ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
→遭遇リスト

駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ8-5

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4)


 第八話 裏切り人形 (5)

 十年前。
 ブレソール卿の別邸でいつものように勉強をしていた六人の少年少女に、歴史学の先生がこう言った。
「本日の勉強はここまでです。午後の屋外訓練も、本日は中止となります」
「先生、僕たちはどうすればいいでしょうか?」
 十六歳になった長男のマークが質問すると、先生はただ事務的にこう答えた。
「午後には特別な〝儀式〟があるそうです。昼食はとらずに、十二時にベッケル様のお部屋に集合しなさい」
「はい」
 ヒューム族の少年少女たちはただ従順に、指定の時間にベッケルの部屋を訪ねた。自分たちを待ちうける〟儀式〟に不安を抱きながら……。

 彼らの主人がブレソール卿からベッケルに替わってちょうど一年が経っていた。朝から晩まで続く勉強も訓練も、以前と変わらず継続している。ただ……ブレソール卿が姿を見せなくなり、三日に一度ベッケルが屋敷を訪れるようになったことだけが違っていた。
 その日の午後……ベッケルの部屋から続く地下室で、その〝儀式〟は行われた。
 一人ずつ……順番に……。
 わずかな明かりしかない地下室には、白衣を着た老人と……屈強な体躯の男が二人……それから縄で縛られたまま動かない薄汚れた少年がいた。いずれもエルヴァーン族で、初めて見る顔だ。
 ベッケルは上の部屋に残ったまま。少年少女たちはただ〝指示に従い儀式を済ませてこい〟とだけ命令を受けている。

 見知らぬ少年が最初で、それから兄たちと姉の〝儀式〟が終わり……最後が末っ子で十四歳のアンティーナの番だった。外の様子は見えなかったが、訓練で身に付けた正確な体内時計感覚によれば、すでに夕刻である。ノドは乾き、空腹のはずなのだが、それらの感覚はマヒしているようだった。
 兄たちと姉の〝苦痛の叫び声〟が地下室に響くたびに、耳をおさえてうずくまっていたアンティーナ。ただ〝儀式〟が早く終わることを祈っていた……。
「お前が最後だ」
 自分が呼ばれたことに気づいたアンティーナは、震える声で「はい」と返事をし、恐怖で手足をがくがくと震わせながら、兄や姉と同じように衣服を全て脱いだ。
 そして粗末な簡易ベッドにうつ伏せになると両手両足を伸ばし、それらを大男たちが拘束具に固定するのを待つ……。
「少しの辛抱だ」
 白衣の老人がそう言った。アンティーナと同様に苦痛に対する訓練を受けている兄や姉でさえ、三十分以上絶叫し続けていた。それを〝少しの辛抱〟と言う老人が恐ろしくて、アンティーナは目を合わせることさえできない。
 老人がそばに置いてある鉄製の小箱の中に皮手袋をした右手を入れ、例のモノを指先でつまんで取り出した。それは、二本の触角と八本の足をカサカサと音を立てて動かすヨロイ蟲であった。その音を聞いただけで、アンティーナの両手両足に力が入ったが、拘束されているため動かすことができない。
 そのヨロイ蟲が通常と少し違うのは……やや大きめであること、色が黄褐色ではなく赤褐色であること、そして……巨大なアゴを持ち、その口から黄色い粘着質の溶解液が糸を引くように垂れていること……であった。
 それは、ベッケルが霊獣ディアボロスの入れ知恵で一年かけて老人に作らせた特殊なヨロイ蟲。この老人と大男たちは口封じのために殺されることになるのだが……アンティーナがそのことを知るのは一ヶ月後だ。
 ベッドの上には、拘束されたアンティーナの白く均整の取れた十四歳の身体。ライトブラウンの髪の間からのぞくうなじには、恐怖のために鳥肌が立っている。

 そのなめらかな背中の上に、キチキチと音を立てる赤褐色のヨロイ蟲がそっと置かれた。
 改良されたヨロイ蟲はその本能のままに、アンティーナの皮膚を喰い破り……。
 肉と毛細血管を喰いちぎりながら、皮膚と筋肉の間をうごめきまわった。ヨロイ蟲が宿り場所を好きに探し回るのを阻害しないよう、麻酔処置さえされていない。
 とてつもない激痛がアンティーナを襲い、何も考えられずただ絶叫していた。びくんびくんと身体が跳ね、涙とよだれでできた水溜りに顔が付くたびにビチャビチャと音がする。漏れた小水のことを気にする余裕などあるはずもない。
 ヨロイ蟲が通り過ぎた跡が内出血のスジとなって縦横無尽に背中に浮き上がり、あちこちから血がにじみ出ていた……。
 少女は死ぬと思った。
 いや、死んだ方がマシだと思った……。
 比較的幸運だったのは、兄や姉ほどには苦痛に耐えられず、十分ほどで気絶したことだったろう……。

 背中に火をつけられたような痛みで意識を取り戻した時。アンティーナは自分のベッドにいた。消毒と手当てを受け、身体には包帯が巻かれていたが……背中の傷は全治三週間。治っても……大きく醜い傷跡は一生残ることになる。
 身体に入ったヨロイ蟲がどうなったのか……考えるだけでおぞましかった。

 〝儀式〟の正体は、次にベッケルが屋敷を訪れた時に明かされた。
 ……ディアボロスの呪いを受けたヨロイ蟲を背中に宿した人間が、ある短い呪文を直接聞くか、テルで聞いた時。休眠状態のヨロイ蟲がそれに反応して目覚め、大量の化学物質を分泌する。それは体内の水分と爆発的に反応し……半径十メートル以内にある物が全て吹き飛ぶほどの大爆発を引き起こすという……。
 そのことは実際に生きた人間を使って、アンティーナたちの目の前で実証された。地下室で縛られ意識のなかった少年は、そのためだけの生け贄であった……。
 一年前にはすでにレベル70前後に達していたアンティーナ達を下僕として手に入れた時。ベッケルが欲したのは、洗脳以上に確実な支配のための鎖だったのである……。

 今日の昼。
 サシュ達がソ・ジヤ遺跡・東の塔に突入して三部屋目の敵を倒し終わった時、アンティーナにテルがあった。テルなので、他のメンバーには聞こえない。

 ベッケル: 生きていたな、アンティーナ
 アンティーナ: ………!!

 その瞬間、アンティーナは〝支配される者〟としての意識に戻りそうになった。それをこらえることは、とてつもなく強い意思を必要とする。二十年間におよぶ洗脳の呪縛に、必死に理性で反発しようとするアンティーナ。

 アンティーナ: 私は……私は、もう……

 目でサシュの姿を探す。テルが終わったら、全てをサシュに話そう……それが一番いいはずだとアンティーナは思った。

 ベッケル: お前がサシュとつるんでこちらに向かっていることは
 ベッケル: 昨日偶然パールを覗いて知っていた
 アンティーナ: そうですわ……私は、もう自由を手に……

 突然、大きな笑い声がアンティーナの頭に響いた。容赦のないベッケルの嘲笑だった。

 ベッケル: 自由! ……自由だと、奴隷人形のきさまが!!
 ベッケル: ヨロイ蟲は十年たった今も、休眠しているだけ……生きているぞ!
 ベッケル: 今、この瞬間に俺が〝呪文〟を唱えればお前は……いや
 ベッケル: その狭い部屋にいる全員が吹き飛ぶことを忘れるな!

 アンティーナの心が悲鳴をあげた。
 ……助けて、……誰か、……サ、……シュ、………!

 ベッケル: ……このテルのことは誰にも言うな
 ベッケル: 魔力を温存してサシュ達と一緒にいろ……命令はそれだけだ

 いつの間にか冒険者としてテルを使えるようになっていたベッケル。その命令にアンティーナは逆らうことができなかった。いくつもの狭い部屋に仕切られた遺跡の構造が最悪だった。背中のどこかに眠るヨロイ蟲が爆発したら……自分が死ぬだけでは済まない……。
 この時アンティーナは、まさかベッケルが姿を消して同じ部屋にいるとは思いもしなかった。いや、おそらく……わかっていても逆らえなかったであろう……たとえ同じ部屋にいても、ベッケルがヨロイ蟲を爆発させない保障はないのだから……。
 アンティーナにできることは、ただ、サシュ達から離れるチャンスを待つことだけだった。それまでは、けしてベッケルに逆らうことはできないと悟っていた。
 エスケプで遺跡から脱出したら……たとえ爆発されることになっても、ベッケルと刺し違える決意をしていた。ただアンティーナにとって、自分が〝裏切り者〟としてサシュの記憶に残ることがつらかった。
 あの日……意を決してサシュに主従契約を申し込んだ気持ちさえ……嘘だったことになるのだ……。
 背を向けてエスケプの詠唱を終え、ただ異空間に消えるだけとなった時。アンティーナの目には自然に涙があふれて止まらなかった。
 最後にもう一度仲間の顔が見たい……。
 だがその仲間が自分に向ける眼差しが、裏切り者を蔑《さげす》み、嫌悪に満ちたものだとしたら……そう思うと振り向けなかった。

「……アンティーナ!」
 サシュの叫ぶ声が聞こえた。

 ……心臓が止まるかと思った。何を言われるのか……恐ろしかった……。

「待ってろ……必ず助けるから」
 ………!
 思わず振り返ったアンティーナの脳裏に、誓いの言葉が思い出された。
 〝……誓います……必ず生きて帰り、マリィを救います〟
 自分が口にした言葉。
(……死ねない……死んじゃダメなんですわ……サシュが待っていろと言ったのですから)
 アンティーナは生まれて初めて……自分は世界中の誰よりも幸せな人間かもしれないと……そう思った。
 人に信頼されるということ……たとえ何があっても信じてもらえるということ……それは幼い頃から人が心の底で求めている真の幸福であり……手に入れられる人間はそれほど多くはない。

 ~(6)へ続く


コメント

恐ろしくSだ。
前回、オレが小説でヒロイン虐めた時の100倍くらいSだ。
これアニメ化したら子供見れないな、深夜枠でおねがいしますw

しかし、最近は、さしゅさん自身が、もう日曜日が待ち遠しいって感じですね。早くアップしたいって気持ちが伝わってくるんですが……気のせいかな?www

アンティーナの苦悩がひしひしと伝わって来ますなぁw(°0°)wサシュがんばれー(o^∀^o)みんな期待してるぞー(≧▼≦)

◆ひーさん
コメント早いですね、ありがとうございます!
今回の前半部分。
TVアニメ化とかありえないですが、子供向けならヤバイシーンはカットか変更でしょうね。
あのワ○ピースでも、サ○ジの師匠が自分の足を食べる内容は変更されたと聞いていますし。
深夜枠なら逆に余計なエ○い映像が追加されそうです( ̄▽ ̄;
これで、「ヨロイ蟲が這いずり回りながら吐く溶解液には、人体にすさまじい快感を与える作用もあった」とかだとモロにソレ系の展開かな……個人的には虫とか触手とか好きじゃないですけど。
日曜日が待ち遠しいというか……やっと試験が終わってはじめての週末なので嬉しいですw
先週分と今週分は1セットなので、早く出したかったというのもありますね!( ̄▽ ̄)

◆ヒデタルさん
いつもありがとうございます。
一気にラストまで持って行……けたらいいなぁw

お疲れです~^^
早く助けたい気持ちですw

頑張れw

◆さとぽん
ありがと~^^
じゃあここは、いきなり登場したタルタル冒険者サトポンポンが、さっくりとベッケルを倒し、アンティーナを助けるという……展開にはならないと思うけどw
自分が読者だったら、たぶんサシュやミサヨは死なないだろうけど、アンティーナくらいは死んじゃったりしてもおかしくないかな~と予想するかも??
今後の展開はほぼ決まってるんだけど、まだ秘密( ̄▽ ̄;

あ、頑張らないからw
まったりだから♪

ううう。
想像するだけで、おぞましい儀式ですね;;;;;;;;;;

せめて首輪に爆弾をしかけるぐらいのほうがよかったかもですね;
はずそうとすると爆発する・・・・ってガンツ?

◆Leppardさん
ガンツは名前と絵柄くらいは思い浮かぶのですが、内容を知りません~( ̄▽ ̄;
うんまぁ今回の内容は、引く人は引いちゃうかなぁと思いつつ書かせてもらいました。
それでもカーバンクル・カーズは、まだ続きます……。

こんばんわ(^ー^)ノお久しぶりです。
コメントはなかなか出来ませんでしたが、小説は欠かさず
拝見させていただいてました( ̄▽ ̄)

ついにアンティーナの忌まわしい過去が明らかになって、衝撃を受けた読者さんも多かったのではないでしょうか。
私もなんとなくは予想していたのですが、やはり文脈を目の当たりにすると
愕然としました(^^;)
アンティーナのこれまでの言葉ひとつひとつを、この小説を見た後に読み返してみたのですが
また違った面白さで見れて、さらにカーバンクルカーズの世界にハマったって感じですy(^ー^)y

アンティーナがベッケルと共に異次元の先に消える間際、
サシュが言い放った言葉は、咄嗟の状況下だけに
本当の真意は、サシュ自信まだ半信半疑なのかもしれません。
けれども、アンティーナを助けたいという気持ちはハッキリと伝わってきたし
それこそが、アンティーナを信じることに通じている気がします。
サシュ、そして仲間たちの「心」が試されるのはこれからなのかも知れない!
なぁ~~んて勝手気ままに予想しながら、次回の作品を楽しみにしていますヾ(〃^∇^)ノ


最後に。

試験、お疲れ様でした~(゜ー゜~)(~゜ー゜)~~(゜ー゜~)(~゜ー゜)~

でわ。

◆ほわいとぉさん
こんにちは!
いつも好意的なコメントをありがとうございます。
私の中で、ミサヨはヒロインの座にどっかり座ってる感じなのですが、アンティーナがここまで目立ってくるとカリリエの立場がやばい感じになってきました。
うーん、カリリエって3人の中では一番いい女のはずなんですが、彼女のドラマがウイカとセットだったせいか、どうも子持ちのようなイメージになっちゃってる気も。
以上は私の中での話で。
例えばミサヨは、ひーさんに目のかたきにされてる気もしますし(?)、読者さんから見た登場人物の好みが気になりだしました。
生意気にも人気投票でもやってみたいなぁと思ったりしています。
回答してくれる人がいるかどうかはわかりませんけどw

試験はおかげさまで受かったみたいです。
ありがとうございます~( ̄▽ ̄〃

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。

HOME

駅メモ関連リンク
最新の記事
最近のコメント
駅メモ!便利ツール
駅メモ!個人サイト
ブログ内検索

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

月別アーカイブ

プロフィール

  • Author:笹谷周平(ささやか)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

カテゴリ
旧知リンク
商標/著作権等