珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

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ムンレケ1-6

「ムーンレスケージ」

目次
第一話 竜連れの魔法使い (1) (2) (3) (4) (5)


(6)

 一人は薄手の黒いコート姿で、フードを深くかぶっているせいで顔が見えない。……が、ふくらんだ胸がヒューマン族かエルフ族の女性を想像させた。もう一人は店内で分厚い防寒着を着たままのヒューマン族の青年だった。黒髪で、その容貌は離位置《テレポート》で消えたカイリによく似ている。
「驚いたなぁ……今の一気通貫《ライトニング》が直撃して、二人とも無傷なのか」
 大げさなほどに驚いたヒョウエとは逆に、二人の反応は鈍かった。
「ヒョウエ様には感謝しています。この人を氷の世界から蘇生できたのは、ヒョウエ様の蟲師の力があればこそでした。ありがとうございます」
 頭を下げ、透き通った美しい声で話すフードの人物に、肩をすくめるヒョウエ。
「彼の名前を教えてくれないか、セリちゃん。君はともかく、ドワーフ族でさえダメージを受ける攻撃魔法に無傷でいられるなんて、普通じゃない。まさか、僕と同じ能力ってわけじゃないんだろう?」
 セリと呼ばれたフードの女性が、ヒョウエが見つめる黒髪青年の方に顔を向けた。その時。
 ――バシャアッ!!
 大きな音がして、店内の全員がそこに注目した。そこには、赤い液体――血で染まったドワーフ族の男が立っていた。足元には、できたばかりの血の水溜り。その周囲にも血が飛び散っている。
 ビャッコが作った赤い柱――それは、ドワーフ族リュシアスの身体を切り刻んで作られた血の水槽であり、リュシアスが五体満足で生きているはずがないものだった。だが――。
「生きて……おるのか、ワシは」
 血に染まった自分の両腕を見つめてつぶやくリュシアス。周囲のドワーフ族が彼の周りに集まり、無事を喜びあった。
「リュシアス君といったか……竜たちに感謝するんだねぇ」
「どういうことなんだ? 竜とは……」
 ヒョウエの言葉に反応するリュシアス。ヒョウエの顔は、いたって穏やかである。
「竜たち……あの可哀想な娘たちは、主人である四代目の命令に逆らうことができない。だが、ビャッコちゃんは君を救った……理由はわからないけどねぇ。わずかな血を大量の血に見せかけるため、血の膜でできた柱を形成してまで、君が死んだように見せかけた」
 にやりと笑うヒョウエ。
「四代目の命令が“殺せ”ではなく“黙らせろ”だったことが幸いしたんだろう。命令違反にならないギリギリの線だ。改めて“殺せ”と命令されないために、わざわざ君が死んだように見せかけたとしか思えない」
 あの場でそんなことができたのは、気体を操る風《ガシアス》系の竜であるビャッコちゃん、そして液体を操る水《リキッド》系の竜であるセイリュウちゃんの協力もあったはずだ――ヒョウエが真面目な顔でそうつぶやいた。それを聞いても、リュシアスは首をひねるばかりだ。
「わからん……ワシたちにはまるで別世界の話だ。ただ……“竜連れの魔法使い”の噂は、俺も大陸で聞いたことがある。エルフ族でさえ知らない高位の魔法を、若くして使いこなす大魔法使い。一年ほど前から、三匹の竜を連れて時々戦場に現れては一方の軍を殲滅し、戦況をひっくり返すという……」
「困った存在だよ、彼は。彼にすがり、戦争に勝利した国も、大量の物資と大勢の奴隷を彼に献上することになる。どこの国にも奴隷制度なんてないこの時代に、奴隷を要求されるんだ……連れて行かれるのは、普通の平民だよ……公表されることはないけどねぇ……あ」
 ふいに、ヒョウエが辺りを見渡した。
「冷たいなぁ、セリちゃん。まだ彼の名前を聞いてないのに」
 ――黒コートの女性と黒髪青年の姿が、夜の酒場から消えていた。
 

 ―― 第二話へ続く ――


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