ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ4-2

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1)


 第四話 下層の歌姫 (2)

 そのヒューム女性が歌い始めた瞬間。サシュは鳥肌が立つほどに、彼女の世界に引き込まれた。歌詞は東方の言葉でわからなかったが、その独特の抑揚と、突き抜けるソプラノでありながら深みを感じさせる呼吸は、天上の世界に広がる鏡のような湖を連想させた。
 客は誰も、声を出していなかった。飲み食いさえしていない。騒がしく品のなかった酒場が、まるでロ・メーヴの奥にある神々の間のように浄化されてゆく……。
 理屈ではない……魂が強烈に引き込まれる感覚は、軽い恐怖を覚えるほどだ。
 そこに、明るい春の風が舞った。
 ミスラ少女が優しい声を重ねたのだった。
 サシュの心配は無用だったようだ。少女の歌は、ヒューム女性のパワーを押し返すわけではなく、包み込むように安らかな空気で満たしていった。澄み渡った天上の湖に生命が息づき始めるように……。
 ヒューム女性ほどの完璧な安定感はなかったが、間違いなく天才の域に達している。何より、魂をほっとさせる暖かさが魅力だった。いつまでも聞いていたいと思う……。

 気がつくと歌は終わり、着水する飛空艇のように音楽がゆっくりと音量を下げ……消えた。観客が放心状態から回復するまでの、想像を絶する静寂。そして、いきなり爆発的な拍手、口笛、賞賛の声、声、声……!
「まいった……これほどの〝歌姫〟を、今まで知らなかったなんて……」
 サシュは拍手の後に椅子に身を預けて、ぼーぜんとしたまま素直に言った。その反応に満足したミサヨがニヤリと笑った。
「デビューが最近だからね。……なに座ってるの! すぐに、会いに行こう♪」
「え……いや、いいよ俺は。古い友人なんだろう……二人で話してきたら?」
 まだ衝撃から醒めないまま、ぼんやりと答えた。
「ありがとう……でも、彼女を紹介したい理由は、歌を聞かせたかったからじゃないの。……それもあるけど、私たちの目的に関係があることよ」
 ミサヨの言葉に、サシュは気を引き締めて黒い瞳を見つめ返した。
「わかった、行こう」

   *

 舞台裏への入口を通る時、ムッとした顔で涙を浮かべて走って出て行くミスラ少女とすれ違った。……が、一瞬足を止めてミサヨとサシュが振り返った時には、店内の客の間に消えていた。
 木の板や補強用の角材がむき出しの狭い舞台裏で。歌姫がドレスのまま丸椅子に腰掛け、手袋をはめたままの両手で顔をおさえていた。
 ミサヨがそっと声をかけた。
「カリリエ……どうしたの? 歌、素敵だったよ」
 顔を上げた歌姫は、ミサヨを見るとぱっと笑顔になり立ちあがった。
「ミサヨっ!! よく来てくれたわ! こうして会えるのは何ヶ月振りかしら?」
 二人は再会の喜びを抱き合って示した。カリリエと呼ばれた歌姫は、すぐに期待に満ちた顔でミサヨをせっついた。
「……アレ、手に入った?」
「え……、うん、ちょっと待って」
 ミサヨは小さな粒が五、六粒入った小瓶をカリリエに渡した。
「一粒を水に溶かして使ってね、お酒とかでもOKだから」
 カリリエが笑った。
「あの子に、お酒はまだ早いわ。……〝好意を持つ魔法薬〟……これできっと、あの子も私の言うことを聞くように……」
 歌姫は独り言のようにつぶやいた。
「あの子を愛してるのに……あの子がこの下層で生きていくには、もっと歌を磨くしかないのに……最近は口をきいてもくれなくて……」

「……おい」
 声をかけたのはサシュだった。
 何かを言いかけたミサヨが、びくっとして黙った。……今までに聞いたことがない、低い声だった。
 カリリエが慌てて反応した。
「あ、ごめんなさい、あなたが噂のサシュさ……」
「そんなことは、どうでもいい」
 にべも無くサシュが遮った。
「あの子はいい子だ……あなたのことが大好きなことも、さっきの表情を見ればわかります」
 サシュの言葉に、カリリエが黙った。
「でも、いつか……大好きなあなたが、そんな薬を自分に使っていたことを、あの子が知ったら……」
 サシュの声が少し震えた。何かを思い出しているようだった。

「思い出の……全てが……ウソになってしまう」

 カリリエがイライラし始めた。
「あなたに何がわかると……」
 他人が口を出すことではないかもしれない。本当のところは、当人同士にしかわからない。少なくとも、魔法の薬に頼ろうとするくらい精神的に追い詰められているカリリエを責めるのは正しいことではないと思う……。
「使う前に……少しだけ、考えてください。お願いします」
 感情を抑えるようにそういうと、サシュは二人に背を向けて出口の方に少し歩き……足を止めた。
「ミサヨ……契約は破棄する。こんな事に加担するヤツを、俺は信頼できない」
 それを聞いたカリリエが、ついに怒った。
「ちょっと、あんた、何様!? 何を偉そうにさっきから……!」
 ミサヨが、うつむいてカリリエの腕をつかんだ。
「ミサヨ、あんたも言ってやりなさいよ! 私のことはともかく、親友のあんたまでバカにされたんじゃあ……!」
 ミサヨがうつむいたまま頭を横に振った。
 ……すでにサシュの姿はなかった。

   *

 ミサヨと、着替えたカリリエが店内でグラスを交わしていた。カリリエがミサヨを誘ったのだ。
「……どうしちゃったの、ミサヨ。あんなヤツに好き勝手言われて黙ってるなんて……」
 ミサヨのグラスにオレンジジュースを注ぎながらカリリエが尋ねた。
「まさかとは思うけど……あのタルタルに惚れてる……とか?」
 心配げに顔をのぞき込んだカリリエに、ミサヨが元気のない笑いとともに首を横に振った。
「違うよ……そうじゃない」
「やっと、口をきいてくれた」
 顔をのぞき込んだまま、ほっとしたように言うカリリエ。ミサヨはカリリエがミスラ少女と上手くいっていないことを思い出した。
「あ……ごめん。なんていうか……ショックだったんだなぁ」
「そりゃそうだよ、あんなヒドイ言い方ができるヤツは、ロクなヤツじゃないね!」
 カリリエがそういう言い方で元気づけてくれることを、ミサヨは知っていた。そして少し元気が出てきた。
「まぁねー、あの言い方はヒドイよねぇ!」
「そうそう!」
 二人に笑顔が戻った。
 突然、ミサヨが顔の前で手のひらを合わせると、申し訳なさそうにカリリエに言った。
「ごめん、さっきの薬……捨ててくれる?」
 笑っていたカリリエの眉が、ピクリと反応した。
「何よ、ミサヨまで……ミサヨだけは私のこと、わかってくれてると……」
「そうじゃないの」
 合わせた両手の横から、ミサヨが情けない顔を見せた。
「私の勘違い……〝好意を持つ魔法薬〟……って、てっきりその……いわゆる〝惚れ薬〟のことだと思ってさ」
「え?」
 カリリエがキョトンとした。
「正直に言うと、ちょっとインチキくさい露店で、話のネタとして安く買ってきただけなんだ!」
「ええっ!?」
 カリリエの顔も情けなくなってきた。
「しかも……効かないことが、たった今証明されたばかり」
「…………」
「…………」
「……使ったんだ……あのタルタルに……」
「なかなか面白い反応だったんだけどね」
 二人が同時に吹き出し、夜の酒場に、再会した友人同士の明るい笑いが響いた。

 ~(3)へ続く


コメント

毎回楽しく読んでおります.
さしゅさんの小説はテンポよく読めるのでお気に入りです.

カリリエさんはナシュモにいるものだと思ってましたが
いつのまにジュノで歌姫を!
ミサヨの台詞が真実か,カリリエのための優しい嘘なのか・・・
気になるところです.

駄ツッコミ
>「おーけー、行こう」
直前に気を引き締めた割にひらがな表記ってのにちょっとだけ
違和感を覚えましたがただのtypoですかね.

今日は休みだったので、イレギュラーで更新してしまいました。
キャラの人間性にかなりツッこんだ話になってきたので、好き嫌いが分かれる展開かもしれません。
私にとっては、皆愛すべきキャラなんですけど~( ̄▽ ̄〃

◆るびさん
コメント、ありがとうございます!
そうですね。
サシュ、ミサヨ、カリリエ……と私が使っているキャラは、この小説のキャラから名前を取った……みたいな後付け無理矢理理屈はどうでしょう?
あっはっは( ̄▽ ̄;

ミサヨのセリフ……あー、やっぱり最後、言葉が足りなかったか……次回に回すつもりで省いた部分、今回に入れた方が良かったかなぁ。
むむむ……。
とりあえず心に止めて悩んでおきます。

「おーけー」は、「オーケー」に直してみました。
もっといい表現も募集中w

気になるところです、って言ったのは「きっと次回
明らかになるだろうから楽しみです」の意味だったので
さしゅさんのねらいどおりになってますよー。

◆るびさん
そうでしたかー!
良かった、良かった。
狙い通りかどうかは別として( ̄▽ ̄;

あ、書き忘れてましたが、テンポ良く読めるって言われたのが嬉しかったです♪
前に読点の多さを指摘されたことを考えると、文系の方には読みにくくても、理系には読みやすいのか?
しょせん情緒もへったくれもない理系が書いた文章ってことなのかっ!?Σ( ̄▽ ̄;
以下次号(うそ)

執筆お疲れ様です~。

「オーケー、行こう」の部分ですが、サシュの口調からして「わかった、行こう」の方が合ってる様な気もしますね。

そのほかの部分は相変わらず細かい描写もしっかりされていて読みやすかったですよ~。
ではこの辺で~。次もがんばってくださいな~

いつもながらの執筆お疲れ様です~
楽しく読ませていただいてます

さて「/grin」を懸念されてましたが

       はいwwwやっちゃいましたwwwwwww

◆しげさん
うん、それで(あっさり)。
あとで、「わかった、行こう」に書き直しておきますー( ̄▽ ̄〃
いつも、コメントありがとうございます♪
細かい描写については全然自信がありませんが、読みやすいと思ってもらえるのはうれしいです!

◆えこさん
ありがとうございます~……て。
ええもう拝見しましたとも、会社帰りの電車の中の携帯でw
こんど、えこさんを勝手にこっそり小説に出すかもしれませんが、謝る気はないのでよろしくです( ̄▽ ̄)b

これ、読んだ奴と思って飛ばしてたら、違うじゃん・・・。
てか連投作品じゃねぇぇぇぇかぁぁぁぁっ!
見逃してたwww

>鼓膜がキーンと高音を発する。

ここが気になる部分でした。
もし、今後の伏線で、他の読者にバレちゃいけない内容だったら、コメント消して下さい。

綺麗で優しい歌声・・・、だけど耳がキーン・・・。
ちょっと音楽かじってる人間なので、ここが引っかかりました。
ロックとか、パンクとかのライブに行くと、演奏後に耳がキーンなりますが・・・。
こういった歌い手の場合の描写だと、むしろマイナスになりがちな描写かなって、思いました。

これが、後々の伏線だったら、ホント消しちゃって下さい。

◆ひーさん
全然伏線じゃないので問題なしです( ̄▽ ̄;

んー、ちょっと書き方を悩み中。
大きい音を聞いたためになるキーンではなくて、静かすぎてキーンとなる感じを書きたかったのです。
それだけ、皆が集中し、音をたてないようにしていたってことを表現したかった。
でも、ひーさんみたいに感じる人がいるなら、書き方に問題があると思うので、直したい……。

自分でも考えつつ、アドバイス募集中w

歌の世界から現実に戻った、と言う事ですね。
それで周りの雑音というか生活音が気になり始めた。

そのあたりを表現すれば、雰囲気出るかも。

キーンだと、どうしても耳鳴り=大音響のイメージになってしまうかな・・・と。

◆ひーさん
あ、ちょっと違うかも。
本当に音がない状況って、耳鳴り(?)がするって話です。
その状態が続くと、幻聴が聞こえ始めちゃいますけど(これは脳の仕組みのせい)w
生活音も立てまいと思うほど、みんな静まって聞いていた……という設定は、酒場じゃ、リアリティないかもですね……( ̄▽ ̄;

そのうち、文章をいじくってみます。

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