任。
 呆然と立ちすくんでいた美和は、緑色の双眸が自分を見つめていることに気づいた。流暢な日本語が、美和の胸を刺す。
「美和……遊んでいる場合じゃないのよ、あなたらしくもない。こんな仕事、さっさと片付けて早く帰りましょうよ」
「…………」
 金髪の彼女が何を言っているのか、美和にはわからなかった。
「……? ……美和? おかしいわよ、大丈夫?」
 心配気な顔……その表情に、なぜかホッとする美和。そのまま、世界がグラリと歪んで暗闇にのまれる……。
 美和は、寮の玄関先で倒れていた。

   *

「ロイ! どういうことなの!?」
 思わず大声を出してしまったことに気づいて、金髪の女生徒は、自分の口をおさえた。周囲を見回すが、誰もいない。
 ここは、寮にある彼女の自室。正確には時任との二人部屋だが、粗雑なルームメイトは外出したままで、今は一人きりである。
〈一体どうしたんだ、美欧《みおう》?〉
〈どうしたも、こうしたも、美和が……〉
 美欧は、椅子の上で自分の金髪をいじりながら、頭の中に響く声と会話をしていた。
 昼に女子トイレで見かけた美和の様子。夕方に出会った時の様子。いつもの明るい美和とは別人のように萎縮した態度と、突然倒れたという事実。
〈それで……〉
〈今は、自分の部屋で寝てる。保健室の先生が来たけど……もう少し様子をみましょうと言って帰っていったわ〉
〈そうか……〉
〈ロイ、何が起こったのか、わからない? かーちゃんは、何も言ってなかった?〉
〈そうだな……〉
 黙りこむロイに、イライラする美欧。いつもそうなのだ。ロイは、ただの人間とは思えない知識と分析力を持ち、美欧たちの疑問に答えやヒントをくれる。ただ、慎重な性格ゆえに、回答をくれるまでにかなりの時間を要する。それが、短気な美欧には我慢できない。
〈思い当たることがあるのね!? もう、スパッと言ってよ、スパッと!〉
〈……確信はない。誤解がないように言っておくが……〉
〈いいから、早く言って。ルームメイトが帰って来る前に〉
 美欧には、ロイのもったいぶるような態度が信じられない。美和がおかしくなったら、仕事の失敗はもちろん、この先どうなるのか想像もつかないのだ。一方、ロイにしてみれば、この異常事態に美欧に冷静に対処して欲しいと願うばかりである。
〈……この仕事に入る前に、美和が言っていたセリフを覚えているか?〉
〈だ・か・ら、早く答えを言ってってば!〉
〈美欧も聞いているはずだ……『普通の高校生活ができるなんて、夢みたい!』と〉
〈……だから? あ……!〉
 髪をいじる美欧の指が止まった。緑の瞳が見開かれ、椅子から立ち上がる。
「まさか……!?」
 声に出したことに気づいたが、それどころではない。
〈そうだ……今回のターゲットに取り込まれた可能性がある。美和ほどの純粋な子なら、身体があっても他の魂と同様に……〉
〈どうせ私は、純粋じゃありませんよ!〉
 それだけ言って、美欧は〝通信〟を切った。確認する必要がある。もしロイの仮説が正しいなら、道は二つしかない。美和抜きで仕事を済ませるか、あるいは、どうにかして美和を救ってから二人で仕事を済ませるか……だ。
「ふぅ……」
 溜息をもらす美欧。答えは後者に決まっていた。

 ~第一話完、第二話へ続く

コメント

普通の学園物から一転、SFになりましたね。
直接頭の中に響く「通信」、ターゲットに「取り込まれた」、「仕事」
いくつかのワードがでてきましたが、
一番気になったのが、「かーちゃん」
金髪翠眼の美少女が「かーちゃん」って、違和感ありすぎです。w
母親という意味で使ったのかどうか、まだわかりませんけど。
「かーちゃん」はどんな人なんだろう~?

◆Aryuさん
コメントをありがとうございます。
今回はダラダラせず、どんどん設定を出していって、すぱっと終わらせたいなぁと思っているのですが……いつもそう言ってるような気もします( ̄▽ ̄;
この場面で「かーちゃん」は、確かに違和感ありますねw
しかしオリジナル物になると、どうしても設定の説明に気がいってしまって、カーバンクル・カーズの時ほど心情面に入っていけないんですよね……竜連れよりは、入りたいなぁと思っているのですが。

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