ささやかに駅メモ!

ひよっこマスターのお気楽プレイログ since 2018

駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

Cカーズ9-2

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第九話 光陰の中で (1)


 第九話 光陰の中で (2)

 天井も床も壁も……ホルトト遺跡と同様に石でできた通路。その真ん中に、アンティーナが立っていた。
 ……「来ないで」と何度もつぶやきながら。
 そこから十五メートル手前で、落ち着きを取り戻したカリリエがミサヨにそっと伝えた。
「離して……もう大丈夫だから」
 ミサヨがつかんでいた手を離すと、カリリエがアンティーナに問いかけた。
「どういうことなの? どうして行っちゃダメなの? 私たち、アンティーナを助けに来たんだよ!」
 しかしアンティーナは「来ないで」とつぶやくばかり……見るからに混乱している様子だ。
 ぼそりとラカが指摘した。
「……アレ、見てみぃ……アンティーナの足元や」
 ラカが指さす先を見て、皆が息を呑んだ。それは高さ三十~四十センチほどで、一個の四角い金属製の塊《かたまり》。材質は……おそらく鉄と思われた。
 よく見ると、その重厚な塊にアンティーナの両足が埋まっていた。少し脚を開いた状態で、スネの中ほどから下が完全に見えない。どうやったのかはわからないが、少なくとも溶けた鉄を型にはめて作ったというわけではないだろう。そんなことをすれば高熱で脚が炭化してボロボロになり、人間を固定できるはずがないからだ。逆に言えば、熱で溶かして外すこともできないということだ。例えその鍛冶技術を世界に誇るバストゥーク共和国の大工房に連れて行ったとしても、不可能である。
「アンティーナをあそこに固定して、何の意味があるのかな? まさか返してくれるつもりじゃないだろうから、何かの罠だと思うけど……」
 ミサヨが口にした疑問は的確だった。しかし答えられる者はいない……このままでは、ラチがあかなかった。
「やっぱり、近付いてみるしか……!」
 数歩踏み出したカリリエを見て、アンティーナが悲鳴を上げた。
「来ないで!! みんな爆発で死んでしまいますわ!」
 びくっと反応して、止まるカリリエ。アンティーナは両手で頭を抱えて震えている……。
「……俺が直接、アンティーナとテルで話す」
 サシュだった。
 その場の全員が、無言のまま了承した。

   *

 ……もう自由に歩くこともできない。
 ……本当に人形のように立っているだけの存在。
 ……ただ、サシュ達の侵入を防ぐためだけの……生きた爆弾……それが、私。

 〝……誓います……必ず生きて帰り、マリィを救います〟
 ミニブレイクの誓いの言葉。それに、まだ意味があるのだろうか。生きて帰って……彫像として生きろとでも?

 暗く閉ざされたアンティーナの心。
 ……そこに突然、言葉が届けられた。

 サシュ: ……アンティーナ
 アンティーナ: …………

 アンティーナは、すぐに返事ができなかった。返事をする前に、サシュの言葉が続いた。

 サシュ: 今、了承するよ。……君と主従契約を結ぼう

 アンティーナの心の暗闇に、光がほとばしった。身体の震えが止まる。

 アンティーナ: サ……シュ……?
 サシュ: 最初の命令だ。君が、ベッケルに逆らえない訳を話して

 急速に平常心を取り戻すアンティーナ。その瞳に光が戻る……。

 アンティーナ: ……はい、私のご主人様《マイマスター》

 無言のままテルを続けるサシュを囲んで、皆が焦れる心と闘っていた。サシュの表情がつらく厳しいものに変わった時。それがアンティーナの身に降りかかっている事の重大さなのだと直感する。
 ようやくサシュが口を開いた。
「なんてことを……ベッケルの奴……」
 握られたこぶしに力が入っているのがわかる。サシュが皆を見渡した。
「待たせてごめん。簡単に言うと……アンティーナの身体に爆弾が埋められている……ベッケルが好きな時にスイッチを押せる爆弾が」
「………!!」
 全員の顔色が変わった。言葉を失うカロココとラカ、エグゾロッシュと従騎士たち。怒りをあらわにして声を上げるジーク。険しい顔をさらに厳しくするザヤグ……。
「そんな……どうすればいいの? ここまで来て、アンティーナを救えないの?」
 そうつぶやくカリリエに、先ほどの威勢はない。黙ってサシュを見つめていたミサヨがようやく口にした言葉も重かった。
「あそこに固定しているのは……そういうことなの? 侵入者を防ぐ仕掛けが、アンティーナ自身だなんて……」
 サシュのテルはまだ続いていた。

 サシュ: ヨロイ蟲を取り出す方法はないのか?
 アンティーナ: どこにいるかもわかりませんわ
 アンティーナ: 身体中に穴でも開けない限りは……
 サシュ: …………

 無言になったサシュに、アンティーナが優しく言った。

 アンティーナ: ありがとうございます、ご主人様
 アンティーナ: 最後に主従契約を認めてくれて
 サシュ: ……最後?
 アンティーナ: 私、幸せですわ。もう思い残すことはありません
 アンティーナ: ベッケルに殺される前に、自分で命を断ちま…… 

「ばかやろう!!」
 いきなりのサシュの大声に、皆がびっくりした。
「強がるなよ……そんな顔で……」
 サシュの震える声を聞いて、十五メートル先のアンティーナの顔に視線が集まる。こちらを見つめるその両目からは、涙があふれていた……。

 アンティーナ: ……強がりではありませんわ
 アンティーナ: 装備と一緒にチョーカーも取られてしまいましたが
 アンティーナ: これだけは、手に握ったままです
 アンティーナ: 皆さんとの……思い出が詰まったこれと共に、私は……

 サシュの思考に、閃光が走った。

   *

 約一時間前。ソ・ジヤ遺跡・東の塔の最下層、カーバンクルの間。サシュとザヤグがエスケプの魔法で姿を消した後。
 ミサヨが魔導設備のスイッチの前に立っていた。手招きでカリリエを近くに呼ぶ。先程アンティーナが立って、〝カーバンクルの聖剣〟を作った場所だ。
「マリィの病気を治すアイテムって、どンなんだろうな? ……て言うか、この設備にまだそんなエネルギーが残ってると思うか?」
 ジークの疑問に、カロココがお手上げのジェスチャーで応じる。ラカがジロリと睨んだ。
「静かにしぃ……わかっとるんは、ミサヨだけや」
 ミサヨは、カリリエをせかしていた。
「早くして、カリリエ。すぐにサシュ達を追うんだから」
「そんなこと言ったって、ここから地上に出るだけでもずいぶん時間がかかるよ?」
 ミサヨが微笑んだ。
「それは大丈夫。まぁ、まかせてよ」
「ちゃんと説明しながらやってよ! そう約束したよね?」
 イライラするカリリエに対し、ミサヨの答えはそっけない。
「これが済んでからね」
「あー、もう! さっきのベッケルの片手剣みたいな素体にするアイテムはいらないの?」
 ぶつぶつ言いながらカリリエが横に立つと、ミサヨは構わず魔導設備の大きなスイッチを入れた。アンティーナの時と同様にヴンという起動音がうなり、いくつかの場所が青く光りだす。ただしアンティーナの時よりも、光る場所がめっきり少なくなっている。今回は掲げるようなアイテムがないので、何かが青い光に包まれるようなことはなかった。

 コォン、コォ…ン……。

 金属と石がぶつかる軽い音が二つ。
「あ」
 カリリエが声を上げた。
「十五年も一緒だったコイツが……そういえば、アンティーナの時も外れていたっけ」
 そう言って、床にすべり落ちた〝呪いの指輪〟を拾うカリリエ。ミサヨも、自分の指から外れた〝呪いの指輪〟を手に取る。
 そしてアンティーナの時と同様に、すぐに魔導設備の動きが終息した。二人の手元にあるのは、それぞれの〝呪いの指輪〟のみである。
 カリリエが慌てた。
「ちょっと……失敗じゃない? やっぱり何か素体アイテムが……」
「……いいのよ、これで。大成功♪」
 満面の笑みでその満足を示すミサヨに対し、カリリエは納得がいかない。
「だから! 説明してってば!!」
「……リチャージしたのよ、〝呪いの指輪〟を。だから、外れたわけ。エネルギーが足りて良かった」
 カリリエはさっぱり理解できないという顔をしている。そこにジークが近付いてきて尋ねた。
「よくわかンねーけど……アイテムは手に入ったのか?」
「ほら、これがそう」
 ミサヨが〝呪いの指輪〟を目の前に差し出した。
「詳しい話は、サシュ達を追いながらするから……さあ集まって、エスケプするよ!」
 そう言うと、いきなり詠唱を開始するミサヨ。
「ちょ……待って、待って!」
 カロココとラカが、慌てて駆け寄る。そして見た。
 〝呪いの指輪〟をはめる前の……。
 自信に満ちた、レベル75の自分たちのリーダーの姿を。

   *

 サシュ: ……一つ教えて
 アンティーナ: はい
 サシュ: ベッケルがどこにいるかわかる?

 アンティーナは少し考えるように言った。

 アンティーナ: この奥だとは思いますが、わからないですわ……
 アンティーナ: 少なくとも半径十メートル以内にはいないはずですが……
 サシュ: ……うん、わかった。近くにいなければいいんだ

 サシュは自分の心を落ち着けるように、一つ息を吐いた。

 サシュ: これから言うことをよく聞いて
 サシュ: これが主人として最後の命令になる
 サシュ: その後は主従契約を解除するから
 アンティーナ: ……え?

 言葉に詰まるアンティーナに構わず、サシュは最後の命令を伝えた。

 サシュ: これから言う呪文を唱えて……その後で
 サシュ: ……手に握っている〝呪いの指輪〟を指にはめるんだ
 アンティーナ: ……はい

 疑問を挟まず、従順に返事をするアンティーナ。
 サシュは、ラテーヌ高原の谷底で聞いた呪文を思い出していた。霊獣カーバンクルが唱えていた呪文。その直後に〝呪いの指輪〟は、サシュの別の指にはめられていた。そして、失われたはずの左手中指の再生……。
 ベッケルが〝呪いの指輪〟として使用していた〝カーバンクルの指輪〟には、本来の使用法が別にある。
 霊獣ディアボロスは言った。
 〝あの男メ…… 私ガ コレクションにしてイタ カーバンクルの指輪ヲ せっかく与えてやったと言うノニ…… そんなことに使ってイタノカ……!〟
 霊獣カーバンクルは確かに語った。
〝はるか古《いにしえ》の日々に母なるクリスタルを覆った闇は、ボクが身を犠牲にしただけでは完全に消すことができなかったんだ……〟
〝だから……ボクは……ボクの残った力を使って作らせたんだ……今のボクではもう作れない……指輪を……〟
 残ってしまった闇の影響であるカーバンクル・カーズ……その犠牲者を救う指輪。だが、それだけではない。冒険者のレベルを下げたり、髪を伸ばしたり、指を再生したり……それらは、ある期間に発生した事象をランダムに消去した結果だ。消去する期間も対象もランダムなのは、正式な呪文を唱えていなかったから。
 一生、指輪と付き合うことになるという欠点はあるものの、中指を再生したようにマリィの失われた手足も再生できるはずだ。
 失われたという事象を消去することで……!
 そして……アンティーナの失われた〝ヨロイ蟲のいない背中〟も……。
 全ては、呪文を正確に唱えることにかかっている。

 呪文に慣れている黒魔道士のアンティーナは、サシュに言われた古代呪文を正確に唱えた……。

 ハルタ・クレ・アヤ・デ・ラトレ(アヤ女王陛下の望むものを我に与えたまえ)
 失われた 蟲も傷もない背中を

 そして、左手薬指に指輪をはめる。
 指輪が青い光に包まれた……正確に呪文が発動した証である……。

 ……その様子をアンティーナの後方から見ている者がいた。通路の突き当たりにある吹き抜けの空間。そこにはさらに地下に降りるリフトがある。
 その壁の陰からアンティーナの背中の傷が消えていくのを見ているのは、ベッケルだった。そばには二人の部下もいる。
「なんでしょう、あの光は……聖剣の光に似ておりますな」
 部下の言葉に、ベッケルは鼻を鳴らした。
「ふん……爆弾が役に立たなくなってしまったようだな……」
 それでもベッケルの余裕は少しも変わらない。
「……だが……安心してアンティーナに近付いた時が、奴らの最後だ……くく」
「ですな」
「そうですな」
 壁の陰で陰湿な笑いが小さく響く。背中の傷が消えても、アンティーナが動けないことに変わりはなかった……。

 ~(3)へ続く


コメント

ベッケルはどこまで姑息な奴なんだーー( ̄□ ̄;)!!そういえば最近土曜日に小説更新が多いですねw(°0°)wたしか、毎週日曜日更新だったはずじゃ……

◆ヒデタルさん
コメントありがとうございます。
ベッケルはベッケルなので、彼がいきなりジェントルマンになってもらうと困るんですw
更新は確かに土曜が多くなって来ましたね。
あまり深い意味はなく……書くとすぐにUPしたくなるんです……。

すごくゾ~ォとした((((゜Д゜;))))
アンテナさん命断ちますってもう泣きそうだった
ふ~(´・ω・`)
ハラハラドキドキもんですわ

◆さとぽん
コメントありがと~^^
今回やっと正式に指輪のことが書けたので、ほっとした。
あとは出し惜しみする必要がないことばかりなので、ラストまでいっきにいくぜっ!
……たぶんw

くー・・・
安西先生・・・続きが・・・・


続きが読みたいです!v-409

◆らふぃさん
ここで続きを書かなけりゃ……俺はただの大バカヤロウだ!!

コメントありがとうございます( ̄▽ ̄)/
急がず、変に引き伸ばしたりもせず……書いていきたいなぁと思っています。
まだ決着していないことがいくつか残ってますので、また読みに来てくださいませ♪

呪いの指輪をはずす様子は、今回の話しで出てきたんですね。
前回あっさりと書かれていた理由が分かりました^^

なるほどー
と、いう指輪の謎解きでよかったです^^

◆Leppardさん
いつもコメントをありがとうございます。
そうなんです、このアンティーナのシーンのために今まで詳しく書けなかったんです……( ̄▽ ̄;
あとは、そういう制約なしで書けそうです♪

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