ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

FP2-1

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)


 第二話 異変 (1)

 ぼんやりと暗い空間の中。横たわったまま、身体が動かない。指一本、眼球すら動かせず、もちろん瞼《まぶた》も閉じたままだ。それにも関わらずただ視界だけが、どういうわけか全方位に向けてどこまでも広がっていた。
 見えるのは、空間を埋め尽くして蠢《うごめ》く煙のように得体のしれない何か……。〝見える〟気がしただけなのかもしれない。なぜなら、ゆっくりと遠くから近づく一匹の〝それ〟が見えた時。〝それ〟以外は背景として、全て黒く塗りつぶされてしまったからだ。
 暗闇の中で、ただ〝それ〟だけが、はっきりと存在していた。
 〝それ〟……その禍々《まがまが》しい緑色に輝く一本のヒモのような物は、直径一センチ、長さ二十センチくらいに見えた。蛇のように鎌首をもたげ、あたりの様子を探るように、先端をせわしなく動かしている。緑色のヒモは、ゆっくりとしたペースを保ったまま近づいてきて、すぐ横で止まった。
 相変わらずその場で動き続けているが、ヒモの先端はこちらを向いたままだ。本能的に感じる危険……だが、身体は動かない。
 しばらくそこに留まっていた緑色のヒモは、やがて来た時と同じようにゆっくりと遠ざかっていった――。

 突然、胃から喉に込み上げてくるものを感じて、美和は目を覚ました。
「――っう……!」
 身体を起こしたのが精一杯。異臭を放つ酸っぱいものが口から溢れて、二段ベッド下段のシーツを汚した。
「だ……大丈夫!?」
 自分一人きりだと思っていた美和は、いきなり声を掛けられて驚いた。
「きゃあ!」
 ドサドサと何かが崩れる音と、よろける足音がしたかと思うと、声の主が美和に向かって鍋を突き出していた。
「えへへ。慌てて、積んであった本につまずいちゃった。洗面器なんてないから、これに出しちゃって」
 大きなメガネをかけたショートボブ、ジャージ姿の女の子は、部屋に広がる異臭など気にならないかのように、にっこりと微笑んでいる。
「八重《やえ》ちゃん……」
 転校してきたばかりの美和とルームメイトになった鹿島八重だった。人なつっこい性格で、真っ先に友達になってくれた。
「あ、ありがと……ごめんなさい。もう大丈夫だから」
「そう? じゃあ、シーツ洗っちゃうからそこどいて。マットもなんとかしなくちゃ!」
 部屋の窓を開けて換気をしながら、八重が独り言のように叫んでいる。窓から見える外は真っ暗で、どうやら真夜中らしい。美和はだるい身体を起こしてミニキッチンまで歩き、コップに水道水をそそいだ。コクコクと飲み干す。
「あの……ほんとに、ごめんなさい。私……」
 申し訳なさそうに話す美和に、八重が笑って言った。
「目が覚めて良かったよ、美和ちゃん! なんだかスッゴクうなされていたんだもん」
 うなされていた……美和は、夢に出てきた緑色のヒモのことを思い出したが、気にしないことにした。一人でテキパキと美和の不始末を片付けつつある八重を前にして、考え込んでいるわけにはいかない。
「うん大丈夫、これならシミにならないよ」
 洗剤をつけたタオルでマットをぽんぽんと叩いている八重。美和は、汚れたシーツを抱えて部屋を出た。共同の洗濯機部屋で洗うためだ。幸い、服は汚れていない。
 スイッチを入れると、全自動洗濯機に注水される音が部屋に響きはじめた。ふぅ、と溜息をもらすと、美和は洗濯機を動かしたまま戻ることにした。
 夕方に倒れた時には制服だったはずだが、今着ているのはトレーナーだ。
(八重ちゃんが着替えさせてくれたのかな?)
 無防備な状態で着替えを任せたと思うと恥ずかしいが、彼女ならテキパキとやってくれたに違いない。
 階段を上がって自分の部屋がある二階に出ると、左右にたくさんのドアが並ぶ廊下がまっすぐに伸びている。一つのドアの前に、一人の大柄な女生徒が立っていた。
(時任……さん?)
 離れた位置だったが、足を止めた美和に気づく時任。その顔色はかなり悪い。
「おま……えは……きつねばら……みわ……」
 ろれつの回らない、おかしなしゃべり方だった。何かが変だ。
「…………」
 急いで通り過ぎようと思っていた美和。その目の前で、信じられない光景が展開した。
「あ……ば……」
 時任の身体が膨《ふく》れた。文字通り、膨れたのだ。
 ブラウスのボタンが飛び、ブレザーが肩のところで破れた。元々高い身長が二十センチは伸び、異常に盛り上がった肉が、身に付けていた全ての衣服を引きちぎった。
 ……もはや、人間には見えなかった。人の形をした肉の塊だ。頭部は飛び出した肉で変形し、肉に押されて顔が歪んでいる。窪んで線のようになった目から涙が流れていた。
「だずげ……て……」
 ……それが、時任の最後の言葉だった。肉が膨れすぎて、まともに声を出すことも叶わなくなったのだ。
 動けないでいる美和の前で、丸太のように太くなった時任の腕が振り回された。大きな質量の肉が、とてつもないスピードで動いて背後の壁に当たる。コンクリートの壁が、まるで発泡スチロールのように砕けた。
 その時、時任の正面のドアが、ゆっくりと開いた。
「何なのよもう、うるさいなぁ……」
 ドアを開けて出てきたのは、眠そうな目をこするパジャマ姿の美欧だった。

 ~(2)へ続く

コメント

緑のざわざわがいっぱいで、
鳥肌ぞわぞわです・・・(;´Д`)
ホラー路線ですか?

◆Aryuさん
確かにわかりにくいなと思ったので、本文を少しだけ修正しました。
助かりましたー。
緑のヒモは、1本だけなんです。
ホラー路線かと言われると、そうでもないですが、どんな路線かと言われると……うーむ……( ̄▽ ̄;

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