ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ8-2

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1)


 第八話 裏切り人形 (2)

「ベッケルも、ここを通ったのかな……」
 サシュの右横で深い雪を踏みしめたミサヨがつぶやいた。
 空はダークグレーに濁った雲で覆われ、大地は純白の雪で覆われている。夕方のこの時間……幸運にも風はほとんどなかった。
 ここはボスディン氷河。雪と氷の世界である。
 ラングモント峠を無事に抜けたミニブレイクの一行は、南西側からボスディン氷河に入っていた。そのままレベル1のミサヨを囲むようにして、崖の間を進んでいる。人が踏み入ることがほとんどないこの北の大地には、凶暴なトラや獣人のゴブリンがうろついているのだ。
「どうかな……ウィンダス連邦方面から直接来たのなら、テレポでヴァズに飛んで西から歩いて来た方が早いかもね」
 サシュの言葉に「そっか」とだけ答えたミサヨは、ベッケルの行動に考えを巡らせた。ホルトト遺跡で見つけたベッケルの資料から推察すれば、彼がこのボスディン氷河に来ている可能性は高い。金さえ積めば瞬間移動《テレポ》の魔法を唱えてくれる冒険者はどこにでもいるだろう。面が割れているサンドリア王国の近くを通るよりは、変わり者を詮索しない風土のウィンダス連邦で準備を整える方が都合が良かったに違いない……。
 そして、自分達が向かっているソ・ジヤ遺跡の一つ……東の塔こそが……。
「まさか、ベッケルってヤツの羊皮紙に印がついていた塔に向かうことになるとはね……。はちあわせとかしたら、嫌だなぁ」
 ミサヨの右側でこぼすカリリエ。ミサヨも自然に残念そうな顔になる。
「出会う確率は低くないかも……」
「出会うことになるさ……たぶんね」
 サシュには確信があった。ホルトト遺跡で感じた予感……ベッケルとは必ず決着をつけることになる……。
 思い思いに会話をしている一行の中で、アンティーナだけが無言だった。

   *

 いつしか崖は途切れて、広い場所にホルトト遺跡の魔法塔にそっくりの建造物が見えた。ソ・ジヤ遺跡の一つ……南西の塔だ。
「今夜はここに泊まろう」
 泊まると言っても塔の中に入るだけで、地下の施設に降りていくわけではない。夜の吹雪を防げればそれでいいのだ。階段を降りた先の地下には、モンスターたちが潜んでいる……。
 目的の東の塔までは、翌日に半日かけて歩くことになるだろう……皆で食事をとり、早めに眠りについた。

 ……その夜。
 サシュは夢を見た。

 暗闇で囲まれた赤く広い空間。
 そこにいるサシュを、空中から見おろす異形の者……。
 爬虫類系の顔と皮膚を持ち。背には翼竜のように巨大な翼。細く長い尻尾を持つその姿を一言で現せば……〝悪魔《デーモン》〟。

(失礼ナ…… デーモン族のヨウナ 下等な者ト 一緒にスルナ)
 響く声はかん高く、サシュの神経を不快にする。
「何しに現れた……? 呼んだ覚えはない……」
(ふン…… そなたノ 意識ガ 私の夢ヲ 呼んだのダ)
 異形の者は、つまらなそうにサシュに答えた。
(十三年前ニ 私のチカラヲ 分け与えタ 者がイル……)
(そなたガ その者のコトヲ 強く考えていたセイダ……)
「なん……だって……?」
 思考が鈍くなっている。
 力を分け与えた……?
(その者ハ 私ガ 与えてやったチカラ…… 心弱き者への精神支配力だけデハ 満足でキズ……)
(別の〝霊獣〟ノ 力をも得よウト この地に来てイル…… 私が棲むこの地ヘ……)
「俺とお前と……奴……ベッケルが近くにいるせいで……この夢というわけか」
 思考をまとめるのに、普段の倍以上の精神力が必要な気がする。サシュは考えることに疲れを感じていた。
(そういうコトダ…… 私ハ 夢ヲ 司るモノ…… どんナ 夢モ 私ノ 夢とナル……)
「……親切なことだ」
(……何ダト?)
「それだけ聞けば十分だ。さっさと帰ってくれ」
(人の分際デ…… 大きな口を叩かぬコトダ……)
(このまま 夢の中デ そなたヲ 殺すことナド 私にハ 造作もないコト……)
「…………」
(まあヨイ…… いい暇つぶしになったというモノダ……)
 そう言いつつ、異形の者は、やはりつまらなそうだった。
 サシュは早く目覚めたかった。このまま夢の中にいれば、本当に殺されかねない……。

 突然。左手に青い光が生まれ、赤い空間を押し出し始めた。
 気づくと、〝呪いの指輪〟から青く柔らかい光がもれている。
(……それハ! ハハハ!)
 異形の者が額に手を当てて笑っていた。
(あの男メ…… 私ガ コレクションにしてイタ カーバンクルの指輪ヲ せっかく与えてやったと言うノニ…… そんなことに使ってイタノカ……!)
(愚かナ…… 人ハ 昔カラ 少しモ 変わらヌ……)
「そうだ……俺もカーバンクルに会うまでは、この指輪の本当の意味に気づかなかった……」
 青い光が空間を満たし、異形の者の姿が薄れていく……。
(人同士ノ 争いナドニ 興味はナイヨ…… さらばダ……)
 かん高い声が余韻を残しつつ、闇に消えていった……。

 夢から醒めたサシュは、ひどく気分が悪かった。鈍い痛みが頭を包んでいる。
 塔のすぐ外で暖を取るために燃やしている焚き火の光が、入口から差し込んで壁を赤く照らしていた。その赤い空間は夢の続きを見ているようだ。だが、ここには仲間が……まだ夢の中にいる仲間たちが寝息をたてている。
 焚き火の番をしていたタルタル女性のカロココが、塔の中でサシュが身体を起こしていることに気づいた。
「夜明けまで、もう少し時間があるよ。ゆっくり寝てなよ、リーダー」
「いや……寝不足感はあるんだけど……目が冴えちゃって。交代するから、カロココさんこそ少し眠ってよ」
 そう言うと、立ち上がって焚き火のところまで歩くサシュ。二時間交替で焚き火の番をしているのだが、今夜のローテーションにサシュは入っていなかった。
 同じタルタル族のカロココは、小さなサシュよりもさらに少し背が低い。その近くに腰を降ろしたが、彼女に動く気配はなかった。少し考えるそぶりを見せた彼女は、灰になってしまった部分を木の枝でかき出しながら、遠慮がちに言った。
「……少し、話していい?」
「……うん、……何?」
 サシュの頭は、まだ夢のことでぼんやりしている。
 しばしの沈黙の後、ようやくカロココが口を開いた。
「……リーダーは……集団のリーダーをするのって、初めてでしょ?」
「まぁね……」
 カロココが何の話をしたいのか、サシュにはわからなかった。
「やっぱりね。でもさ……これだけの集団が冒険を続ければ……」
 カロココはそこで言葉を区切った。少しの間を置いて、続きを口にする。

「……一人、二人、死人が出るのは仕方ないよね?」
「………!」
 顔が引き締まるサシュ。隣りにいるカロココが、サシュの目を見つめていた。
「……昨夜の、〝誓い〟のこと?」
「そう……正直、〝生っちょろいこと言ってるな〟と思った」
 無表情のまま話すカロココ。サシュは彼女から視線を外すと、あっさりと認めた。
「……そうだね」
 そう言うと、サシュは遠くを見る目になって黙った。
 沈黙が続くと、次第にカロココがソワソワしはじめ、居心地悪そうに口を開いた。
「べ……別にさ、非難するつもりじゃなくてさ。リーダーがどんな覚悟で冒険しているかは、ミサヨを助けたことでわかってるし……。何て言うか……その、誰かが死んでも……くじけてほしくないって言うか……ヤケになってほしくないと言うか……」
 サシュが、くすりと笑った。
「……ありがとう。カロココさんは優しいね」
「……な…………ヤな奴!」
 カロココが顔を赤くして立ち上がった。
「私、ちょっと寝てくるよ! じゃあね!」
「うん、ホントにありがとう」
 サシュは新しい乾いた木の枝を焚き火に放り込んでから、再び遠くを見る目になった。
(それでも……)
 サシュの心に、今は亡きタルタル女性とその赤子の姿が浮かんでいた。
(大切な人を失うことに……慣れることなんてないんだ……)

 誰にも死んで欲しくない……そう願わずにはいられない。
 死と隣り合わせの冒険者がそれを望むことは、ワガママだとわかっていても……。

 ……サシュの脳裏に、夢の中の異形の者の姿が蘇った。彼の名は、〝ディアボロス〟……夢を司る霊獣……。
 カーバンクルと同じ、生ける神々……五霊獣の一角である。闇に身体を喰われた者は、ディアボロスの夢の世界デュナミスで、心だけが永遠に生き続けるという……。
 初めてディアボロスに会った時に、彼から聞いた話だ。それは、理想郷とはほど遠い……心の檻のようなもの……。
 マリィの病気の正体が闇の一部だとわかった以上……彼女を救うことは、ただ死から救うこと以上に意味があるということだ。
 ……ただし、時間はあまり残されていない。
「必ず……助けてみせる。そのために、全員が生きて帰るんだ」
 サシュは知っていた。この決意だけが、誰もが死を覚悟するような危機に……生きて乗り越えるチャンスを産むのだと。二十年以上の冒険から学んだ最も大切なことだ。だから、ミニブレイクの〝誓いの言葉〟は、これしかないのだ……。

   *

 ふと気が付くと、ひざを抱えたままウタタ寝していたサシュ。ずれた眼鏡を戻して目を上げると、東の空が白みはじめている。
(……見張り、失格だな……)
 もっとも、レベル75のサシュが座る塔の入口に近付くようなモンスターが、この辺りにいるはずもないのだが……。
 幸い、火は消えていない。いや……焚き火の向こうに誰かが座って、焚き火を見守っていた。
 ……ミサヨだ。
 サシュは自分の身体に毛布が掛けられていることに気づいた。それからもう一度ミサヨの方を見ると、目が合った。
「おはよう、サシュ。そろそろ起こそうと思っていたんだ」
 白い息を吐いてにっこり笑うミサヨ。サンドリア王国の凱旋門の前で初めて出会った時に、心臓が止まるかと思ったほどの美しさ……それは今も少しも変わらない……。
「おはよう、ミサヨ。……今日の冒険はキツイものになる……レベル50制限だからな……だから……」
「……だから?」
 サシュはニヤリと笑った。
「しっかり朝食をとってから出よう」
「……了解!」
 みんなを起こさなくちゃね……そう言ってミサヨは元気に立ち上がった。
「あ、ちょっと待って」
 呼び止めたサシュに怪訝な顔を向けるミサヨ。サシュは立ち上がって、右手に毛布を持った。
「これ……ありがとう」
「……リーダーが、風邪をひいたら大変だからね」
「……面目ない」
 自然に笑いがこみ上げて、二人で笑いあう……。
 こんなくだらない時間がずっと続けばいいのに……と、サシュは一瞬本気で思った。毛布を受け取ったミサヨが、笑いの余韻を残したまま塔の中に入っていく。
 サシュが振り返ると、ボスディン氷河が遠くまで見渡せた。結局、夜の間も吹雪くことがなかった……そのせいで、空気が澄んでいるのだ。
 広大な雪原が美しい紫のグラデーションに染まっている……。
 ……冒険者の血が騒ぐ景色だな。
 そんなことを思いながら、サシュは朝食の準備に取り掛かった。

 ~(3)へ続く


コメント

ドキドキ続きが気になるなぁo(^-^)oいつも小説は昼間に更新があってたから、今週は、ないのかなぁって思ってましたw(°0°)w

◆ヒデタルさん
コメント早っΣ( ̄▽ ̄;
いつも、ありがとうございます!
今日は夕方にいったん書き終わって、それから文章校正の途中で、フレのイベントの手伝いとか他にもリアルで色々あって、校正が終わるのに遅くなりました、すみませぬ。
続きが楽しんでいただけるものにできればいいなと思います。

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◆秘密さん
復帰できそうとのことで、おめでとうございます^^
ヴァナライフを楽しんでくださいませ♪

ディアボロスの性格が良いな~、結構セリフは考えたんじゃないです?

しかし、同じ土地を書いても色々と差がでるもんですねー。
オレのボスデイン氷河の描写はちょっと色々やりすぎたかなwww

さてと、次が更新分ラストかな?
次行くぞー!

◆ひーさん
ディアボロスの性格は、この小説限定で私が作っちゃいましたね( ̄▽ ̄;
口調や表記は、なるべく元に忠実にを目指しました。
この小説を読んでからPMをやる人が、デジャヴしてくれたら思うツボなんですけどw
ボスディン氷河は、ひーさんの方が断然迫力があって良かったよ~。
さすがに映像で観まくった成果というか……私は人の内面の動き重視を目指しているせいもあるけど、あっさりしすぎかもっ( ̄▽ ̄;
それにしても……ひーさんとは色々とかぶってるよね~。
そちらの未発表分も含めてw

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