珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Cカーズ8-6

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4) (5)


 第八話 裏切り人形 (6)

 ベッケルとその部下、そしてアンティーナが異空間の闇とともに消えた……。
 部屋の中は静寂を取り戻し、魔導設備は入室時と同様に青い光を明滅させている。あまりの平穏さに、たった今起こった事が夢か幻のようにさえ感じられた……。

「……見たか? ミサヨ」
 沈黙を破ったのは、背を向けたままのサシュ。それに対するミサヨの返事は、まるでその質問を待っていたかのように早かった。
「アンティーナが泣いていたこと? それとも、彼女の指輪が外れたことかな?」
 振り向いたサシュの顔は厳しいながらも……ミサヨの答えに満足していることがわかる。ベッケルの登場とアンティーナの裏切り……立て続けに生じた非常事態に、サシュとミサヨの集中力は異常なまでに高まり……その思考スピードは他のメンバーより確実に速かった。互いの目を見ただけで、同じ結論に達していることを確認する。
「時間がない……あとは頼む」
「了解」
 短いやり取りの後に、サシュは皆の顔を見渡した。
 困惑しているカリリエとジークヴァルト。
 成り行きを見守っているカロココとラカ。
 そして……。
「俺は今からベッケルを追う。ここのリーダーはミサヨに任せるから、一緒に行く者だけこっちに来てくれ」
 そう言うと、サシュはエスケプの詠唱を始めた。サシュに近付けば自動的に一緒に異空間に飲み込まれることになる。
 誰も動かない中で、カリリエだけが一歩進んだ。
「あなたはダメよ、カリリエ」
 止めたミサヨは、カリリエの顔を見てハッとした。……カリリエの目に、涙が浮かんでいる……。
「……何よ、二人だけわかったような顔をして! 私だって、アンティーナが心配なんだから!!」
 いつもと違う様子のカリリエに少し驚き……そして気づいた。カリリエの目には、アンティーナへの心配と共に……ミサヨへの嫉妬の色が浮かんでいる……。
(アンティーナが消えてサシュは最初に私に声をかけた……それは信頼の証……)
 そのことを喜んでいた自分にミサヨは気づいた。カリリエはそれを鋭く感じ取っていたのだ……。
(……違うよ、カリリエ。サシュが私に声をかけたのは……)
 サシュはエスケプの長い詠唱に集中していて、周りの会話は聞こえていない。ミサヨは少し動揺しながら、ゆっくりと答えた。
「それは……ラテーヌ高原の谷底でサシュを見つけたのがたまたま私で……その帰り道に、サシュの考えを聞いていたから……」
 説明するには時間が足りないと思った。今考えるべきことは、アンティーナを助けることとマリィを救うこと。マリィの件を急ぐことはもちろん、アンティーナも一度見失ったらいつ助けられるかわからない。どちらも急を要するのだ……それを両立するには、二手に分かれるしかない。
 そして、アンティーナを追う者はレベルが高い方が良く。残る者はマリィを救うアイテムの入手方法について見当がついていなければならない。その入手方法についてサシュから話を聞いているのは、現時点でミサヨだけだった。ミサヨは、ラテーヌ高原の谷底でサシュと再会してから谷底を抜け出すまでの間に、霊獣カーバンクルとの出会いやサシュの解釈について聞いている。
 だから二人の結論は一致していた。レベル75のサシュがアンティーナを追い、レベル1のミサヨがアイテムを入手する……と。
 ミサヨが落ち着きを取り戻した。
「とにかくカリリエは残って。理由は説明するから」
「でも……!」
 なお抗議しようとするカリリエの肩に手を置く者がいた。
「冷静になれヨ、歌姫。こんな時に一番信頼できるのがミサヨだって、アンタが一番よく知ってるだろ?」
 真面目な顔で見つめるジークヴァルト。気持ちの昂ぶっているカリリエに対して、ジークだけでなくラカやカロココも落ち着きを取り戻しつつあった。ミサヨが今後の行動について迷いのない表情を見せているからだ。若いミサヨが黒き雷光団のリーダーとして認められている理由の一つを、カリリエは思い出した。
 そんなやり取りの間に、異空間に消えるサシュ……。
 カリリエは大きなため息を一つついて、それからミサヨを見つめなおした。
「……いつもそうだね。私が怒っていて、ミサヨが止めるの」
「……そうだね。サシュがウィンダスで一人で行動するって言った時もそうだった」
 ミサヨの返事に、カリリエが微笑んだ。
「今回も何か考えがあるのかな? サシュには秘密の考えが」
「……もちろん♪」
 ふっと笑みを交わす二人は、いつも通りの二人だった。
 危険も、喜びも、哀しみも、成功も……二年間の冒険を共有し、その後も一番仲のいい親友。サシュはどちらかを選ぶかもしれないし、二人とは違う人を選ぶかもしれない。どちらかを選んだ時、素直に祝福できるかどうかは二人ともわからない。ただ、今は……タルタルへの片想いを共有する二人に違いなかった。

   *

 白い雪原に白い雪が舞っている……。
 エスケプによってソ・ジヤ遺跡の外に姿を見せたサシュは、いつの間にか雪が降っていることを知った。雪の上には消えかかった足跡があり、南へ続いている……。
 低い声がサシュに尋ねた。
「どこへ向かったと思う?」
「わからない……とにかく追おう」
 考えるよりも、ベッケル達の足跡が消える前に追った方がいいだろうとサシュは思った。サシュと一緒に地上に姿を現した者も納得したようだ。走り出すサシュに、遅れないように駆け出した。
 その大きな影は、ガルカ族のザヤグ。サシュがリーダーをミサヨに譲ってから仲間を見渡した時、ザヤグだけが心を決めた顔をしていた。サシュが思った通り、彼だけはエスケプする自分について来た……。
 走りながら、サシュはカリリエの話を思い返していた。チョコボで移動しながらアンティーナと三人で話した時、カリリエは確かに言った。アンティーナの背中に大きなアザがあるという話をザヤグから聞いたと……。
「ザヤグさんは、過去にアンティーナに会ったことが……?」
「いや、一度もない」
 いきなりのサシュの質問に驚く様子もなく、無表情のまま答えるザヤグ。だが出会ったばかりの仲間に対する心配にしては、かなり思いつめた様子に感じられる。
 ……長い沈黙の後、おもむろにザヤグが口を開いた。
「……俺の年齢の話をしたことがあったか?」
「いや……」
 いきなりの場違いな話題にとまどったが、サシュは黙って話の続きを待った。二人が雪を踏みしめる音だけが延々と続く……。
 ふとサシュは思い出した。世界にいる五種族……ヒューム、エルヴァーン、タルタル、ミスラ、ガルカのうち、ガルカ族だけが際立って長寿だ。他の種族の寿命は、だいたい七十~八十歳程度……一番長いエルヴァーン族でさえ百歳前後のはずだ。だがガルカ族は、二百歳を超える者さえ珍しくない……。
 さらに言えば、ガルカ族にだけ女性が存在しない。異種族間の婚姻は認められているが、生まれる子供は母親の種族として生まれることがわかっている。ガルカという種族は、〝転生〟によって続いている特別な種族なのだ。
「ミサヨ達には四十一歳と言ってるんだが……それは気安く話すためでな……本当は百四十一歳だ」
「…………」
 百四十一歳と言われてもピンと来ないサシュ。そしてやはりこのガルカ族の白魔道士が何を話そうとしているのかわからなかった。
 走りながら会話を続けていれば、いずれはザヤグの話が見えてきたのかもしれない。
 ……だがその前に、足跡の続く先がついにわかった。
 ちょうど日没の時刻がすぎ、空を流れる雪雲が一気に暗くなりはじめている……足跡を目で追えるぎりぎりの時間だった。
 ベッケルとその部下たち、そしてアンティーナの四人の足跡は、ソ・ジヤ遺跡の別の塔……中央塔の入口に続いていた。ボスディン氷河のど真ん中にある塔である。それを目にしたサシュの口から思わず言葉が漏れた。
「ここは……!」
「どうかしたのか?」
 ザヤグとの会話に集中して忘れていたことを、サシュは今になって思い出した。ここは、よく考えれば予想できた場所の一つだ……。
 なぜなら……この塔の最下層こそ……。
「……霊獣ディアボロスの棲家《すみか》だ」

 ……甘かった!
 ただ追って、アンティーナがベッケルに逆らえない理由を探り、チャンスを作って連れ出せばいい……そう漠然と考えていたサシュ。〝カーバンクルの聖剣〟の力は未知数だが、ベッケルは少なくとも霊獣ディアボロスを味方につけている。そんなところへ冒険者二人が乗り込んで何ができると言うのか……。
 しかもベッケルがディアボロスの居る最下層まで行く手段を持っているとしたら……二人だけでモンスターを倒しながら追える自信はない。しかもサシュの記憶によれば、この塔はレベル40制限……レベル50制限の東の塔よりさらに厳しいのだ。それに今回用意したレベル50制限用装備が全く役に立たなくなる。装備による能力強化を期待できないということは、通常のレベル40の力さえ発揮できないということだ……。
(くそ……!)
 サシュは自分の無力さに、思わず歯噛みした。握りしめたこぶしに力が入る……。
(守りきれないのか…………今度も……)
 蘇る過去の記憶……守りきれなかった愛する妻と子……。
 大切な人を守るために冒険者レベルを上げてきた……そんな努力を簡単に無効にしてしまうレベル制限という壁。ミサヨを救うために崖に飛び込んだ時とはわけが違う…………絶対に超えられない壁……。
 アンティーナに約束した言葉が思い出された……〝待ってろ……必ず助けるから〟……確かにそう伝えた……。

「何を考えてる? 俺は行くぞ」
 ザヤグだった。うつむいたまま状況を伝えるサシュ。
「……この塔はレベル40制限だ。そしてベッケルは、霊獣ディアボロスを味方に……」

「それがどうした?」
「……なに?」
 顔を上げるサシュ……聞き違いかと思った。
 ザヤグと目が合う。その瞳は落ち着いていて、焦っているわけでも、ヤケになっているわけでもなかった。
 ……いつの間にか雪がやんでいる……。
「レベル制限が何だ? ……お前はレベル15制限で、あのシェンを倒して見せたじゃないか。それに……」
 ザヤグはサシュから視線を外して、来た道を見据えた。
「冒険で得たのは、レベルだけじゃないだろう……? 何が言いたいかわかるか?」
「…………知識と……経験」
 ……サシュの正直な答えだった。それがあったからこそ、シェンを倒せた。
 サシュの答えを聞いて、いきなりザヤグが微笑んだ。ガルカ族の彼が微笑むのを見たのは初めてだ……優しい笑顔だった。
「お前は……ずっと一人でいたんだな……」
 いったんサシュの方を見てから、再び来た道に視線を戻すザヤグ。
「お前にはわからなくても、俺にはわかる。そして……今のお前なら、わかるんじゃないか?」
 ザヤグにつられてサシュも来た道を振り返った。「まさか……」という思いが頭をよぎる。
 空の雲が切れ、その間から漏れた月明かりが雪原の一部を明るく照らしはじめた……。
「………!!」
 サシュの目が驚きで見開かれた。見えたのは……こちらに向かってくる一団……。
 先頭にいるのは、ミサヨ、カリリエ、ジーク、カロココ、ラカ……その背後に、さらに二十人前後の鎧に身を包んだ騎士団……そこにはエグゾロッシュの姿がある。
 呆れたようにつぶやくザヤグ。
「驚いたな……ミサヨの奴、朝のうちに応援まで呼んでいやがったのか。それに早過ぎるぜ……こっちは、連中が来る前に塔の中を偵察しておきたかったんだが……」

 サシュは全身が震えるのを感じた。
 正直に言えば、自分の考えについて来ているのはミサヨくらいだと思っていた。それは、ミサヨには指輪の秘密を話してあったし、ミサヨの頭の回転が速いことはよく知っていたから……。
 だが黒き雷光団のメンバーには、そんなことは関係なかったのだ。言葉にしなくても、持っている共通認識……離れていても、繋がっている心。
 〝仲間が泣いていたら、全員で全力で助ける〟……それがシンプルなルール。
 心の内を見せなかったアンティーナが泣いているのを見た時、皆の心はすでに決まっていた……。
 さらにサシュには思い出したことがある。ラテーヌ高原の谷底からの帰り道にミサヨから聞いた話。サンドリア王国のホームポイントで泣いていたミサヨの元に、雷光団のメンバーがすぐに駆けつけたという話を……。
 ミサヨは元々、さっさとアイテムを手に入れてすぐに合流するつもりだったのだろう……何も言わなくてもザヤグにはそれがわかっていた……。
 冒険で手に入るもの……レベル、知識、経験……それらが役に立たないとは言わない。だが、もっとかけがえのないものがある……生死を共にし、苦しみも喜びも分かち合い、その先に得られるもの……。
 ミサヨが手を振っている。サシュの意識にLS会話が届いた。

 ミサヨ: マリィのことは安心して……騎士さんの一人に持って行ってもらったから
 ミサヨ: エグゾロッシュさんに託そうとしたんだけど、話を聞いたら一緒に来るって
 カリリエ: ミサヨに、してやられたって感じでしょ? 素直に認めなさいよ!

 その後もLS会話が飛び交ったが、サシュには聞こえていなかった。この人数でどこまでいけるかはわからない。ただ……この場に〝仲間〟がいてくれる……そのことが嬉しかった……。

 ~第八話完、第九話へ続く


コメント

うむー、佳境に入ってきたらかなり読み応えがあるなぁー(≧▼≦)信頼しあえる仲間かぁー いいなぁー(笑

◆ヒデタルさん
コメントありがとうございます♪
今回は色々詰め込み過ぎたかも( ̄▽ ̄;
書いていたらすごく時間がかかってしまいました。
1話分の最後なんで、ある程度仕方ないんですけどね。

カリリエが心配してるとこウルウルしてたのに
もちろん♪って・・・
♪までつくのかw
いや、別にいいんだけど・・・
そこら辺小悪魔なさしゅさんを想像してしまった

年齢はびっくりしましたw
そこまでやるとはって思いましたw

◆さとぽん
ぎく!……ぎくぎく!!
うん、私もね……以前からミサヨの「もちろん♪」の「♪」は印象が強すぎるなぁと思って悩んでたり……( ̄▽ ̄;
「もちろん」だけだと暗いイメージに取れそうだし、「もちろん!」は元気が良すぎるし……とりあえず「もちろん♪」が一番近いと思って使ってるんだけど……。
あとは「もちろんっ」くらいかなぁ……。
悩んでるんだよなぁ……。
軽く「ニヤリ」って感じを出したいんだけどね~( ̄▽ ̄;

年齢にびっくりというのは、どういう意味だろ?
種族別の寿命設定のことかな??

はい^^
寿命のことです
説明不足で申し訳ないです
なるほど・・・
♪つければニヤッとしたイメージとかふふんとか浮かぶよ^^

◆さとぽん
種族別の平均寿命の設定はよくわからないのだー。
いろいろ調べて、こんな感じかなというのを書いたw
今回書きたかったのは、ザヤグが長く生きているという伏線だけなんだけど、いきなりそれだけ書いても……と思ってね~( ̄▽ ̄;

Lv15で貝物倒した話がここに来て素晴らしい話になっている!
ザヤグめ、なかなか良い仕事してますなwww

◆ひーさん
思い出したように話に出したのがバレてるww
話の流れの通り、次の話でザヤグがちょっと目立つ予定です。
今回、カロココも少し注目したことを考えると……メインの登場人物の中でラカだけ内面に迫る予定がないなぁと気づいたり( ̄▽ ̄;
シーフの仕事も罠とかに限定しちゃって、戦闘させてないしなぁ。
自分が関西弁(大阪弁)を使えないから、あまりしゃべらせたくないというのが無意識に出てる気が……w
あまり内面を出さない方が味があるキャラってことにしておきます。
……と言いつつ、ラカの昔の恋物語とか書きたくなってきたw

「…………知識と……経験」
と「仲間」

最後にメンバーが合流シーンは、ジーンとしました。
これこそFFですね!!!

◆Leppardさん
今回、特にメンバー合流シーンは、上手く描けたか自信がなかったのでホッとしました。
頭でっかちというか……内容を詰め込みすぎて、文章の流れがいつもより悪くなっている気がするので~( ̄▽ ̄;
どうもありがとうございます!!

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。

HOME

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

最新の記事
最近のコメント
カテゴリ
月別アーカイブ

リンク
プロフィール

  • Author:笹谷周平(ささ)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

最近のトラックバック
商標/著作権等


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。