ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ4-4

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3)


 第四話 下層の歌姫 (4)

 ……まったく。
 ジュノのレンタルハウスで目覚めたサシュは、ベッドで上半身を起こしたものの、そのまま顔に片手を当てて動かなかった。昨夜の酒場のステージ裏での自分の振る舞い……ミサヨと初対面のカリリエを感情のまま頭ごなしに否定してしまったことを、深く恥じていた。
 吹っ切れていないことは、わかっていた。常に心の奥に引っかかっている過去の出来事。
それがまさか、あれほど感情を昂《たかぶ》らせることになろうとは……。
 ミサヨとカリリエに謝らなければならない。……が、彼女たちに会うアテはあの酒場しかないのだから、夕方の開店時刻までは待つしかないだろう。いきなりのテルで済ませる……というわけにはいかない。
 もう一度だけ溜め息をつくと、サシュは頭を振って顔をぴしゃりと叩いた。モンブロー医師に会いに行こう。……そのためにジュノに来たのだから。

   *

 軽い朝食を済ませたサシュが上層区に出ると、街を潮風が渡っていた。ジュノ公国は、クォン大陸の二ヶ所とミンダルシア大陸からそれぞれ伸びた三本の巨大な橋が交わる点を中心として、橋の上に建造された国家である。三本の橋の高さが異なるため、下から港区、下層区、上層区と名付けられている。庶民の多くが暮らす下層に比べて上層は行政機関や大きな教会があり、民家も立派なものが多いので、街並が上品に見えるのが特徴だ。だからと言って、住人が強制的に住み分けられているわけではない。それどころか、国の中心の最上階にあるル・ルデの庭、そこに構えられた大公宮の一部でさえ、庶民に開放されているのだ。それはジュノ公国を治めるカムラナート大公のイメージアップに少なからず貢献している。
 上層区の教会の隣がモンブロー医師の病院である。知り合って十年以上になるが、彼の印象は初めて会った時から全く変わっていない。初対面での若い医師の第一声はこうだった。
「こんにちは。初めての方ですね」
 事前に問診票に記入したわけでも、もちろん膨大な量のカルテを見返したわけでもない。彼の頭には何百人という患者の顔がインプットされている。ある程度の病歴、性格さえ顔を見ただけで思い出せるようだ。知性より体力に優れると言われるエルヴァーン族でありながら、その記憶力は知性に優れると言われるタルタル族の平均レベルをはるかに超えていた。身体の悩みも心の相談も引き受けると言った彼は最後にこう付け足した。
「何かあったらまたお気軽に来てみてください。ほんの茶飲み話でもかまいませんから」
 彼の知性は優しい心遣いに包まれている。
 受付嬢に面会の旨を伝えようとしたサシュは、いきなり背後から声をかけられた。
「いらっしゃい、サシュさん。今日はどんな事件でいらっしゃったのですか?」
 ジュノ一の名医は、十年前と変わらない慈愛に満ちた笑みでサシュを迎えた。深く頭を下げるサシュ。
「ご無沙汰しております、先生。お訪ねする時は、いつもロクでもない話ばかりですみません」
 自分より十歳近く若い医師を、サシュは尊敬していた。
「いえいえ、いつでもお気軽に来ていただく約束のはずですよ」
 ベッケルに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだ。同じエルヴァーン族とは到底思えない。
「お手間は取らせません。実は……」
 サシュはその場で、マリィの病気のこと、白絹の衣のことを要領よく伝えたつもりだったが、モンブローからの質問に答えるうちに十五分くらいかかっていた。
「ふむ……」
 アゴに手を当てて少し考え込んだモンブローは、おもむろに口を開いた。
「サシュさんにお願いがあります」
「私にできることであれば、何でもお引き受けいたします」
 即答したサシュに、モンブローがにっこりと微笑んだ。
「この件について、少し自室で調べてみたいことがあります。一時間もかからないと思いますので、その間……」
 モンブローの次の言葉は、完全にサシュの想定外だった。強大なモンスターを倒して来いと言われる方が、よほどマシだったろう。

「……今、休憩していただいている患者さんを、あなたが診てください」

 すぐに返事ができなかった。ジュノ一の名医は、相変わらずニコニコしている。なんとかサシュの口から出てきた言葉は、情けないものであった。
「ええと……その、それは……〝私にできること〟の範囲内なのかどうか……」
「いいえ。……私よりサシュさんの方がずっと適任だと思いますよ。この患者さんに限っては」
 その一言は、サシュの冒険者としての勘を静かに刺激した。事の成り行きに、アルタナの女神か……目の前にいるモンブロー医師か……あるいはサシュの知っている他の誰か……の思惑を感じる。
「……承知しました。できる限りのことはさせていただきます」

   *

 果たして診療室で待っていたのは、下層の歌姫その人であった。
「……あ!」
 モンブローと一緒に診療室に現れたサシュの姿を見て声を上げるカリリエ。その驚く顔とは対照的に、モンブローの口調は落ち着いていた。
「お二人はお知り合いでしたか。それなら話は早いですね。私の代わりにあなたの相談に乗ってくださるサシュ先生です」
 それでは……と言ってモンブローが診療室を出ると、部屋はカリリエとサシュの二人だけになった。
「…………」
 黙り込んだカリリエの前に歩み寄ると、サシュはモンブローの時と同じくらい深く頭を下げた。
「昨夜は、すみませんでした」
「……謝るなら、ミサヨに謝ってよ」
 カリリエはイライラしていた。サシュではなく、自分に対して。
 顔を上げると、サシュは寂しそうに微笑んだ。
「ミサヨにも謝るつもりです。でも、私がミサヨに言ったセリフは、あなたのことを非難したものでした……事情も聞かずに申し訳なかったと思っています」
「ああ、もう……!」
 カリリエの頭にはミサヨの言葉が蘇っていた。
 ――先に謝ったほうが勝ちなのよ。
 サシュに対して〝負けた〟という思いが、勝手に浮かんでくる。それは、口にしなくてもカリリエ自身がサシュに対する感謝の気持ちを自覚しているせいだ。サシュのセリフは酷い言い方だったと思う……だが、そのおかげでウイカに薬を使った後の事を想像することができた……自分の考えが浅はかだったと今は思っている……。
 この勝負に一発逆転する方法が、カリリエにはある。カリリエ自身にもそのことはわかっていた。だがそのセリフを口にすることは、今までの人生で数回あったかどうかの勇気を要求されることだった。
「その……」
 カリリエの声は小さくて、最初は聞き取れなかった。顔から火を吹くとはこのことか……自分の顔が異常に熱くなっているのを自覚すると、余計に顔が熱くなるカリリエ。自然に顔を伏せてしまうが、背の低いタルタル族のサシュからは丸見えだった。
「もう、薬を使う気はないから……えと……止めてくれて、ありが……と……」
 目をつむって顔を真っ赤にして感謝の言葉を口にするカリリエは、年齢相応の若い娘だった。そこに歌姫の貫禄はなく……普通に、可愛かった。
 いきなりカリリエの右手を取ると、サシュはその手に額を寄せてうつむいた。
「ありがとう……思いとどまってくれて、ありがとう……」
 サシュの言葉も震えていた。ハッとするカリリエ。このタルタルの強い感情は一体どこから来るのだろう……。どうして会ったばかりのウイカのことで、ここまで……。
 しゃがんでサシュと目の高さを合わせると、カリリエは下を向いたままのサシュの肩をそっと抱いた。思わずそうしたくなるほど、サシュが小さく見えたのだった。

   *

 モンブローは自室で、本棚の奥から引っ張り出した資料をひっくり返しながら、ふと思った。あのサシュという冒険者は、また他人の子供のことで必死になっているんだなぁと。
 その理由を聞いた事はまだない。医者として、彼が一人で抱え込んでいるものを、いつか解きほぐしてあげたいと思う。
 彼が自分から話す気になるくらい私のことを信頼してくれる日がいつか来るだろうか……。私が彼を信頼しているように、彼にも私を信頼してもらえるようになりたいものだ……。
 若い医師はもう一度机と本棚の間を往復し、机に積み上げられた資料の高さを倍にした。

   *

「では、始めましょうか」
 ペンと黒インク、さらに羊皮紙を数枚用意したサシュが、カリリエと面接用の机を挟んで向かい合わせに座って、そう言った。
「え……ホントに、やる気なの!?」
「もちろんです。……あなたが望むならですが」
 相談内容は、ウイカと上手くいっていないこと。それは、ミサヨの勧めで、ここの名医に相談するつもりだったことだ。
 カリリエは、サシュの目をじっと見つめた。
「……わかりました。ダメ元……と言ったら失礼ですが、お願いします」
 サシュはまず、カリリエの話を聞くことから始めた。

 ~(5)へ続く


コメント

さしゅさんは絶対白衣が似合うと思います(ぇ

こんにちは、しげまるです。

今回も早速読ませていただきました。
そこで2点、
まず一番最初のレンタルモグハウスってのはレンタルハウスでいいと思います。レンタルハウスの別名がモグハウスだったはずなので。
次は下層と上層のイメージですが・・
多分さしゅさんはプレイヤーがいる時のそれぞれのイメージを文章になさったんだと思います。
下層が人が多くて、上層は比較的静か、って感じですかね
まぁあながち間違いではないのですが、上品かどうかと言うと?ですね。確かに上層はレンガ造りで上品そうに見えますけどねw
クエやなんかを思い出していただけるとわかりやすいと思うのですが、下層は商人の町、上層は職人の町、そんな感じの区別じゃなかったかなと思います。
まぁNPCの数は下層79人、上層69人と下層の方が多いですけどねw
長くなりましたがご参考にでもなれば幸いです。

ではでは本日はこの辺で、次回もがんばってください~

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◆しげさん
こんにちは、白衣を着る機会がないさしゅです。
似合いそうかどうかは、会ったことがあるブロガーさん……みやさんとか、pさん、でゅなさんに聞いてみてください( ̄▽ ̄;

モグがいるハウスがモグハウスだと思っていました。
ありがとうございますー。
過去に遡って修正しておきますw

上層と下層のイメージは“下層の歌姫”のイメージを明確にするため、強引に設定させてもらったところがあります。
NPCも上層の方が上品な人が多い気がしたのでw
……て、しげさんに逆らうと、しげさんファンから隠しコメントで攻撃されそうでドキドキします。
ちょっと様子を見ることしますw


◆隠しコメントさん
うは、(4)→(5)の件、すぐに修正させていただきました、ありがとうございました!
印刷すると、改行が多すぎて逆に読みにくいのでは……と心配してしまう私です( ̄▽ ̄;
考えてみれば私もバックアップを取っていないので……ある日突然FC2のサーバーからデータが消えたら、この小説も消えてなくなりますね……。
今から、小説だけテキストファイルに落としてきますw
ありがとうございました~♪

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◆隠しコメントさん
たくさんほめてくださってありがとうございます。
いまだに試行錯誤なブログですが、リンクしていただけるのは嬉しいです♪
よろしければ相互リンクにさせていただきたいので、URLをコメント本文で教えてください。
隠しコメントだとURLを書いても管理側に表示されないのです(困った仕様です( ̄▽ ̄;)。
よろしくお願いします^^

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小説始めて半年も経たないというのに、サシュさんのレベルアップの早さには驚かされます。
まだまだ天井の陰すら見えないですね。
今後、読者として物凄く楽しみです。
今回の話を読んでいて、サシュさんが胸張って「読んで見てよ」と奥さんに言える日もそう遠くない気がしました。
オレからしてみれば、ゴーサイン出しても良いと思うんですが、何分奥さんのこと知らないので、それに関しては控えておきますw

えっと上層に関しては、オレは上品なイメージということで良いと思います。
理由は、簡単で上質なアイテムが作れるクリスタル合成のせいで職人の価値が下がり、安くて取引の早い競売のせいで商店の客足も遠退いてしまった上層。工房橋としての目的はジュノが完成した時点で達成されてしまっているので、現在では住宅として古い建物を改造したり、その土地を購入して家を建てたりと、住宅街化が進んでいるらしいです。
ま、例えば、東京で土地を買う人がどんな人なのかってことを考えると・・・、やっぱりお金持ちの人ですよね。
ということで、上層は上品な街になりつつある街ということで良いのではないでしょうか。
倉庫とかもあるんで、東京というよりは横浜かw

◆隠しコメントさん
リンク&URLのご連絡ありがとうございます!
こちらからもリンクさせていただきました♪
よろしくお願いします~( ̄▽ ̄〃

◆ひーさん
お褒めの言葉をありがとうございます♪
かみさんは、ストーリー構成のような全体的なところは多分苦手です。
一文一文の言い回しとかにうるさくて、それが言われるとこちらもその方がいいなぁと思ってしまう指摘なんですよw
ただ、それを全部聞いていると自分ではなく彼女の文章になってしまうのと、一番問題なのが、彼女が途中で飽きてしまうことです( ̄▽ ̄;
読んでも口を出さなければいいことなのですが、そういう場合はあえて読まないのが彼女の性格なのでw

上層の件は、そういえば工房橋という言葉を聞いた覚えがありますね( ̄▽ ̄;
その辺がわかって書いているのと、そうでないのとでは全然違うと思いますので、しげさんの指摘もひーさんの指摘もありがたいです!
いつもありがとうございます~( ̄▽ ̄〃

ありがとうございます

リンクありがとうございますm(__)mFFXIと一般のサトとのまったく関係ないのにリンク貼ってもらっていいのかと思って…もうタジタジですよ((((((^-^;)これから表示しますこれからよろしくお願いします

◆サトさん
こちらこそ、ありがとうございます~!
またコメントもよろしくお願いしますです( ̄▽ ̄〃

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