珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

FP6-2

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)
 第二話 異変 (1) (2)
 第三話 思い出した? (1) (2)
 第四話 M&M兵器 (1) (2)
 第五話 夢見る侵略者 (1) (2) (3) (4)
 最終話 破壊と再生 (1)



 最終話 破壊と再生 (2)

〈どういうことなの……? いくら美欧でも、怒るよ……〉
 美和の周囲で、見えないエネルギーが渦巻いている。その双眸から涙がこぼれ落ちていた。頭に浮かぶのは、八重の生前の姿。
 ――初めて寮の部屋に入って落ち着かない私に、満面の笑みでお茶を出してくれた。用意するのを忘れていた日用品を、押し付けるように次々と貸してくれた。クラスメートと馴染むのを助けてくれたのも八重ちゃんだった。ベッドに吐いてしまった時には……。
〈…………〉
 ゆっくりと振り返る無言の美欧。無表情な彼女に、美和が言葉を重ねる。
〈私、言ったよね。八重ちゃんは、私の〝約束の扉〟を開けても構わないくらい大切な友達だって……!〉
 瞳を少し伏せるようにして、美欧がゆっくりと呟《つぶや》いた。
〈私の〝約束の扉〟を、今から開けます……〉

   *

 青空と緑の芝生が広がる広い庭で、二人の娘が走り回っている。金髪の娘が持つホースの先から噴き出した水のアーチから水滴が飛んで、キラキラと光った。それを笑顔で受ける黒髪の娘。十八、九歳くらいに見える娘たちが、五、六歳の幼児のようにはしゃいでいる。強い日差しを日傘で避けた白衣の女性が、サングラス越しに二人の様子を見守っていた。サングラスの上、額の真ん中にホクロがある。
「美和、美欧。そろそろ家に入るわよ。午後には、かーちゃんと一緒に研究所に戻らないと」
「はーい」
「ちぇっ」
 まだまだ遊び足りない様子である二人の精神年齢は、推定六歳。生まれてまだ三ヶ月である。駆け寄ってきた二人を、日傘を持ったまま両腕で抱きしめる女性。そのまま動かない。
「かーちゃん……?」
 最初は笑顔だった娘たちが、いつもより長い抱擁に不審の表情を浮かべた。
「二人に、話しておくことがあるわ」
 フォックス所長がはっきりと言った。
「今日のモジュールインストールで、あなた達の〝扉〟の開閉権をあなた達自身に委譲します」
「とびら?」
 理解できない表情の娘たち。
「そうよ。あなた達の心が存在する異空間につながる〝扉〟。今までは、ワガママなあなた達がむやみに〝力〟を発動しないように……あるいは、試験のために強制的に力を発動してもらうために、私が扉の鍵を預かっていたの。異空間にある光‐重力演算装置へのアクセスキーよ」
「???」
「なに?」
 ふっと表情を緩めるフォックス所長。
「これからは、いつでも自由に、あなた達自身の意思で力を使えるようになる。それと同時に……」
 二人を抱きしめる腕の力が強くなった。
「アクセスキーを、特定の誰かに譲ることも自由にできるようになるわ。でも気をつけて。一度譲ったら、その所有権は、もうあなた達のものではなくなる。あなた達は、完全にその人の支配下に置かれることになる……」
 どうしてそんな仕組みにしてしまったのか? ロイがフォックス所長に食ってかかったことがある。その時、所長はきっぱりと言った。
 ――本当に自由であるということは、自分の全てを誰かに預けることもできるということよ。もちろん、そうしないこともできる。その選択ができることが、人としての自由だと私は考えます。
 作り上げた最高傑作。愛しい娘たちを、いつまでも自分の〝モノ〟にしておきたい気持ちはある。だが、それではいつまでたっても〝モノ〟のままなのだ。コンピュータに毎日〝愛シテル〟と囁《ささや》かせるプログラムを作って、それを毎日聞いたところで、愛に満たされるだろうか……?
「約束して、美和、美欧。扉を開ける相手は、この宇宙の未来を預けてもいいと感じられるくらい大切な人にすることを……。あなた達には、それだけの力があるのだから……」
 うん……わかった……理解できていない表情のまま、そう返事をする二人。
 〝約束の扉〟……それは、この宇宙を支配することさえできるM&Mの圧倒的な力を手に入れる……そのことを約束する扉である。美和の扉の内側には、美和の光‐重力演算装置が、美欧の扉の内側には、美欧の光‐重力演算装置が存在する。そこへのアクセスを許すということは、彼女たちの存在そのもの……その心と力の源への介入を許すと言うことだ。

   *

「普通の人間は、そんなことは考えない。自分という存在を、他者に預ける自由なんて発想はない……。フォックス所長のように……世界の命運を左右できる程の人物だからこそ、自分の能力の使い道を考えるのだろう……劉備玄徳に仕えた諸葛亮孔明のように……」
 白い部屋の中で、ロイが独り言をもらした。美和と美欧の会話から聞こえた〝約束の扉〟という言葉で思い出したのだ。
 ロイは思う。おそらくフォックス所長は、M&Mが本当に誰かに扉を開けるとは思っていなかっただろう、と。何故ならフォックス所長自身が、今まで誰かに仕えるようなことはなかったからだ。あくまで自由の象徴としての機能にすぎないと……そう思っていた。だが今、美和と美欧は確かに、扉を開く話をしている……。
 ディスプレイには、美和と美欧、そしてグリーンがいるはずの空間が表示されている。その地点の異空間指数は、微動だにしていなかった。

 ~(最終回)へ続く

コメント

扉を開ける=アクセス権を譲ることではないと思いますが
(美和も八重ちゃんは大事な友達と言っているので
 主従関係になりたいわけではないでしょうし)
扉を開けるとどうなるのかがまだ不鮮明なので
これからどうなるのか・・・
北条を消しただけでグリーンの怒りが静まるとも思えないし
でも戦わずに逃げるのかな?とか
美欧の扉の力は???とか。次話まで妄想してますw

◆Aryuさん
いろいろ想像してもらえてありがたいです。
ありがとうございます!
最終話ももうすぐ終わると思います~(たぶんw)

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