珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

FP5-4

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)
 第二話 異変 (1) (2)
 第三話 思い出した? (1) (2)
 第四話 M&M兵器 (1) (2)
 第五話 夢見る侵略者 (1) (2) (3)



 第五話 夢見る侵略者 (4)

 太陽が沈み、空が夕焼けから夕闇に変わる。世界にあふれる光が失われていくこの時間、感覚的には一日で最も暗い時間だ。いっそ夜になってしまえば、街の光に照らされた世界が当たり前になるだろう。
 学校を見おろす裏山に、一人の女性が立っていた。白衣の胸元からは白いブラウスが、裾からはベージュのスカートがのぞいている。彼女は、木々の間から見える崩れた校舎から目をそらすと、白衣のポケットに右手を入れたまま溜息を吐いた。
 その背後の木陰から二人の女生徒が現れ、白衣の女性がびっくりした様子で振り返った。
「いいんですか、北条先生。他の先生方や街の人達は、ケガをした生徒の対応に追われているっていうのに」
 美和の言葉を美欧が継いだ。
「保健医の先生が、こんなところで職務放棄だなんて」
 伸びた黒髪を背中で一つにまとめた保険医が、低い声を漏らした。
「何者なの、あなた達?」
「はじめから、そう聞いてくれれば良かったんです。編入日の簡易健康診断の時でも、私が寮で倒れて診に来てくれた時でも」
 きっぱりと言い切る美和に対し、美欧の口調は慎重だった
「先にあなたのテリトリーに紛れ込んだのは、私たちだけどね。探り合いは、お互い様ってところかしら」
「勝手にやってきて、勝手な言い分ね……」
 北条の言葉に、落ち着いて答える美欧。
「それは、こっちのセリフ。この惑星で勝手なことをやっているのは、あなたでしょう?」
 それを聞いて、北条がクスクスと笑った。
「先にこの惑星を管轄に置いたのは、あなた達人類が先だと言いたいの?〝グリーン〟は、人類がこの銀河に誕生するよりもずっと前に、この銀河にやって来たのよ。何千億年も昔から、この銀河系に住んでいる……先住権を主張するなら、〝グリーン〟の方が先だわ」
「……グリーン?」
「……あ!」
 美和が驚いた表情で、保険医を指差した。白衣のポケットから出した右の手のひらの上に、緑色に輝くヒモのような物体が乗せられている。それが蛇のように動いていた。
「グリーンはね、自分が入れられたこの宇宙という容器が嫌いだった。退屈だから。素粒子と重力に支配されたこの宇宙では、球を基本にした構造しか見られないんだもの」
「…………」
「だからね、夢を見たの。この宇宙で、ただの化学変化以上の何かが起きることを。夢を見て……それが現実になった。生物が生まれ、様々な構造を形作るようになった。やがて人類が生まれると、グリーンは歓喜したわ。複雑な構造物を次々と創造する彼らのことが、グリーンは大好きだった」
 ぽかんと口を開けている美和と、イライラした表情になっていく美欧。彼女たちを通して会話を聞いていたロイの表情が、固まっていた。
「なん……だって……」
(おそらく美和と美欧は、彼女の言葉の意味するところを理解していまい。この保険医の話……信用できるのか?)
 ブルーフォックスの窓から見える星空に浮かぶ惑星は、青く美しい。同じように大気のある惑星はこの銀河系にいくつもあるが、これほどの美しさは、人類の故郷〝地球〟と、この〝再現《リプロダクション》〟でしか見られないだろう……。
 突然、地上の異空間指数がはね上がるアラーム音が、白い室内に響き渡った。

「そうよ、グリーン……もう断定しましょう。この娘たちは、破壊者です。あなたの大好きな創造物を粉々にし、奪おうとする破壊者。……だって、あなたの素晴らしい夢の産物を認めないんですもの。それが自らの存在を否定することだと気づかない……」
「何を言って……!」
 叫ぶ美和の腕を、美欧がつかんだ。
「飛ぶよ、美和。異空間指数が尋常じゃない……このまま地上《ここ》にいたら、私たちが身を守ろうとするだけで……」
 美和の脳裏に、寮のベッドで眠っている八重の顔が浮かんだ。高い汎数《レベル》の役名《コマンド》は、惑星の表面を地殻ごと破壊する。
「……わかった」
 〝離移地《フライ》〟で宇宙に向かう美和と美欧の眼下で、北条の白衣が千切れて風に舞った。膨れる身体……時任や八重の身体に生じたのと同じ、肉膨張現象だ。その巨大化率は、八重のレベルをはるかに超えていた。宙に浮き、大気圏外まで追ってきた北条は、巨大化していた時の八重を踏み潰せるほど大きい。

〈すぐに逃げるのね。こっちは、あなた達に消えてもらうために、必死だっていうのに〉
 直接、頭に響く北条の声。美和と美欧がロイと交わす異空間通信回線に、あっさりと割り込んできたのだ。二人には信じられないことだった。高度な科学技術を有する大国の軍でさえ、不可能なはずだ。
〈動揺するな、二人とも。フレッシュ・メーカーが異空間接続能力を有することは、わかっていたはずだ〉
 そう言いながらも、コンソールの前で震えるロイ。
(もっと原始的な存在だと思っていた……これほど高度なことができるのか。フレッシュ・メーカー……奴もまた、地上で能力を抑制していただけなのかもしれない……〝再現《リプロダクション》〟を破壊してしまわないために……)
 回線に、笑い声が響いていた。北条の狂ったようにけたたましい声だ。
〈もう少し、わかりやすく教えてあげる。この宇宙はね、グリーンを創った〝神〟が、グリーンを観察するために用意した水槽なの。そしてあなた達人類は、その水槽の中でグリーンが暇つぶしに作り出したオモチャ。わかるかしら……? あなた達の存在が、どれほどつまらないものか!〉
 時任や八重は、肉人形化することで全身の痛みに苦しんでいた。だが北条は違う。その身体を、強化された武器として使いこなせるようだった。
 彼女が左腕を持ち上げると、その腕先から光の柱が迸《ほとばし》り、美和と美欧を飲み込んだ。

 ~第五話完、最終話へ続く

コメント

保健医の先生がしっぽ・・・というか、北条先生どんな風に登場してたのか
ちょっと読み返してきます。
ところで、肉膨張現象で巨大化した北条先生は膨張することで
(地面に足をつけたまま)大気圏外まで(身体を伸ばして)追ってきた
のでしょうか?
二人のように飛んだと考えるのが普通なのかなー?

宇宙がグリーンを観察するための水槽。
宇宙は今も膨張している-と、なにかで見たのですが。
その宇宙の外側はどうなっているのでしょうね。
光の速さで何億年もかかる距離の広さのさらに外側って・・・
考えていて気が遠くなるのを通り越して気持ち悪くなります。
(;´Д`)

◆Aryuさん
う……北条先生は、飛んで行きました。
後で描写を書き加えておきます。
いつも、ありがとうございます~!
宇宙の外側は、我々の3次元感覚で想像することはできないので、さっぱりわかりませんw
この小説、早く終わらせたい……( ̄▽ ̄;

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