珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

Cカーズ9-4

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第九話 光陰の中で (1) (2) (3)


 第九話 光陰の中で (4)

 窓のない部屋の中は殺風景だったが、よく片付けられていた。ランプの光がゆらめくだけでロマンティックな雰囲気を感じるのは……。
 木でできた小さな四角いテーブルの向かいに座っている若い女性のせいだ。ヒューム族の彼女は後ろで一つにまとめた長い黒髪を美しく揺らして、背後の箱から何かを取り出した。
 それは色とりどりのフルーツが載せられた小さな丸いケーキだった。
「四十三歳のお誕生日おめでとう、ザヤグ!」
「…………」
 表情の変化が乏しいガルカ族の表情を読むことに彼女は長《た》けていた。ザヤグは確かに顔を赤らめている……それだけのことが彼女を喜ばせた。
 だが、無骨なガルカの口から出た言葉に愛想はなかった。
「……もう来るなと言ったろ、サキ」
「そうでしたかしら?」
 彼女は、持参したナイフでケーキを二つに切り分け始めた。
「このバストゥーク共和国で、今年に入ってヒューム族とガルカ族の友好関係は今まで以上に深まっていると言われている……だがそれは商務省のでっちあげた表向きの話だ」
「あ~、うっかりしていましたわ。せっかく買ったワインを、家に置いてきてしまいました!」
 がっかりするサキに、構わず話を続けるザヤグ。
「やつらは、南方・東方諸国との貿易を独占しているウィンダス連邦から、バストア海の制海権を奪うことを軍務省に進言している」
「まぁいいですわ。重要なのはやっぱりケーキですわ、ケーキ!」
「ガルカ族の戦力をあてにしているんだ……だが現実は、ガルカ族とヒューム族との確執は根深い……」
 切り分けられた半分のケーキは小さかったが、サキはそれをフォークでさらに小さく切り取ってザヤグの口に運んだ。
「ましてや……自分の娘が、ガルカ族の家を訪ねているなんて知ったら、君の父上は……」
「いいから、口をお開けなさい」
「だか……」
 開いた口に、ケーキの切れ端が押し込まれた。にっこり微笑むサキ。
「味はどうかしら? 自信作ですのよ」
「……う、……うまいよ」
 実際は十分味わう間もなく飲み込んでしまったザヤグだったが、照れるように目をそらした。
「そう! よかったですわ!」
 嬉しそうな表情の後、すぐに大きなため息をつくサキ。
「私の父は、しがない商人ですわ……政府の高官ならともかく、そんなに心配いりませんわ」
「サキ……」
 サキはテーブルをまわり込んだかと思うと、いきなりザヤグの太い腕に自分の腕を絡めた。背の高い彼女だが、ガルカ族から見れば十分小さい。
「あなたの長い人生の中で……私はあっと言う間に年老いて土に還る存在ですわ……」
 その静かな口調を聞いて、ザヤグは黙った。
 ……顔を伏せたサキが震えている。
「それまでの……ほんの少しの時間でも迷惑ですか?」
 ほんの少しというのは、二百年以上の寿命を持つガルカ族にとっての時間だ。土に還るまで……それは彼女にとって、一生の伴侶を意味している……。
 短い沈黙の後、ザヤグははっきりと言った。
「…………迷惑だ」
 ぱっと腕を離したサキが、顔を伏せたまま勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい! 私……勘違いしていたみたいです!」
 本当にごめんなさい……もう一度そう言うと、彼女は目を合わせないまま扉から走って出て行った。
 ぼろぼろに泣いているサキの顔を想像して、追いかけたい衝動をザヤグはぐっとこらえた。彼女との初めての出会いは二ヶ月前のコンシュタット高地……。
 そこでグスゲン鉱山での労働の帰り道に、レベルの低いモンスターに襲われていた商隊を仲間と助けた。その商隊長の娘がサキだった……。
 扉に背を向けると、ザヤグはベッドの枕元に隠しておいた書状を手に取った。そこには、〝徴集令状〟と書かれている……。
「俺には……お前に約束できる未来が……ないみたいなんだ……」

   *

 一ヵ月後……ザヤグは、エルシモ島西岸沖に展開するバストゥーク・タブナジア連合艦隊の戦艦に乗り込んでいた。名目上は、ウィンダス連邦が裏で糸を引く海賊たちの討伐。だが実際には、バストア海の制海権をかけたウィンダス連邦との戦争だった。
 多くは艦隊射撃戦だったが、局地的には白兵戦が頻発した。技術力に秀でたヒューム族と腕力に優れたガルカ族……ガルカ族は、ほぼ全員が前線に押し出された。
 国民の人口比で言えば、ヒューム族が六割、ガルカ族が三割、残りが一割。にも関わらず、この戦争で死亡した国民の内訳は現時点で、ヒューム族が二割、ガルカ族が七割以上を記録していた。
 その日。
 ウィンダス艦隊の魔法攻撃により燃えさかるタブナジア艦の上に、ザヤグはいた。共同戦線を張っているタブナジア侯国からの要請で、応援部隊として駆けつけたのだ。
 もうこの船はダメだな……ザヤグがそう思った時、タブナジアの艦長が叫んだ。
「おい、そこのガルカ! お前は、生き残ったバストゥークの衛生兵を連れて本体に戻れ!」
 ザヤグは甲板に伏せていた二人の衛生兵に気づき両肩にかついだ。
 そしてハッとする。
 左肩にかついだ年老いたヒューム族の男はすでに死んでいた。先ほど引き上げていったミスラ族の白兵部隊にやられたのだろう……。
 懐《ふところ》からこぼれた書状には、〝遺書〟と書かれている。出港してから家族に宛てて書いたものに違いない……。
 本国に届けようと思い、預かることにした……気の毒だが、死体をかついで行く余裕はない。敵艦からのタルタル族による魔法攻撃は執拗に続いているのだ。
 右肩にかついだ衛生兵はヒューム族の女だった。大柄で……黒く長い髪…………彼女はまだ意識があり、うつろな顔を上げた。
「……ザヤ……グ……の幻が……見えますわ……」
「………!!」
 ……サキだった。

   *

「大丈夫……歩けますわ」
 サキはそう言うと、すでに海面に浮かんでいた脱出用の小船に飛び降りた。慌ててそれに続くザヤグ。
 サキはザヤグに背を向けて座り、ザヤグは小船を戦艦につないでいたロープを外すと櫂《オール》に両手をかけた。タブナジア艦隊からは砲弾が、ウィンダス艦隊からは魔法の火の玉が、互いに交差するように頭上を飛んでいる。それらが空気を切り裂く音がうるさかった。
「どうして……まだ若い娘のお前が、こんな戦場に……」
 無口なザヤグが、珍しく自分から話しかけた。ただし視線は背中の方……首をひねって船の進行方向に向けている。サキは長い黒髪のかかった背を向けたまま……黙っていた。
 一分以上が過ぎた頃……ようやく口を開いたサキの言葉は、震えていた。
「……私の未来が……戦場に行ってしまったからですわ」
 ……今度はザヤグが黙って……やがて答えた。
「……ばかな……戦場の消耗品であるガルカ族の俺と違って、お前にはまだ未来が……」
「私の未来は……! ばかなのは、あなたの方ですわ、ザヤ……」
 サキがいきなり立ち上がった。そしてくるりとザヤグの方を向いて両腕を広げ……。
 小船が揺れた……。

 いきなり胸に飛び込んできたサキを受け止めてから、ザヤグは気づいた。遠方に……ミスラ族の白兵部隊を載せて去っていく中型の戦艦が見えた。船尾ではミスラ族の兵士六名が、こちらに向けて構えていたバトルボウを降ろしたところだった。
 手にぬるりと血の感触。
 サキの背中に、六本の太い矢が深々と突き刺さっていた。
「………サ……キ!! 俺をかばったのか!?」
 矢は肺を貫通していて、サキがむせると、口から血が垂れた。
「……こんな時……ウィンダスの白魔法があれば……ね……」
 サキの優しい声が、ヒューヒューという耳障りな声に変わっていた。
「しゃべるな! お前の気持ちは……いつだってわかっている……」
 驚いたように目を見開いたサキが、にっこりと微笑んだ。
「ガルカ族って、寿命が来ると子供に転生するんでしょう……? ヒューム族もね……身体は変わるけど、時代を経て転生する事があるんですって……」
「死なないで……くれ……サキ……」
 ザヤグの目から涙がこぼれていた。生まれて初めて流す涙だが、本人は泣いていることにさえ気づいていない。
 腕の中で……サキの命が、消えようとしている……。
「きっと見つけてね……転生した私を……約束して……幸せにするって……」
 サキの涙が頬をつたって、ザヤグの太い腕にぽつぽつと落ちる。
「見つける……何年かかっても……サキ……姿がどんなに変わっていても……」
 最後に特上の笑みを見せて……サキは、静かにその短い人生を閉じた……。

   *

「ザヤグ……ザヤグ……!!」
 もうろうとする意識の中で、自分を呼ぶ声にザヤグは気づいた。
(夢を見ていたのか……? 百年近く前の夢を……)
 ザヤグの指が、ぴくりと動く。
(いや……死んだはずだ……俺は……ソ・ジヤ遺跡の地下で……)
 しかし意識は、次第にはっきりしてきた。手足の感覚が……確かにある……。
 ゆっくりと目を開くと、そこに二人の女性の姿があった。
 一人は自分が育てた大切な娘……カリリエ。もう一人は………。
「サキ……いや、アンティーナ……」
 カリリエはザヤグに抱きついて泣き、アンティーナはそばに立って涙を流していた。アンティーナの足が埋まっていた鉄の塊《かたまり》は、いつの間にかなくなっている……。
 ザヤグには何があったのかわからない。そばでは、サシュとミサヨがほっとした顔を見せていた。
 落とされた壁……残りの仲間とは隔《へだ》たれたままだ。あったはずの血の海は消え、皆が浴びていたはずの血もきれいに消えている。それはザヤグの肉体が失われたという事象が消去された結果だった。
 服代わりにザヤグの身体に巻かれたキャンプ用の布から左手がのぞいている。その小指には〝呪いの指輪〟がはめられていた……。

 ~(5)へ続く


コメント

やはり、指輪だったか(´ω`)まさか、ここでザヤグの過去の話がでるとは思わなかったなぁw(°0°)w

ザヤグに惚れた自分がいます。
ファン投票をザヤグにしてくだsry・・・うわなにをsyやめrくぇrgtyふじk@;

こういう話を読むと、この手の話にはガルカが非常に合う。
そんな気がしてきますね・・・

サキとアンティーナ・・・うふふふふ・・・

ザヤグ・・・よかったー(^-^)
サキの一言が白魔法を学ぶきっかけになったんですね。
次はアンティーナの足枷をどうやってはずすのか?
楽しみです~

はじめまして「よくばりんく」です。v-238
http://yokubarinku.com/
こちらのサイトリンクを張りました、
RSSで更新がわかりやすいリンク集です。
事後報告で、すみません。
不都合が有る場合はBBSでお願いします。
BBSが付きました^-^;
では~失礼します。よくばりんく

PS,FFXIリンクの方です。
更新頑張ってください^^
(もしかしたら前にも来てたらごめんなさい、
多くてわからなくなっちゃって(泣)v-238

◆ヒデタルさん
ええ指輪でした……皆さんわかってたと思いますけど( ̄▽ ̄;
いきなりザヤグの昔話になったのはアンティーナの時と同じパターンですが……今回も過去の話が1話分に凝縮していてあまり深く切り込めていないかもですね~。

◆らふぃさん
ガルカは合いますね!
タルタルだとこうはいかない……くそぅw( ̄▽ ̄;
ザヤグ関連で張ってた伏線が消化できてほっとしています。
うふふふふ……がドキドキしますがww

◆Aryuさん
白魔法を学ぶきっかけに……そこまでこちらの意図を読み取っていただければ、作者として満足です~( ̄▽ ̄〃
足枷の話は、たぶん次回……かな?

◆よくばりんくさん
前回も書きましたが、うちはリンクフリーでございます。

すっっっごく感動したw
よかった~生きてて(*^_^*)
サキ=アンテナか~ほうほうw

ん?今日木曜日・・・キョロ~(・。・lll)(lll・。・)~キョロ

◆さとぽん
ありがとw
もうラストまでのアイデアが出揃っているので、あとは書く時間だけあれば更新できるのだ~……という感じ?
というか……最近たまに赤上げしているだけなので、記事にするヴァナネタがないとも言う……( ̄▽ ̄;

ザヤグの過去の話が、サキ=アンテナにつながるとは!
戦争のシーンの臨場感も伝わるようだったし
とてもとてもよかったです。

それにしても
タルタルもミスラも敵に回すと怖いな・・・

PS.
1週間に3話もアップされるとは!
【よくやった!】
また次回のお話を楽しみにしてます。

◆Leppardさん
どうもありがとうございます。
確かにこれ、タルタルとミスラが恐い感じ……!( ̄▽ ̄;
でも、この天晶暦786年のエルシモ海戦……バスの圧勝だったそうです。
ヒュームの技術力恐るべし。
次回もまったり楽しく描きたいと思っています~。

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