珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

FP6-3

 
「フレッシュ・プラネット」
目次
 第一話 黒髪と金髪 (1) (2)
 第二話 異変 (1) (2)
 第三話 思い出した? (1) (2)
 第四話 M&M兵器 (1) (2)
 第五話 夢見る侵略者 (1) (2) (3) (4)
 最終話 破壊と再生 (1) (2)



 最終話 破壊と再生 (最終回)

〈約束の扉を今から開けるって……私に、美欧の全てをゆだねるって言うの? そんなことされても私、嬉しくないよ!〉
 黒髪の娘が流す涙が、たくさんの玉になって宇宙を漂う。
〈そんな覚悟があるくらいなら……二人で死にもの狂いで、八重ちゃんを守りたかった……!〉
 美和の叫びを聞いて、悲しそうな表情を浮かべる美欧。
〈……グリーンの力を持つ北条を倒すには、彼女の言うとおり〝駆け引き〟しかなかった。駆け引きの苦手な美和に黙ったままね。通信は聞かれていたから……〉
 美欧が視線を動かした。その先に浮いているのは、緑色の生きたヒモ。名はグリーン。
〈約束の扉を開けます……少しだけ。いらっしゃい、グリーン……あなたの望むものが、ここにある……〉
 美和の表情が固まった。美欧の言っている意味がわからない。
〈グ……グリーンに……?〉
 グリーンが反応した。美欧の存在する座標の異空間指数が、どんどん上がっていく。
 美和と美欧……M&Mは、異空間と現空間を接続する装置。異空間と現空間を接続すると、その空間エネルギーの差によってエネルギーの流出入が生じる。それを上手に制御すると、攻撃にも防御にも使える無限のエネルギーとなる……それがM&M兵器の基本原理。だが今は、エネルギーの流出入はない。ただ接続された空間領域が広がっていくだけ……。
 グリーンがスルスルと美欧に近づくのを見て、美和の顔に緊張が走った。
〈美欧……どういう……〉
〈…………〉
 美欧の返事は、なかった。

 美和が何もできないまま、グリーンが美欧の身体の中に消えた――。

 小型高速宇宙船ブルーフォックスの中にある白い部屋で、ロイが腕を震わせていた。
「俺には何もできない……美欧が美欧の意志で約束の扉を開くことを止める力も……権限も、俺にはない。だが、できるなら……君たちには、その扉を永久に……誰にも開いてほしくはなかった……」
 ブラウンヘアーの男は今、その髪をかき上げることも忘れて、うつむいていた。
 かつて美和は言った。
 ――八重ちゃんがフレッシュ・メーカーだとしたら、私は〝約束の扉〟を開ける。大切な……大切な友達なの。
 フレッシュ・メーカー〝グリーン〟の存在が人類に害をなすことは、主要惑星《セントラル・プラネット》サダイエの事件でわかっていた。八重に味方すると言うことは、人類に敵対すると言うことだ。人類が存在する惑星上でフレッシュ・メーカーが〝再現《リプロダクション》〟を実行すれば、そこに生きていた人々は死んでいく。それを見殺しにするくらいなら……それでも八重の存在を優先するならば……自分という存在を八重に預ける……それが美和の答えだった。
 だが今、実際には美欧がフレッシュ・メーカーに扉を開けていた。フレッシュ・メーカーの正体は八重ではなく、未知の存在〝グリーン〟だったと言うのに……。

 スピーカから美欧のかすかな声が聞こえた。
〈ロイ……心配してくれて、ありがとう。でも私は……これに賭けるしかないと思った……全てを解決するには、これしかないと……〉
 顔を上げるロイと美和。
「美欧?」
〈美欧?〉
 少しの間。そして美欧の言葉が、ロイと美和の二人にはっきりと届いた。
〈……賭けに、勝ったみたい〉

 美和の身体が、足元から青い光に照らされた。柔らかく、優しく、そして力強いブルーライトに目を細める美和。
 荒涼とした大地しか見えなくなっていた惑星HLB9152‐66の表面に、海が、大気が、生み出されていた。
 美欧の通信が響く。
〈覚えているかしら……私が、汎数《レベル》13の役名《コマンド》〝枢暗光《サーベイ》〟を使って、この恒星系の原子レベルの詳細なマッピングを作っていたことを……。そのデータへのアクセスを、グリーンに許可したわ〉
 怒ったように叫ぶロイ。
「何だって!? そんな危険なことを! 意識を奪われる可能性だって、かなり高……」
〈言ったでしょ、〝賭け〟だって……〉
 うつむいた美和が、絞り出すように声を漏らした。
〈こんなの……怒るよ、私だって。八重ちゃんのために、美欧がいなくなったら……〉
 美欧に向けて顔を上げる美和。震える声。
〈ごめんなさい、美欧。私のために……こんな危険なこと……ありがとう〉
 惑星上では〝再現《リプロダクション》〟によって数十分前の街並みが、人々が再現されていた。学校の寮では、八重が安らかな顔で寝息をたてている。
 元々グリーンの〝再現《リプロダクション》〟によって作られていた世界が、再生された結果だった。
 ロイのいぶかしむような言葉が、美和の胸を突いた。
「美欧……グリーンは、どうなったんだ? どこにいる?」
〈……まだいるわ。私の中が気に入ったみたい。過去に実行した〝枢暗光《サーベイ》〟のデータの宝庫だからかしらね〉
 美欧の返事を聞いて、顔を曇らせる美和。
〈美欧は言ったよね。全てを解決するには、これしかないと思ったって……。グリーンのことは、どうするつもりだったの? どうやって、美欧の中から追い出すの?〉
 それに対する美欧の声は明るかった。
〈このままずっと、私の異空間の中に居てもらうわよ。光‐重力演算装置の過去のデータ領域だけにいてくれるなら害はなさそうだし、それに……〉
「待て、美欧。それは危険だ。グリーンだって学習したり成長したりするかもしれん。いつか君の扉の内側を全て支配する時が来たら……」
 胸元で自分の手首を握り締める美和。今が安心できる状態とは思えない。だがやはり、美欧の声は明るかった。
〈二人とも心配しないで。今ならグリーンの考えていることがわかる……おそらく北条がそうだったようにね。彼は現状に満足しているわ。それに……たぶん私……〉
 そう言いながら、右手を持ち上げる美欧。
〈見てて〉
 彼女が開いた手のひらの上に突然、真紅のバラの花が現れた。
〈それは――?〉
「……〝再現《リプロダクション》〟!!」
 微笑む美欧。
〈ある程度だけど、相手を支配したのは私の方かもね。まぁ、私の光‐重力演算装置は美和の二倍……宇宙丸ごと一つ分くらいあるわけだし。グリーンを飲み込んじゃった感じかも?〉
 美欧自身にもわかっている。これは賭けだった。こうなる確信があったわけではない。グリーンの危険がゼロと断言できるわけでもない。それでも――。
〈言ったでしょ、賭けに勝ったって。今回の事件は万事解決。ただし……惑星HLB9152‐66は、私たちの所有惑星にします。グリーンによる被害は二度と出さないんだから、安いものでしょ?〉
「……くく」
 ロイが額を押さえて笑っていた。
「帝国が拒否しても、力ずくでそうするつもりなんだろう? 好きにすればいい。君たちには、それができるだけの力があるんだから」
〈……失礼ね。まるで私たちが人類の敵のように言わないでほしいわ〉
 口をとがらせる美欧の顔を見て、ようやく美和が笑みを浮かべた。
〈もう……こんな無茶はしないで、美欧〉
〈はいはい〉
 二人が青く輝く惑星に降下していく。八重に会うために。
 この銀河系が抱えていた危機が一つ減り……ロイは、正式に惑星を所有するための膨大な事務手続きに追われることになる。
「惑星の買い取り価格……今回の報酬で、足りるのか?」

  ~ フレッシュ・プラネット 完 ~


コメント

リプロダクション・・・できたら便利ですねー
美欧のように手品もできるし(違)

惑星の価格なんて想像もつかないけど、
やっぱり埋蔵資源の種類や量だったり、
観光地となるような環境や目玉要素があると高くなったりするのかなー?
そしてM&Mを雇うにはそれぐらいの報酬が必要ということですね・・・
そんな「何でも屋」さんに、そうそう仕事なんかこないんじゃないでしょうか?w

ともあれ、完結 おめでとうございます。お疲れ様でした。
毎回駄コメにレスいただきありがとうございました。

◆Aryuさん
自分で言うのもなんですが、こんな一般ウケしなさそうな小説に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
惑星の価値については、Aryuさんと同じような感覚で考えていました。
ただ私が考えていた一番重要な価値は、「位置」ですね。
そこにたどり着くだけで膨大な費用がかかるようでは、売れません。
本文中には特に記述しなかった気もしますが、この惑星は辺境にあってかなり安いことになっています。
地球上のへんぴな無人島が安いような感覚でしょうか……個人でも買えそうなイメージです。
長期に渡るお付き合い、本当にありがとうございました。

どうも、見させていただきました。
前のよりは短かったようで、一時間程で読めました。
そういえば再現を使えばいくらでもお金を手に入れることが出来るような気が…

◆やすよしさん
こちらまで読んでいただき、どうもありがとうございます。
こちらは竜連れと比べるとかなり短いです。
そうですね、再現でお金を作る話は思いつきませんでした。
ただこういう未知の力でお金を作る話は、昔からよくあります。
漫画ブラックジャックでは、宇宙人に本物そっくりのお札をたくさん作ってもらったら、番号が全て同じですぐに偽札だとバレる……というオチでした。
この科学が発達した時代ですから、もっとしっかりした認証方法で1枚1枚が区別されていそうな気がします。
同じ番号が同時に2枚存在したら、すぐに検知されるとか……?
この場合、お金ではなく金(きん)や宝石等、売って価値があるものの方がいいでしょうねぇ。
いっそ、惑星自体を再現すれば……とか。

30分ぐらいで読み終わってしまいました。
やっぱり面白いです!
毎回読むのが楽しみになってきます。
私は「竜を連れた魔法使い」を読んでから、「フレッシュ・プラネット」を読んだので
魔法のもとが、「竜を連れた魔法使い」に感じられます。
どっちから読んでも楽しめますね。

そして、私の物語にコメントを下さってありがとうございました!
参考にしたいと思います!
本当にありがとうございました。(^-^)v

◆蜜柑さん
こちらまで、ありがとうございます。
これは、今掲載している中では、一番の失敗作ではありますけど……読んでいただけたのは嬉しいです。
続きの執筆、がんばってください( ̄▽ ̄)/

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