ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに萌えキャラ公式活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

FP2-2

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)
 第二話 異変 (1)


 第二話 異変 (2)

 コンクリートを砕いた時任の膨《ふく》れた腕が、次の瞬間、美欧の目の前にあった。まるで、鋼鉄製のクレーンが高速で回転したかのような重量感だ。
 咄嗟《とっさ》に、右の手のひらを顔の前に出す美欧。白い手には、長くて細い指が美しく五本並んでいる。それが肉の塊をぴたりと止めた。彼女の緑色の瞳が、正面の肉人形を見つめ、近くで動けないでいる美和に視線を走らせた。
「俳配《スタートアップ》……」
 美欧の小さな口から、呟《つぶや》きが静かにもれた。同時に、細めた両目が緑色の光を放つ。

 通模《インプット》・要俳《キーワード》……強く……硬く……厚く
 転配《コンパイル》・役名《コマンド》〝衣蔽甲《シールド》〟

 呪文のような言葉を早口で綴りながら、美和の前に回りこむ。
「論《エグゼ》!」
 美和を背にして立つ美欧の身体の表面に、光沢を放つ透けた青い皮膜が一瞬だけ見えた。そして、腰に手を当てた彼女の顔からは緊張感が消え、笑みさえ浮かんでいる。
「ふふ……もう〝力〟を使う事態になるとは思わなかったけど……早々に尻尾を出してくれて、助かるわ」
 おそらく本人の意思とは無関係に、滅茶苦茶に暴れる時任。その腕は廊下の壁を壊し、美欧に容赦なく振り下ろされる。しかし美欧は吹き飛ばされることもなく、かすり傷一つ負わない。明らかに美欧よりも重いはずの肉の腕が、美欧に触れた途端、ぴたりと止まるのだ。まるでエネルギー保存の法則が無視されているように見える。
 怯えて部屋から出てこない女生徒ばかりでもないらしい。真夜中の轟音と振動を不審に思った者たちがドアを開け、巨大な肉塊を見て悲鳴をあげた。
「さくっと終わらせましょうか」
 そう言う美欧の腕を、引っ張る者がいた。美和だ。震えている。
「……時任さんなの……時任さんが、こんな風になっちゃったの」
 意表をつかれた美欧が振り返った。
「……なに? まさか殺すなとか、言いたいわけ?」
 呆れた表情を浮かべる金髪の美少女。美和が遠慮がちに頷いた。
 ――助けて。
 最後に、時任はそう言った。その言葉が、美和の頭から離れない。
「……このままだと、被害が拡大しちゃうってば」
 イライラする美欧に、美和が怯《ひる》むことはなかった。きっぱりと言い放つ。
「建物なんか、いくら壊れたっていい。みんなを守って」
 その黒い瞳は真剣だ。……美欧が溜息をついた。
「あのね……本来は、美和が攻撃役《オフェンス》、私が防御役《ディフェンス》なんだからね」
「……え?」
 美和のそばを離れて、時任の腕を捕まえる美欧。
「私より、あんたの方がずっと強いの。どうして、かーちゃんは、私とあんたの力を逆にしてくれなかったのかなぁ……」
 ぶつぶつ言いながら、美欧が別の役名《コマンド》を発現した。
「論《エグゼ》ッ!」
 時任の身体から噴き出す蒸気のような白い気体。ゆっくりと彼女の肉がしぼみはじめた。
「な……何をしたの?」
「〝産触導潤《キュア》〟――。今さらあんたに説明するのもバカバカしいけど……身体に生じた異常な部位を、DNAの情報どおりに修復する役名《コマンド》よ」
「役名《コマンド》……」
 美欧が美和をちらりと見た。完全に元の記憶を失っている。かといって、別の人格が支配しているわけでもないらしい。それでも高校生としての状況を自然に受け入れ、生活しているのは、どういうわけなのか。
「大丈夫、美和ちゃん!?」
 駆け寄ってきたのは、八重だった。手に大きなバスタオルを持っている。
「時任さんってば、どうしてあんな姿に……」
 時任の大柄な裸体にバスタオルを掛けて、上半身を起こす八重。
「みんな手伝って。とりあえず、ベッドに運ぼうよ」
 テキパキと指示を出す八重に、二、三人の女生徒が手を貸した。世話焼きが趣味のような彼女に好意的な生徒は多いらしい。特に同じ寮に暮らす彼女たちは、何度も世話になっているのだろう。美和だって、八重には感謝している。
 美欧と時任の相部屋は、壁に大きな穴が開いていたが、構わずベッドに寝かせる八重。
「管理人さん、今日は留守なんだよね、たしか……。今夜は、このまま寝るしかないよ」
「構わないよ」
 美欧が即答した。
「あんた達は、早く自室に戻りな」
 美欧に対して怯えるように部屋から出ていく女生徒達。美和と八重も出ていった。
 八重のように世話を焼く気のない美欧は、時任に服を着せることもなく、掛け布団をかぶせただけだった。それから椅子に座って、金髪を指でいじり始める。
〈ロイ……起きてる?〉
〈起こされたよ……地上の異空間指数が二乗を超えたからな。汎数《レベル》2の役名《コマンド》……〝散暗光《ライト》〟でも使ったか?〉
 衛星軌道からの通信は、まるで有線のように良好だ。
〈〝産触導潤《キュア》〟を、ちょっとね……〉
〈なんだって。怪我でもしたのか?〉
〈そうじゃなくて……〉
 ロイと美欧の通信は、夜が明けるまで続いた。

 ~第二話完、第三話へ続く

コメント

お~、なんか馴染みのある言葉が出てきたぞっ!(笑)

あいかわらずコメントしないままで、読ませていただいております。m(__)m
続きを楽しみにしてます。
ゆっくりとマイペースで書きつづけてくださいね。

この魔法(の唱え方)は、竜連れのっ!
もしかして、「かーちゃん」ってカイリ?!
って、カイリが魔法使えるようになったのは遠い未来の
しかもその時代に再現されたカイリだしナイナイ・・・

◆いずみさん
ありがとうございます。
読んでいただけるだけでも、ありがたいですが、1行でもコメントがあると尚嬉しいですw
そうですね~、ゆっくりでも完結まで書きたいと思っています。
馴染みのある言葉は、こちらが元で、それを竜連れの魔法に流用したというのが本当のところです( ̄▽ ̄)

◆Aryuさん
この作品の基本設定は、元々20年くらい前に、私が素人漫画で描いていたものです。
Webで見れるんですが、そのリンクを紹介した方がいいか、このまま情報なしで読み進めていただいた方がいいか、私はよくわかりませんw
というか、絵が古いので恥ずかしいというのもあります( ̄▽ ̄;
漫画の方を見ちゃうと、「かーちゃん」のこともわかってしまうので、美和たちの設定が明らかになる頃にお知らせしますね。

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