珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Cカーズ5-1

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)


110728 5話

 第五話 刺客の価値 (1)

 滑るように空中を移動する飛空艇――。
 巨大な建造物が、ぶ厚い大気の層をかきわけるように進む様は、まるで空飛ぶクジラである。V字型の編隊を組んだ渡り鳥の群れが、恐れをなしたように見えない路《みち》を譲る……。
 飛空艇航路はジュノ大公国を基点として四本存在し、ジュノ港と他の四つの港の間を極めて正確な時間で往復している。朝早くジュノ大公国を出港しウィンダス連邦に向かう飛空艇の甲板の上は、突き抜けるような青い空と、すがすがしい空気に包まれており……順調な空の旅を象徴していた。
 南東を目指す飛空艇の右舷の欄干に、少し高くなった朝陽を浴びてたたずむ二人の美しい娘がいた。空からの眺めを求めて甲板に出た数人の客は例外なくその二人にしばし視線を止め……この飛空艇に乗り合わせた幸運に感謝するのであった。世界中を旅する冒険者でさえ、一生に一度出会えるかどうかの美貌をもつ娘が二人並んで立っている……その奇跡は、見る者にもれなく溜め息をつかせるほどであった。
 二人はまるで、どこかの街角で待ち合わせた子供のように笑顔で話をしていたが、しばらく前から会話が途絶えたようだった。灰青色の瞳をもつ娘が、きらめくようなクリーム色の髪を軽くかき上げると、黒髪の娘に再び話しかけた。
「あのね、ミサヨ……」
「何? カリリエ……」
 ミサヨが深く吸い込まれるような黒い瞳を優しく返すと、カリリエは少し躊躇するように問いかけた。
「私も、彼のことを〝サシュ〟って呼び捨てにしてもいいかな……?」
 くすりとミサヨが笑った。
「どうして、私に聞くかな?」
「それは……ミサヨの方が付き合いが長いわけだし……それに……」
 ジュノに歌姫として君臨していた時の貫禄は今はなく、カリリエはローティーンの少女のように顔を赤くしている。ミサヨはカリリエの考えていることが手に取るようにわかったが、その状況を認める心の準備がまだできていなかった。
「付き合いが長いって言っても……たった一日の差しかないよ? 気にしない、気にしない」
 一瞬カリリエは黙ったが、うやむやにする気はないようだった。何事もはっきりさせたがる彼女の性格をミサヨは知っているし、そのおかげで助けられたことも多い。
 ……カリリエは、とうとうその言葉を口にした。
「私ね……彼に魅かれているかもしれない」
 カリリエは探るようにまっすぐな瞳をミサヨに向けている。ミサヨはごまかせないことを悟った。何年でも隠し通すつもりだった言葉を、こんなにも早く口にすることになるとは思っていなかった……。
「私も、サシュのことが好き」
 言った途端、予想外に心が軽くなったことをミサヨは実感した。サシュには、いい女《ひと》がいるかもしれない……そんなことばかり考えていた。言葉にすれば、逆に重い気持ちになると……そう思っていたのに。
 しかも、親友と恋敵《こいがたき》になったと言うのに……。
 カリリエが微笑んでいた。私はまだそこまで自分の気持ちに自信がないよ……そう言ったカリリエは、また少しの間をあけてから、可笑しくて仕方がないという感じで言葉を続けた。
「タルタル族を可愛く思うヒューム族の女はたくさんいても、惚れる女は、ちょっと珍しいよね……私たち、変人かもしれない!」
「……言えてる!!」
 ミサヨは心の底からカリリエと笑いあった。そんな気持ちになれたことが不思議だった。
 それから、カリリエはまるでお姉さんになったつもりであるかのように、優しく言った。
「恋愛なんてさ……もっと気楽にすればいいんだよ。明日には、もっとかっこいいエルヴァーン族の男に心を奪われてるかも知れないんだしさ」
 恋愛経験に乏しいミサヨには実感のわかない言葉であったが、そういうものかもしれないと思わせる勢いがカリリエにはあった。サシュに気持ちが傾いたのも……十二年も兄を想い続けていた自分にとっては、あっという間の出来事だったのだから。
 いずれにしても……ここ数日思い詰めていた自分の気持ちを解放してくれた親友に、思わず涙が浮かぶくらいミサヨは感謝した。

   *

 航路の半分を過ぎた頃、サシュが二人の元に戻って来た。飛空艇が出発してすぐに、サシュは一人で後部プロペラ台の上に座り、流れる景色をぼーっと眺めていた。どこか近寄りがたい雰囲気を感じて、ミサヨとカリリエはあえて声をかけず、離れた欄干で昔話に花を咲かせていたのだ。そこへ顔を見せたサシュは、うらやましそうな他の客の視線をよそに、あまり元気がないようだった。
「二人に聞きたい事があるんだけど、今、いいかな?」
「うん」
「何ですか?」
 ミサヨとカリリエは一度視線を合わせた後、キョトンとした表情をサシュに向けた。タルタル族のサシュの身長は彼女たちの半分しかない。自然に見おろす感じになるが、短期間で深く関わることになった彼女たちにとって、サシュは確かに年上の男だった。
「ミサヨには数日で髪が伸びた件を……カリリエさんには〝呪いの指輪〟をはめることになった状況を……はっきり聞いておいた方がいいと思って」
 二人がサシュに頷き、近くに人影がないことを確認した。私から話すね……そう言ってミサヨが髪のことを話し始めた。話すきっかけがなかっただけで……と前置きをしてからミサヨが語った内容はこうだった。
 王室親衛隊に潜入するために入隊試験を受ける時、ミサヨはショートボブだった髪を刈り上げた。だから入隊後にマリィの家で初めてサシュと顔を合わせた時は、確かに髪を刈り上げた状態だった。その後、実は潜入目的だったことがベッケルにバレていて、しかもマリィの家で彼を無様に転ばせたことを恨まれていたミサヨは、ドラギーユ城の地下でサシュと同時に呪いの指輪をはめることになった。その時はブロンドでストレートヘアのカツラをつけていたが、中身は刈り上げた状態だった。
 ところが――。
 翌朝目が覚めると、いきなり髪が五十センチも伸びていた! しかもぼうぼうに伸びていたわけではなく、まるで誰かがカッティングしてくれたかのようにきれいに。鏡に映した姿は、冒険者になる前の自分を見るようだったという。七歳という幼さで冒険者の仲間入りをしたミサヨは、それまでのロングヘアを切り、今の髪型……ショートボブに変えたのだった。髪が突然伸びたことに驚いたが、それ以外の異常はなく。その日のうちに知り合いに切ってもらい、今の髪型に戻したということだった。
「朝、目が覚めたら、いきなり……?」
 サシュの声にミサヨが頷いた。
「そう……信じられないかも知れないけど」
「指輪のせい……なのかな?」
 ミサヨを疑う気など全くないサシュは、その先へ思考を進めていた。〝呪いの指輪〟で髪が伸びる話など聞いた事がないし、自分の髪はなんともなかった……しかし、偶然とは思えない。一体、この指輪は……。
「髪質というか……髪の感じはどう? いつもの自分の髪と違う感じはある?」
 ミサヨとカリリエが顔をしかめた。サシュは自然に疑問を口にしただけだったが、〝他人の髪が生えてきた〟という想像は気持ちの悪いものだった。生理的に受け入れがたく、軽い恐怖を誘う。
「……あ、ごめん」
「自分の髪……だと思う……けど」
 答えたミサヨの顔は暗かった。
「こんなにツヤツヤした綺麗な黒髪、ミサヨ自身のに決まってるでしょ!」
 カリリエが怒ったように言う。以前のミサヨの髪を見たことはなかったが、サシュも思わず同意した。たぶん、そうなのだろう……他人の髪なら、偶然に同じようなストレートの黒髪である確率は、それ以外の確率よりはるかに低い。
「わかった、ありがとう。……カリリエさんの話も聞かせてもらえますか?」
「ちょっと待った、その前に」
 カリリエがおどけて言った。
 その時である。
 お互いに「さん」付けはやめない? ……カリリエがそう言いかけた時。突然、サシュの背後で声がした。
「げ。ばれました!?」
 思わず背後を振り返るサシュ。人の気配。姿は見えないし、音も聞こえないが確かに人の気配が慌てるように遠ざかって行った。
 足元に突然、きらきらとこぼれるような光がきらめき、その中から短剣が現れた。それを拾い上げたサシュは、すぐにただの短剣ではないことに気づいた。ポイズンダガー……錬金術スキル22で作れる合成品だ。通常の殺傷能力に毒の追加効果が付与されている。持ち主に突然落とされて、付いていたプリズムパウダーの粉が落ちたのだった。
「誰かいたみたいだね」
 ミサヨが口を開いた。カリリエが頷く。
「プリズムパウダーで姿を消し、サイレントオイルで音まで消して近付いて、何が目的だったのかな?」
 サシュが拾ったばかりの短剣を二人に見せた。
「あまり楽しい目的じゃないだろうな……俺の頭がまだ胴体にくっついてるのは、カリリエさんのおかげだ」
 でも……とサシュは言った。
「暗殺者にしては、やり方が素人くさいね……セリフも間抜けだったし」
「女の声に聞こえた……」
 カリリエがそう言うと、ミサヨが頷いた。
「気を付けてねサシュ。今はレベル制限されている身なんだから、気配を感じる能力や敵を威圧するようなオーラも落ちてることを忘れないで」
「ありがとう……そうだな、油断して殺されたらシャレにならない」
 目的が俺だけとは限らないから、二人も一応注意してくれ……そう付け足してサシュはポイズンダガーをかばんにしまった。
 相変わらず空は青く、風は涼しい。しかし飛空艇が進む方向……ミンダルシア大陸南部の空が厚い雨雲に覆われているのが見えた。ウィンダス連邦は今頃雨が降っているに違いない。故郷ウィンダスの風景を思い浮かべた時、再びサシュの心は光を失った。カリリエから指輪の話を聞いたら、後部プロペラ台の上に戻ろう……旅を楽しむ二人の邪魔をしたくなかった。そんなことを考えているサシュには、彼を見つめる二人の視線の優しさに気づく余裕がなかった。あえて話しかけずに見守っていた二人の心遣いにサシュが感謝するのは、もう少し先のことである。

 ~(2)へ続く


コメント

執筆お疲れ様です~。

ポイズンダガー。ええ、小説読むまで存在すら忘れていましたよw

それはいいとしてツッコミを1点だけ。
タルタル族のサシュの身長は彼女たちの半分しかない。
サシュが背が高いのかもしれませんが、もしそうで無いならタルの身長はヒュムの半分以下なので、半分もない。などに変えたほうがいいかもしれません。まぁ細かいですけどね。

後これは全く関係ない、ただの私の疑問なのですが、スニークって足音は消せるけど、例えば小枝を踏んでパキッっと鳴ったって感じの自分以外が出す音にまで効果あるのかなぁ?
もし良ければこちらにもコメントくださいなw

ではではこの辺で、次回もがんばってください~

◆しげさん
コメントありがとうございます♪
サシュはMサイズで、ミサヨとカリリエはともにSサイズ。
半分より若干低いかもしれません。
4割5分くらい……?
およそ半分ってことで、半分と言い切ってしまいました。
その方がイメージしやすいですよね?
「半分もない」だと、ヒザ上くらいのほんとに小さいイメージを受けてしまいそうなので避けたいです。
小説限定設定と思われても構いませんので、ここでは半分とさせてください。

スニークについて考えてみました。
これは全くの個人的考えで、参考にならないかもですが。
スニークは魔法ですが、効果はサイレントオイルと全く同一と考えるべきだと思っています。

オイルと言う設定から考えると、小枝を踏む音は消せても、小枝自身が折れる音は消せないでしょう。
ただし、利用する側……というか、ゲーム上の実際の効果から考えると、小枝はともかく落葉が積もったような場所で落葉同士がこすれる音が聞こえるのはマズイですよね。

本当に静かな場所では、スニークもオイルも効果はないのかもしれません。
鎧のカチャカチャいうような金属音を消しているだけと考える方が良いのかも。
実際に自分が使うことを考えたら、そっと歩くことで足音なんてかなり静かにできそうですが、装備の金属音はそうはいかないので必要って感じじゃないかなぁ?

考えさせてくれて、ありがとうございましたー( ̄▽ ̄〃

サシュさんモテモテじゃないっすかw
しかも前回の「それなら、許してもらえるかな・・・」的なセリフから察するに心中の人もいるみたいだし。
ストーリーが終わる頃には、それはそれは見事なサシュハーレム御殿が建ってるんじゃないだろうかwww

ま、冗談はおいといて、今回登場した暗殺者は超マヌケですね。
わらえましたw

□(。。)ふむふむ・・・
サシュさんもてるねぇ^^

バレた所、サトから見るとびっくりしちゃった・・・^^;

えーとですね。
書き始めた頃は、こんな展開にするつもりは全くなかったんです。
サシュとミサヨはお互いにクールな関係が続きながら、事件が起こるたびに相手の信条や弱さが少しずつ見えてきて、いつしか友情を感じていると言う男女間の友情をテーマにするはずだったんです、本当です。
それがどうしてこうなったかというと、たぶん、最初のミサヨの登場シーンのせいです。
あそこで愛想のいい美しい娘で登場しておきながら、次に会う時にはよそよそしくなっているはずだったんですが……文中で「美しい娘」を臆面もなく強調していたら、作者の自分が気に入ってしまって、そのまま「美しい娘」路線に走ってしまいました……だめじゃん( ̄▽ ̄;

で。
恋愛話が1度出てくると、それ以降どうしても何かとその感情が前面に出てくることになっちゃうわけで……それじゃ、話がつまらない……。
ミサヨにいつまでもモヤモヤされてると困るので、今回いきなり気持ちに区切りをつけてもらっちゃいました。
とはいえ、ミサヨの恋愛感情がなくなったわけではないので、今後も時々出てくると思いますし、最終話までにこの問題に決着をつけるつもりです。
また変わるかもしれませんが、ずいぶん前に恋愛関係も含めた最終話を考えてありますし。
少なくとも、何がどう変わろうと、ハッピーエンドにすることだけは変えるつもりはありません。
そんな感じです。
うひー( ̄▽ ̄;

◆ひーさん
そうそう、そろそろバレると思っていました!
いずれサシュハーレム御殿がうひひ……って、それはないけどw
ネタバレはここでは避けますが、自分が楽しむために書いている小説であることは間違いありませんw
それはもう、欲望のおもむくままに~くくく!( ̄▽ ̄〃
暗殺者は……いや、ネタバレはいかんいかんw
結局、恋愛話を出しちゃいましたけど、これからも見捨てずに読んでいただけると嬉しいです。
またコメントを待ってます♪
自己満足小説になりきらないようにしないとなぁ……。

◆サトさん
今回もコメントをありがとうございます!
サシュは現実のさしゅとは違って、モテるみたいですw
バレたところ……暗殺者は、とりあえずいつものようにいきなり出しちゃいましたが、今後物語を展開させていきます。
少しドキドキしながら、まったり読んでいただけたらいいなぁと思います!

見ててなぜか私が照れました(´∀`*)w
タルタル族に本気・・・私達のヴァナでもありえます(*´ー`)b
しかしスニークに対しての見解がみなさん鋭いですね。
実際どこにつけてるのかというと、全身なのでしょうか・・・。
パウダーはふりかけるイメージありますが、オイルを全身に、というと、結構抵抗ありますね(´д`);

◆そあらさん
今回もコメントありがとうございます~!
私も書いてて照れましたw
ヴァナ恋話で男がタルってのは見た事ないですよ~。
なんていうか恋愛対象外な気がしますです( ̄▽ ̄;
オイル……。
オイルで装備がてらてら光ってるのはかなり嫌ですねー。
実際にはそんなこと考えてプレイしてませんけどねっw

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。

HOME

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

最新の記事
最近のコメント
カテゴリ
月別アーカイブ

リンク
プロフィール

  • Author:笹谷周平(ささ)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

最近のトラックバック
商標/著作権等


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。