珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

ムンレケ1-4

「ムーンレスケージ」

目次
第一話 竜連れの魔法使い (1) (2) (3)


(4)

 とっさに目をつむったビャッコが再びまぶたを開くと、そこには彼女の主人である黒髪青年の右腕と、それを受け止める別の男の左手があった。
「貴様は……ヨイヤミっ」
 苦虫を噛み潰したような顔とは、今の青年の顔そのものであろう。彼はすぐに右腕を引っ込めた。突然現れた男に対し、不愉快な感情を隠す様子はない。
「よしてくれないかなぁ、その呼び方」
 深みのある優しい声だった。甚平と呼ばれる袖《そで》のない和装姿をしたヒューマン族が、にこやかな表情を浮かべている。その茶髪は直毛のようだが、寝癖でボサボサだ。青年が二十歳直前くらいであるのに対し、男は三十歳前後に見える。その右腕には、意識を失った女性店員が抱えられていた。たった今まで、青年の腕の中にいたはずだった。
「宵闇の蟲師――八百年も前の文献に、エルフ族の神官が僕のことをそんな風に書いたんだよねぇ。それがいつの間にか各国の王族に伝わる書物に定着しちゃって……僕は、ただの医者だよ。まぁ、“闇”の蟲師って言われるよりは、“宵闇”の方がマシかなーなんて思ったこともあるけどね」
 ぼりぼりと頭を掻きながら、ヨイヤミと呼ばれた男は気を失ったままの女性店員を別の店員に預けた。
「僕が治したから、大丈夫だよ。朝には普通に目を覚ますさ」
「……くっ」
 男の余裕ある態度が、黒髪青年の面子を潰していた。先ほどまでこの酒場の空気を凍りつかせていたのは彼だった。しかし今は、現れたばかりのとぼけた男が、場の空気を支配している。
「文献によれば、貴様は千年を超えて生きているそうじゃないか、ヨイヤミ。千三百年前の記憶を持っているだけの俺様とは違ってな」
 ははは……と、面白そうに笑う男。
「いやー、君はすごいね四代目。僕は百年前の記憶もあやふやだよ。それよりさ……僕にはヒョウエっていう名前があるんだって、この前も教えたでしょう。ヒョウエさんって、呼んでほしいなぁ……四代目カイリくん」
 カイリと呼ばれた青年の眉がつりあがり、その口が素早く動いた。
「一気通貫《ライトニング》――!」
 その瞬間、青年の手元が眩しく光り、バシッという大きな音とともに茶髪の男に向かって稲妻が走った。


 ―― (5)へ続く ――


コメント

さささんの小説の好きなところは、文章だけでそのキャラをかっこよく見せるとこ。
説明くさすぎない説明で、ちゃんと頭の中にそのキャラのイメージが浮かぶというか・・・妄想好きな私にはとてもイイです。

◆Jさん
お褒めの言葉、ありがと!
いずれJさんの妄想絵を見られる日が来ることを期待♪
あと、ここは変じゃない? とか、よくわからないところがあったら言ってもらえると助かる。
CCや竜連れでも、そういうコメントをもらって次回に補足できたり、ストーリーのネタになったりしていたので( ̄▽ ̄)
例えば、魔法の秘密を明かした時に、「炎や雷を出せるのは理解できたけどテレポートの仕組みがわからない」というようなコメントをもらって、後の話でその部分の描写を細かく入れたりしてたんだよー。

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