ささやかに駅メモ!

ひよっこマスターのお気楽プレイログ since 2018

駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ4-3

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2)


 第四話 下層の歌姫 (3)

 〝歌姫〟カリリエが、まどろみの中でゆっくりと目を開けると、いつもの朝と少し様子が違った。確かに自分の部屋なのだが、何かが違う……。
 狭いベッドで自分に寄り添って寝息をたてているミスラ族の少女は、一年前から面倒をみている七歳のウイカ。旅商人が雑用を手伝わせていた孤児の彼女を引き取ったのだ。埋もれさせるわけにはいかない天性の声質と音感の才を備えた愛すべき少女……見つけた時には、引き取ることを決めていた。……最近は心を開いてくれなくて、交わす会話がめっきり減っている。
 昨夜はウイカのステージデビューだったが、打ち合わせが不十分だったせいで、出だしから不安定だった。客は気づかなかったと思うが、ウイカが打ち合わせとは違うキーで歌い始めたのだ。彼女がそうしたいと言ったのを、歌の雰囲気が壊れるからダメだと教えたはずだった。ステージの後に、再度理由を説明したのに、ムッとしたまま舞台裏から出て行ってしまった。
 そのウイカが自分のベッドにもぐり込んで来たなんて珍しいことだと、一瞬嬉しく思った。……が、すぐに思い出した。
 そう、昨夜はミサヨを泊めるために、自分のベッドを彼女に譲り、隣にあるウイカが眠るベッドで寝たのだった。少し部屋の景色が違って見えたのは、そのためだ。
 ウイカを抱くようにして身体を横に向けると、隣のベッドの上では、ミサヨが座ってゴソゴソと何かをしていた。
 カーテン越しの柔らかい早朝の光に浮かぶのは、八頭身の白く美しい肢体。上下とも白い下着姿で片ヒザを立て、足先に手を伸ばしている。靴擦れを防ぐためのテーピングをしているところだった。外出準備中というわけだ。
 お互いが十二歳の頃からの付き合いだけど、いい女になったなぁ……と思う。ストレートの黒髪が揺れ、ミサヨがこちらを見た。
「ごめん、起こしちゃったね」
「……ううん」
 ミサヨは無言でテーピングを続けた。それをしばらく眺めていたカリリエが、横になったまま何でもないことのように言った。
「……謝りに行くなら」
 ミサヨの手が止まった。
「いたずらで惚れ薬を飲ませたことだけにしときなさいよ。……ウイカに薬を飲ませる話は、ミサヨは知らなかったんだから」
 無表情のミサヨと、無表情のカリリエの目が合った。
「……うん、わかった。……カリリエさんは、何でもお見通しですか」
 ミサヨは可笑しそうにテーピングを再開した。足の保護を兼ねて、ヒザ下まで木綿のテープを巻いていく。
「昨夜私が付き合わせなかったら、その足で謝りに行くつもりだったでしょ……そんなの、アイツをつけあがらせるだけなんだから」
 カリリエの指摘に、静かに微笑むミサヨ。
「普通は、そうかもね」
 その答えは、カリリエにとって面白くなかった。
「ほほぅ……〝普通は〟ときましたか。……前に話を聞いた時にも思ったけど……ミサヨは、サシュ様を偶像化しすぎじゃありませんかね?」
「もー……からかわないでよ」
 ミサヨの軽い返事に、間髪入れずにカリリエが言った。
「私は、アンタが心配なの。今まで軽く流してきた男どもに対する態度とは、全然違うんだもん。……なんか、ダマされてない?」
 割いたテープの先を小さな口にくわえたミサヨが再び動きを止めた。二人の視線が合う。そのまま割いたテープの端同士をヒザ下で結んでテーピングを終えると、ミサヨはカリリエの方に身体を向けて、ベッドの端に座り直した。
「サシュと私は共通の目的のために契約を結んだけど、まだ知り合ったばかりだから……お互いに、今どう出るかが今後の関係に重要だと思うの」
 カリリエがすぐに口を挟んだ。
「そうかもね。だったらなおさら……向こうの勘違いなんだから、向こうに謝らせるべきじゃないの?」
 ミサヨは頷いた。
「そう。きっと、サシュは自分の勘違いの可能性に気づいて、今日中には謝りに来ると思う。でも、それじゃあ、私の負け。先に謝ったほうが勝ちなのよ……サシュと私の場合は」
 顔をしかめるカリリエ。
「わけがわかんない……だいたい何で勝ち負けの話になるのよ、悪い方が謝るべきでしょう?」
 ミサヨは、本音で語り合える友人の存在に感謝しながら答えた。
「二人の人間がもめた時には、どちらにも謝るべき要素があるわ。一方の要素が大きすぎたとしても、もう一方にも何かしら小さな要素は見つかるはず。……結局、お互いに謝る必要があるのよ」
 カリリエの目から視線を外さないように話すミサヨ。
「その上で……。サシュと私は、先に謝った方が大人だと思ってる……それだけだよ」
 今度は、カリリエは黙っていた。
 この理屈は、相手が完璧に予想通りのことを考え行動しないと成り立たない。つまり、自分が相手を信頼し、事実として相手も自分を信頼していなければ、いずれ深く傷つくことになるに違いない。
 何があって、ミサヨはここまでサシュというタルタルを信用するに至ったのか……? それは、マリィのこと、飛空艇でのこと……ここ一、二週間にサシュと関わったたった二つの出来事が、どれも深くミサヨの心を揺さぶったからなのだが。詳しい話を知らないカリリエにはわからなかった。
 それでも、ミサヨの考えていることは理解できたと思う。それをカリリエ自身の言葉で伝えることにした。
「さっき、〝先に謝った方が勝ち〟って言ったけど……ちょっと違うと思う……。先に謝ることが、〝相手を信頼してる〟ってアピールになるってことでしょう? それは、つまり……」
 ずっとカリリエが黙ったままだったので、すっかり身支度を整えつつあったミサヨは、突然のカリリエの言葉にびっくりした。
「う……うん、そうだね、カリリエの言う通りだと思う。私は……」
 ミサヨの表情は真剣だった。

「サシュに私を信頼してほしいんだ。私が彼を信頼する以上に」

 それから慌てて付け足した。
「もちろん、一番信頼してるのはカリリエだよ?こんな話をしたの、カリリエだけなんだから!」
 カリリエが笑い、ミサヨも笑った。ミスラ少女のウイカがもぞもぞし始めた。
「じゃあ、私、行くけど……その前に聞いておきたいことがあるの」
 ミサヨの言葉にカリリエはドキリとした。
「何?」
「カリリエは……サシュのこと、どう思った?」
 ……カリリエは頭をぽりぽりと指で掻いた。
「かなりムカツク奴だね。アイツの……ばかみたいに真剣な顔と言葉がチラついて、昨日はなかなか寝付けなかったわ」
〝思い出の……全てが……ウソになってしまう〟
 その言葉を搾り出すように口にした時のサシュは、ミサヨにとっても強烈な印象だった。
「んー……サシュに会わせた効果ありかな」
「何ですって? ミサヨ、もしかして、私を説得するために彼を連れてきたの? ウイカのことで?」
 ミサヨが顔の前で手を振って否定した。
「そこまで計算してないよぅ。私がカリリエの悩みを聞いてるだけじゃ何も変わらないって……思い始めたところだったし……カリリエがウイカちゃんのことでホントに悩んでたから……第三者に聞いてもらうのもいいかなとは、ちょっぴり……」
 ミサヨの言い訳に、カリリエが溜め息をついた。
「ミサヨって、実は策士だからなぁ……まぁいいけど。とりあえず、もう薬を使う気はないから安心して。……でも、どうしていいのか余計にわからなくなっちゃったよ……」
 ベッドに上半身を起こして、カリリエは眠るウイカを見つめた。愛らしい寝顔。その内には、けして他人には真似できない才能が輝き始めている。その才能をもっと花開かせたい……皆に大切にされる幸福な人生を歩んで欲しい……その想いが、空回りする日々が辛かった。
 ミサヨが近付いて後ろからカリリエの肩をそっと抱いた。
「どうなるかわからないけど……午前中にこの人を訪ねてみて。何かのきっかけになるかもしれない」
 そっと、四ツ折りの小さな羊皮紙を渡しながらミサヨがささやいた。
 カリリエが力なく紙を受け取ったのを確認してから、一泊の礼を言うと、まだ目覚めないウイカの頬に軽いキスをして、ミサヨは部屋を出た。

 廊下を抜け、酒場の店内に入ると、昨夜カリリエとウイカが歌ったステージの前を通り、店の出口の扉を開ける。従業員たちは早朝は寝静まっているのであろう、途中誰にも会わなかった。
 外の明かりがまぶしい。
 ミサヨの行き先は決まっていた。先ほどカリリエに渡したメモ。それは、サシュがこのジュノで訪ねる予定だと言ってミサヨに渡したものだった。
 上層区に病院を構える、ジュノ一の名医・モンブローの名前と住所が記されている。
「おっと、すまないな」
 下層の雑踏で、二人連れのエルヴァーンの男がミサヨの肩にぶつかって通り過ぎ、酒場の方に向かった。彼らの指に、白いパールの指輪がはめられていたことに、ミサヨは気づかない。
 ベッケルが、ジュノで仲間を認識する目印と言った、白いパールの指輪。二人連れのエルヴァーンの指輪は、ミサヨやサシュのものと違って、呪いの指輪を台座にしたものではなかった。が、パールの周りの金属装飾は、まぎれもなくミサヨとサシュがもぎ取ったパールに付いていた装飾と同じであった……。

 ~(4)へ続く


コメント

男と女のやり取りしてるw
サシュさんの願望みたいなとこっすかね・・・、これは!

添い寝シーンは、サシュさん自身に、お子さんがいるから、リアリティありますね。

ま、何はともあれ、ストーリーのメイン部にも新展開が見られ、次回が楽しみです。

また来週・・・、それより早くても大丈夫だけど/grin
楽しみにしてますね~♪

◆ひーさん
願望、願望……いろいろな意味でそうかもw
今回は、ミサヨの考えを述べているだけで、キャラが変わればまた考え方も変わるので、お楽しみに(?)。
いつもコメントありがとうございます♪
毎週更新は、結構やばいと思い始めました。
気が付くと、小説の内容を考えてたりするんで( ̄▽ ̄;

おつかれさまっす~。

今回も話の締め方が上手く、早くも次回への期待が膨らんでおりますw
ただ1つ、最初はカリリエから見た文章だったのが、いつの間にやら第三者から見た文章に変わっていたのが気になりました。
今回は上手くまとまっていましたが、あまり急に観点が変わると読者が混乱する原因になったりしますのでお気をつけて。

であであこの辺で~。次回もがんばってください~

このお話の登場人物は、みんな真剣ですね。
誰についても思い入れて掘り下げているさしゅさんの真剣さも伝わってきます。

「先に謝ったほうが『勝ち』」うーむ、なんかすっごくわかる。

◆しげさん
今回もコメントありがとうございます!
今回視点が変えてあるのは、わざとですー。
ミサヨ視点になってるところもあります。
もし今後もわかりにくくなる部分が出てきたら指摘してくださいまし。
サシュが出てくる時には、やらないつもりですけど( ̄▽ ̄〃

◆みやさん
わかってくれる人が一人でもいて良かった……。
誰にもわからない理屈をひとりよがりで書いてる場合がとても恐いので。
ほっとしました。
みんな真剣なのは、なんでだろう……自分の理想がそうだってことなのかなー。
現実はいいかげんなのにw
みやさんの視点でも、こうした方がいいとか、ここが変で気になるとか、指摘してもらえるとありがたいです!
自分の力にこだわらず、人の力を借りても良くなるなら良くしたいので( ̄▽ ̄〃
最後に決めるのは自分ですけどw

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◆非公開コメントさん
とりあえず、「第三者」はサクっと修正させていただきました。
問題の文のところですが、ここは確かに整合が取れてないですね( ̄▽ ̄;
神視点というか読者視点と作者視点とカリリエ視点がごっちゃになってる気がします。
その時自分が何を意識したせいでそうなったのかを思い出しつつ、ちょっと時間がかかりそうですが、後で直そうと思います。
ありがとうございました!

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