ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ1-3

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 第一話 白絹の少女 (1) (2)


 第一話 白絹の少女 (3)

 婦人に自己紹介を済ませた後、丸椅子の上に立ったサシュがベッドに横たわる少女を見おろした。十歳前後であろうか……あどけない顔のヒューム族の少女は、シーツから包帯に包まれた右腕だけを出していた。髪よりも少し濃い色の、無垢なダークブラウンの瞳がサシュを見つめた。その表情に、痛みを感じている様子はない。
「大丈夫、マリィ……? サシュにケアルさせるから!」
 少年が心配そうに少女を覗きこんだ。少女が無言のまま少し微笑むと、小さな口に少しだけ白い歯が見えた。
 先ほどベッケルが突き立てた剣の切っ先が触れたあたりに、布の切れ目と小さく広がった赤い染みが残されていた。……が、それ以上に染みが広がる気配はない。
「ケアルは必要ありません。これくらいのケガはすぐに……」
 婦人がそう言いながら一瞬ためらった後、少女にかけられたシーツを取ってみせた。
 ――少女がサシュと少年から顔をそむけた。
「……これは……!」
 思わずサシュの口から言葉が漏れ、ずれた丸眼鏡をかけなおした。少年も初めて見たらしく、言葉を失っていた。驚いた理由は二つある。

 一つは、白いはずのシーツも包帯もグレーにくすんで見えるほどの、輝く白さを放つ絹のキャミソールを少女が身に付けていたこと。
 〝浄化布合成〟の技が使われている……生地が〝魔法の絹布〟であることは間違いない。浄化布合成を身に付けた裁縫職人が、スキル53になって初めて作れる素材だ。
「サシュさんは合成術にたけた冒険者さんだとお聞きしていますので、お気づきかもしれませんね。これはリジェネの魔法がエンチャントされた特注の〝白絹の衣〟です」
 リジェネカラーという装備品がある。やはり浄化布合成で作られる首装備で、再生《リジェネ》の白魔法五十回分が付与《エンチャント》されている。それと同じ……いや、それよりもはるかに強力な効果をもつ一品と思われた。ベッケルに見つかっていれば、間違いなく没収されていたであろう。
 白絹の衣には、血の跡も、剣による傷さえもすでに残っていなかった。
「私は裁縫が専門ではないので、詳しいことはわかりませんが……これは、素材はともかく、衣はクリスタル合成ではありませんね。ギルドマスタークラスの手縫い《ハンドメイド》とお見受けします」
 冒険者が用いるクリスタル合成術は、クリスタルの力を借りることで、素材から一瞬でアイテムを作り上げられる有用な技だが、細部まで実現をイメージすることを要求される。そのため多少のデザイン変更はできても、オリジナルの機能をもつ品というのは、まずありえない。新しい品の開発には、時間がかかっても必要な材料が所望の性能を得るための作業手順を確実に経ることが不可欠だ。
 簡単に手に入るものではない。
「入手には、死んだ主人が残した財産を全て売り払っても足りませんでした。少ない私の稼ぎのほとんどを、毎月の返済に当てていますが……とても……」
 婦人の声は小さくなり、少女にシーツをかけなおした。白絹が隠れると、異世界から現実に引き戻されたようだった。
 家の外では、夜の虫が鳴き始めている……。

 驚いた理由の二つ目。それは、この少女が白絹の衣を着ている理由と無関係とは思えなかった。
 衣から伸びた細い手足には包帯が巻かれ、右脚のヒザから下と左手のヒジから先が……無かった。
「モンスターに襲われたのですか?」
 そんな単純な理由ではないような気がしたが、他に思いつかなかった。婦人は激しく首を横に振った。
「理由はわかりません! この子には、生まれた時から右足のカカトと左手の小指に黒いアザがありました。それが徐々に広がり……黒い部分は炭のようにボロボロと崩れていきました。しかも……その症状はどんどん加速して……今、この衣を脱がせたら、一瞬で全身が炭になると思います。左腕と右脚の先は、今この瞬間も……炭化と再生を繰り返しているんです!」
 恐ろしい運命だった……少女にとっても、母親にとっても。
 エンチャントは無限ではない。この衣の効果が切れれば、その瞬間、少女の命は終わる。リジェネ効果がフルにエンチャントされた新しい衣の入手には、再び高額な費用が要求されることになる。
 ……いや、そもそも、二つ目の衣が存在するのか……あるいは作れる職人が生きているのかという問題がある。
「一体どうやって、この衣を手に入れ……」
 聞かずにはいられない質問をサシュが口にした時、玄関のドアがノックされる音が大きく響いた。

 ~(4)へ続く


コメント

(´;ω;`)ブワッ


何かわかんなぃけど…
泣けてしまいました

さしゅさん…なんてことを考えちゃうんですかぁ( ノД`)
みんなの無限の才能に脱帽です

つ「なっちもがんばれ」              (゚Д゚ )ァィ!

◆なっちさん
ありがとうございます。
下手な文章でも,のめりこんで読んでもらえるのは,なっちさんの感受性の高さのおかげですね。
描きたいものを万人に伝えられる引き込み力がほしいものです……ひーさんみたいな!( ̄▽ ̄〃

毎回「つづく」の引き具合がニクイですねぇ(´∀`)b
待て!次号!!!!



>「サシュにケアルさせるから!」

させるからって少年お前何様だよ、と思わずつっこんでしまった私はサンド人への偏見があるんでしょうか。

◆みやさん
少しでも読んでもらおうというセコイ考えがバレてる……!w
というわけでもないのですが,こういう終わり方は,漫画を書いてた頃からのクセですね~( ̄▽ ̄;
少年は,生意気盛りという脳内設定なので,その辺が伝わったのなら,満足です♪
実際のヴァナでのNPCは,もっと素直で良い子なんですけどね(ちょっと次回のネタばれ)。

うほほ、こりゃ、引き込み力強化の勉強になりますよ~
オリジナル設定の病気の出現とか
なかなかミステリアスな展開で次回が楽しみ過ぎます
そろそろ相棒のWieさんが出てくるんすかねw
その辺も、ちょっくら期待してたり/grin

◆ひーさん
うひひ。
設定による引きこみは,邪道というか……ある意味誰でもできるので。
人物の魅力とか心理描写で引きこめるひーさんがうらやましいです。
今後,徐々に,人物の魅力も出して行けたらいいなぁとは思ってますが……なかなか難しー。
いや私は,ひーさんやしげさんみたいなカップル小説は書けそうもないよぅ( ̄▽ ̄;

おお、島流しにあってる間(ぇ)に(3)が!
炭化する病気(?)に手縫いですかー、オリジナリティ溢れる所がサシュさんらしくていいですね~。
合成をやったことある人なら1度は気になった事があるであろうギルドマスターの「初心者ならクリスタル合成『が』いいだろう。」と言う言葉。これはやはりそれ以外の方法があると言うことを裏付けていて未だに実装されないかと期待に胸膨らませてたりもしますw
俺も小説で使おうかなとか思ってたのですが、先に取られちゃいましたな、はははw

っと、長々と書いてしまって申し訳ない。ではこの辺りで失礼しまする。 (4)の執筆もがんばってくだされ!

◆しげさん
島流しにあってたのか……いつの時代だw
合成に関しては,木工ギルド入会時のギルドマスターのセリフが面白いですね。
俺達は,よほど急いでなければクリスタル合成なんて邪道なことはしないとかなんとか言われた覚えが。
「初心者なら」じゃなくて,「冒険者なら」……だった気がします。
普通の職人が普通に作業してるのは,ギルドでの見た目通りですねー。
だから,取られたとかじゃなくて,共通の誰でも使える認識だと思います( ̄▽ ̄〃

気になるところで終わってしまった…

エンチャントは加工って意味で良いんですかね・・・?

◆ロスさん
二回目のコメントをありがとうございます。
エンチャントは「魔法の力を付与する」というような意味で使っています。
文中では「付与」に「エンチャント」のルビをふっている部分があるのですが、気づかないですよね、すみません。
私が使っていたエディタで書いた文章をブログに貼りつけるとルビが《》で囲まれたテキストになります。
そういうわけで、文中に出てくる《》は全てルビ(ふりがな)です。

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