ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに萌えキャラ公式活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

FP5-3

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)
 第二話 異変 (1) (2)
 第三話 思い出した? (1) (2)
 第四話 M&M兵器 (1) (2)
 第五話 夢見る侵略者 (1) (2)



 第五話 夢見る侵略者 (3)

 あらためて今の八重を調べる必要はない。原子単位の調査である〝枢暗光《サーベイ》〟を使ったのだから、それ以上の物理的な情報は得られないだろう。あるとすれば、経時変化……時間によって変化する情報。だが、数分後の八重を調べたからといって有益な情報が得られるとは思えない。
 美欧は、直接八重と話をするつもりだった。知りたいのは、過去の情報だ。普段の生活で、違和感を覚えたことはなかったか? 体調の変化、記憶の欠落等はなかったか。
「…………」
 気を失ったままベッドで寝ている八重を見て、美欧が溜息をついた。人の良さそうな寝顔だ。美和が美欧の腕をつかんだ。
「八重ちゃんを疑っているんだね、美欧」
 真剣な黒い瞳。美欧がまばたきをした。
「フレッシュ・メーカーの姿を見たものは誰もいないわ。意志を持って活動しているのかどうかさえわからない。美和は夢かもしれないと言ったけど、何らかの手掛かりが得られればと思ってる」
「……もし」
 目をふせて、美和がつぶやいた。
「もし、八重ちゃんがフレッシュ・メーカーだとしたら」
「美和……そうと決まったわけじゃ……」
 美和に目を向けて、ひるむ美欧。美和の全身から強い意志を示すオーラが発散されている。こんな美和を見たことが、過去に一度だけあった。かーちゃん……二人の母親的存在であるフォックス所長が、反社会的思想の持ち主だとニュースで流れた時だ。それは後に訂正されたが、その時の美和は、全宇宙を敵に回す覚悟の形相だった。実際に二人が本気になれば、その圧倒的な戦闘力で銀河系全域を支配することも不可能ではないはずだ。
(ばかばかしいニュースだった。かーちゃんが本気になれば、この世で手に入らないものなんてないのに……銀河系帝国皇帝の椅子でさえ……)
 美和がきっぱりと言った。
「八重ちゃんがフレッシュ・メーカーだとしたら、私は〝約束の扉〟を開ける。大切な……大切な友達なの」
「わかったわ美和、その言葉だけで十分よ。八重が、あなたに〝約束の扉〟を開けさせるほどの……この宇宙で価値ある存在だということ。私たち二人が、全力で守る価値がある存在だと、そう言うのね」
 コクリと頷く美和。こうなった美和に、何を言っても無駄だ。美和は八重に恩を感じている。それは、美欧が八重に感謝する十分な理由だった。
「ロイのぼやきが聞こえるわ……〝依頼の失敗は、信頼の失墜。お前たちが社会性を身に付けるには……〟」
 美欧がまねるロイの口癖を、美和が引き継いだ。
「〝死に物狂いで、依頼を成功させること〟……!」
 二人が笑っていた。彼女たちには、全ての思想や道徳よりも優先する事項がある。それは、大切なものの優先順位。1位は互いの存在。2位が、かーちゃん。3、4位がなくて、5位がロイといったところだろうか。
 面白くなさそうな声が、頭に響いた。
〈残念だが、お前たち〉
「ロイ!」
 すぐに美欧が反応した。
「そろそろ主張したいわ、私たちのプライバシー保護を。盗み聞きなんていうストーカー行為に、私たちは断固抗議します」
 その主張を、あっさりと無視するロイ。
「フレッシュ・メーカーと八重は、関係ない」
「え?」
 二人がロイの話に集中した。
〈美和が見たのは夢だろう。ただし、実際に体験したことを夢で見た……〉
「どういうこと?」
〈一つずつ理解してもらうから、よく聞いてくれ。まず、寝ている間に美和が〝枢暗光《サーベイ》〟を使ったということはありえない。お前たちも知っているように、二人が共通で使える役名《コマンド》は、汎数《レベル》4までだ〉
「うん」
「そうだね」
 美和と美欧が頷いた。
〈美和が使える分析系の役名《コマンド》は、汎数《レベル》2の〝散暗光《ライト》〟のみ。それを無意識に使った場合、おそらく度等《ブースト》は乗せていないから、その分析範囲は自分の周囲五メートル以内だ〉
 美和が呟いた。
「……夢の内容は、もうあまり思い出せないけど……フレッシュ・メーカーが私に触れるくらい近くまで来たことは間違いないと思う……」
〈美和にいつでも近づけたという点で、俺も最初は八重を疑ったが……それだと説明できないことがある〉
「どういうこと?」
 そろそろ結論を聞きたくなってきた美欧の、はやる心をおさえた質問だった。
〈美和の様子がおかしいと美欧から連絡をもらった後、ブルーフォックスが自動受信する定時通信記録を調べた。美和からだけ定時通信がなかったわけだが……それは、美和が八重に会う前からだった。いつからかと言うと……〉
「編入日、当日……」
 美和の答えに、「そうだ」とロイが答えた。美和の持つ光‐重力演算装置は、美欧のそれに比べると容量が半分しかない。そのせいかどうかは知らないが、どちらかというと美欧よりも記憶力に乏しい美和が、それでも学校編入前後で意識の明瞭さが全く違うことを記憶していた。
「その日すでに、フレッシュ・メーカーが美和に近づいていたってこと?」
〈そうなるな。言ってみればお前たちは、宇宙から〝再現《リプロダクション》〟に侵入してきた異物だ。単なる物理的な反応か、意志を持って興味を示したのかはわからないが……〉
「じゃあ、美和が見た夢は、実は転入日の出来事――?」
 そうじゃない、とロイは言った。
〈美和が緑色のヒモ状の物について話すのを聞いた後、美和周辺の異空間指数記録を過去にさかのぼって調査した。お前たちが役名《コマンド》を使用したのとは別に、〇・一乗ほどの異空間指数を2回ほど検知していたんだ〉
「いつ……?」
〈編入日当日と、美和が寮で倒れた日だ。その日……〉
「わかった」
 美欧が顔に笑みを浮かべていた。きょとんとする美和。
「フレッシュ・メーカーの正体そのものか、単なる隠れミノかは別にして。おさえるべきターゲットはわかったわロイ。ありがとう」
〈どういたしまして〉
 窓から入った夕陽が、ベッドの一部をオレンジ色に照らしている。八重の寝顔を背にして、美欧が窓に足を掛けた。
「この世界をどうするか……は、フレッシュ・メーカーを捕まえてから考えましょう」

 ~(4)へ続く

コメント

八重ちゃんは違うみたいで、前回心配したことは杞憂に終わりそうです。よかったよかった
すると、「しっぽ」は誰なのか?そして新たに出てきた「約束の扉」とは?
美欧のようにジリジリしながら次話を待ちたいと思います。

◆Aryuさん
この小説の「売り」が何なのか、自分でもよくわからなくなっていますが。
八重がフレッシュ・メーカーだとしたら、結構ドラマチックな展開になったかも……と思いつつ、当初のストーリーに戻ってきました。
あまりこねくり回さずに、エンディングを迎えたいと思っています。

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