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劇場アニメ「おおかみこどもの雨と雪」-感想

おおかみこどもの雨と雪」の感想を書きます。
私は評論家でもなんでもないし、そんな知識もないので、観客のひとりが抱いたひとつの感想です。
作り手側の意図等は気にせず、各メディアで絶賛される技術的な部分に関しても省略して、自分が何を感じ考えさせられたかという夏休みの感想文。
それは、人の幸せとは何だろうということです。人生の中でとらえる幸せについてです。

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 最初に断っておくと、この作品の中で唯一のファンタジー要素である「おおかみこども」の存在を、例えば発達障害を持つ子供に例える人もいるだろうけれど、私としては、公式ページに書かれているように、普通の子供が自分の生きる道を見つける過程とその子育てを極端にわかりやすくするための要素にすぎないと捉えている。だからこそ、花(母親)の幸せについてのみ考えさせられた。

 おおかみ男に恋し、二人の「おおかみこども」を育てた花は、幸せだったのだろうか。おおかみ男の彼と出会い、雪(姉)が生まれ、彼が死ぬまでは幸せだったと言えそうに思う。幸せそうな表情を見せる。
 けれど、そこからの子育てに描かれているのはほぼ苦労のみで、幸せというよりも「義務感」であるように感じる。もちろん、日常のちょっとした幸せはあるし、子供はかわいいのだけれど。
 彼女にとっての母親としての役目は、子育て自体が幸せというよりも、死んだ彼への想いの延長線上にある。

 苦労して育てた子供たちが、自分の道を見つけ歩き始める時、彼女は送り出すことしかできない。それが幸せなのかどうかよくわからない。

 WEBで感想を検索すると、子供たちが親に感謝する場面がないことに不満を感じた人もいたようだが、それはなくて良いように思う。そんな場面があれば花の苦労は報われ、感動的なシーンになることは間違いないが、実際には子供が本当に親に感謝できるのは自分が親になった時であることを、子育ての経験がある人なら理解している。

 花が雨(弟)を追った山中で生死の境をさまよっている時、死んだ彼(おおかみおとこ)が夢の世界に現れる。「ずっと見ていた。君は立派に育ててくれた」。この映画の中で、それが唯一彼女が報われた瞬間であるように思う。

 彼が生きていて、子供たちと共に過ごしてくれていたなら、花はずっと幸せを感じたのだろうと想像すると、彼が死んだ時点で花にとっての幸せは終わっていたのかもしれない。ずっと一人だったよりは子供たちがいてくれた方が幸せなのかもしれないが、それも子供たちが自分の世界を見つけて離れていくまでということになるだろう。

 花の幸せについて。それが、私がずっと考えさせられていることだ。ひいては、人生における幸せについてである。

 思ったのは、結局、人が無邪気に心から幸せになりえるのは、子供の時だけではないのだろうかということ。少なくとも義務感から解放された幸せというのは、(人間社会のルールには縛られるにしろ)子供時代にしか味わえない。
 だからこそ親は、子供にできるだけ楽しい時間を与えなくてはいけないのだろうと思い至った。しつけと同じくらい、楽しい時間を与えなければいけない。それはもちろん物欲を満たすような楽しさではなくて、驚きや感動の機会を与えるということ、それを共感するということなのだろう。

 花の幸せが、彼女の子供時代にあったかどうかはわからない。作品中では明かされなかったように思うが、パンフレットには彼女が父子家庭であったことが書かれている。作品中に花の父の葬式の話が出てくるが、それが唯一の肉親との別れであったということになる。

 作品的にはまずいと思うが、個人的には彼女に再婚してもらい、新しい幸せを見つけて欲しいと願う。それは「おおかみおとこ」や「おおかみこども」との思い出を忘れるためということではもちろんない。親としての役目が、子供たちが自分の生きる世界を見つけるまでだとしたら、その後が抜け殻のような人生であって欲しくないからだ。再婚ではなく、仕事におけるやりがいでもいいのかもしれないが、おおかみおとこの彼とは実現しなかった幸せを、花に与えてほしい。

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面白かったよそ様のレビュー
・大人向けファンタジーアニメ『おおかみこどもの雨と雪』
・『おおかみこどもの雨と雪』におけるヒロインの怖さ


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※小説「おおかみこどもの雨と雪」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。 久しぶりとなる映画のレビュー。 昨日「おおかみこどもの雨と雪」(監督:細田守)を観に行ってきま...
□作品オフィシャルサイト 「おおかみこどもの雨と雪」 □監督・脚本・原作 細田守 □脚本 奥寺佐渡子□キャスト(声) 宮崎あおい、大沢たかお、黒木 華、西井幸人、大野百花、...
 細田守監督の時をかける少女からもう6年もたつんですね。躍動的な描写が美しくて、ストーリーも楽しかったので、細田守監督が原作も手掛けたおおかみこどもの雨と雪も楽しみにし

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