珈琲は一日二杯まで

笹谷の気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

Cカーズ9-5

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第九話 光陰の中で (1) (2) (3) (4)


 第九話 光陰の中で (5)

「鉄の塊は、どうやって外したんだ? 最後の指輪は俺に使ってしまったんだろう?」
 呪いの指輪で自分が蘇ったことを聞いたザヤグの質問だった。確かに今のアンティーナは二本の足でしっかりと床に立っている。
 アンティーナを壁の下から押し出した時に無理な力がかかって、彼女の二本の足が骨折したことをザヤグは感じていた。だがそれは、サシュの白魔法ケアルで容易に治療できたろう。肉体の欠損までは再生できないものの、時間をかければ治癒するような傷や骨折くらいなら、ケアルによって一瞬で回復できる。しかしあの鉄の塊を外すのに、白魔法は役に立たない……。
 衰弱状態で座ったままのガルカ族の男に、サシュが微笑んだ。
「リスクが高くて試していないから、はっきりとは言えないけど……」
 リスクと言うのは、指輪の効果がランダムに発動してしまうことだ。サシュは先に指輪のことを話した。
「呪いの指輪では、あの鉄の塊を外せなかったと思う」
 〝呪いの指輪〟は万能ではない……。
 少なくとも、指輪をはめる指が残っていなければならないだろう。壁が落ちる時にザヤグはアンティーナを押し出した……そのおかげで左腕が壁の外に出て残っていたのは、不幸中の幸いだった。
「今まで見聞きしてきた結果からすると……呪いの指輪は、その指輪をはめた肉体の変化にしか効果がない気がするんだ」
 そう考えると、指輪という形態は実に都合がいい。呪文の中に個人を特定する複雑なフレーズを含めなくても、指にはめることで対象の肉体を確定できるからだ。説明を続けるサシュ。
「あの鉄の塊はアンティーナの足を溶かして融合していたわけじゃなくて、固定していただけだった。肉体の外側にある物質にまで指輪の効果は及ばない……ザヤグさんの服まで戻らなかったように……」
「なるほど……。じゃあ、どうやってあの塊を外したんだ?」
 にやりと笑うサシュ。
「アンティーナに聞いたんだ……どうやって塊を付けられたのかを。それを聞いたら答えは簡単だった」
 ザヤグが視線を向けると、アンティーナは照れるように話した。
「ベッケルの部下の一人が、鍛冶の合成職人だったのですわ」
 アイアンインゴット四個を材料にして炎のクリスタルで合成したのが、あの鉄の塊だと言う。アンティーナがブレソール卿の別邸で頭に詰め込んでいた合成の知識の中に、そんなレシピはなかった。そもそも人体の一部を覆うように形成する合成など聞いたことがなかったし、アンティーナ自身がまともな精神状態ではなかった。だから二度と外せないものだと思い込んでいたのだが……。
「でもサシュに話したら、他の多くの合成品と同様に〝分解〟できるだろうって言うんです」
 分解とは、合成した品から元の素材の一部を復元することだ。雷のクリスタルを使う。
「しかし……サシュは錬金術合成の師範だろう? 何かの合成の師範ともなると、他の合成術にも精通しているものだとは聞くが……鍛冶合成も習得していたのか?」
「まあね……錬金術以外の合成……鍛冶に彫金に、裁縫、木工、革細工、骨細工、調理まで……全部、スキルは60ある。ご用命があれば、いつでも対応するよ」
 ヒュウと口笛を吹いたのはカリリエだった。
「サシュって……本当に合成のスペシャリストなんだねぇ!」
 スキル60とは、一つの合成スキルを100まで極めた職人が、他の合成で到達できる限界いっぱいのスキルである。照れるように顔をそむけるサシュに、構わずカリリエが言った。
「でも良かったよね、成功して。分解って、いくらスキルが高くても失敗する確率が高いって聞いたことがあるから……」
 床には、分解に成功した証のアイアンインゴットが一個、転がっている。
「いや失敗しても良かったんだ、今回の場合は。成功でも失敗でも、元のアイテムが消失するのが、〝分解〟だからね」
 なるほど! ……と感心するカリリエの反応が大げさだったので、サシュがまた照れた。実際には失敗しても消失しないことがあるのだが、もう一度トライすれば済む話である。

「さて……」
 サシュが、リフトがある吹き抜けの空間の方を向いて黙った。そちらから差し込む光が、静かにサシュの顔を照らしている……。
「俺は行くよ。ベッケルとは……決着をつけなければいけないから」
 その引き締まった表情は、これからの闘いに対する覚悟を物語っていた。
「……それは私も同じだよ、サシュ」
 ミサヨだった。ベッケルにつけられた〝呪いの指輪〟のせいで、黒き雷光団のリーダーだった彼女が仲間の役に立てず……どれだけ悔しい思いをしていたか……。ベッケルが姪のマリィを殺そうとしたことも忘れてはいない。
 そして、サシュやミサヨ以上に決着を望む者がいた。
「私も、行きますわ。これからの……人生のために……」
 サシュは振り向いて、ミサヨとアンティーナの顔を見た。ベッケルには、〝カーバンクルの聖剣〟と霊獣ディアボロスの協力がある……。
 生きて帰れる保障はどこにもない。いや……可能性は、ほぼゼロだろう……。
 大切な仲間をそんな死地へ付き合わせることが、正しいと言えるのか……?
 あるいは……。
 その答えは、彼女たちの表情にあった。決意するサシュ。
「……よし、行こう」
 自分の人生は、自分で決める……その決意をただ受け止めた。

 ……カリリエだけがとまどっていた。いつもなら真っ先に飛び出す性格の彼女が動けないのは、座りこんでいるザヤグを見捨てて行けないからだ。自分のそばを動けずにいる娘に、ザヤグが声をかけた。
「衰弱している俺は一緒に行っても邪魔なだけだ。心配するな……魔力が回復したら、デジョンでサンドリア王国に戻るよ」
「私は……」
 ザヤグが大きな腕を伸ばして、まるで幼女をあやすようにカリリエのクリーム色の髪をなでた。
「正直に言えば、お前にもアンティーナにも……いや、皆に行って欲しくはない。だが……お前はもう一人前だ……行かなければ一生後悔するとわかっている娘の背中を押すのも、親の役目だろう」
「お……父さん……」
 ザヤグに抱きついて泣くカリリエ。
 しばらくして落ち着いた彼女は、ゆっくりとザヤグから離れた。振り返ると、サシュとミサヨの並んだ背中が見える……。
「あのね……何もかも終わって帰ったら……私、すごく落ち込んでることがあると思う……。また泣いてるかもしれないけど……」
「お前が強くなる節目に関われるなら……親としてこんなに嬉しいことはないさ」
 自分の気持ちを見透かされているように感じたカリリエが、顔を赤くした。
「それから……」
 少し間をおいてから、カリリエの言葉が続いた。
「〝呪いの指輪〟が外れて、だんだん思い出してきたことがあるの。……それは、四歳で指輪をはめるまでの記憶……」
「なに?」
 ザヤグの表情が変わった。
「指輪のせいで私が失っていたのは記憶だったんだ……おかげで十五年も前のことなのに、鮮明に思い出せる」
「…………」
 動揺するザヤグに、カリリエが微笑んだ。
「孤児だった私を拾ったって……ウソだったんだね。でも大丈夫……平気だよ、私は」
 行ってくる……そう言って立ち去る娘を、ザヤグは複雑な心境で見送った。
(生きて……帰って来てくれ………他に何も望みはしない……)
 遠くでリフトが降り……小さく見えていた四人の姿が消えた……。

 ~第九話完、第十話へ続く


コメント

あははw 分解でしたか~。レシピ:雷のクリスタル、鉄の塊の足枷 NQ:アイアンインゴット HQ:スチールインゴット とかw
指輪の力では外れないという説明、よぉーくわかりました。
なるほど、確かに自分では脱げないけど鉄のブーツを履いていたようなものですもんね。
そしてカリリエの過去の話、気になる・・・
サシュさんは、ほんとに次へのつなげ方がお上手ですね~

分解・・・そうきましたか!

でも、よくよく考えればサシュさん合成全部高いんでしたねぇ・・・

続きが楽しみです!頑張ってーヽ(´ー`)ノ

分解かぁ、思いつかなかった( ̄□ ̄;)!!相変わらずサシュさんの文章構成うまいなぁw(°0°)w読みいってしまう(´ω`)

皆様、早いコメントをありがとうございます。

◆Aryuさん
あははw 分解でした~。
カリリエの過去の話……というか指輪をはめるにいたった経緯を書こう書こうと思いつつ、ここまでずっと放置してきたんですよね。
最初はジュノからウィンダスに向かう飛空艇で書こうと思っていたのに話の流れで書けずじまい……その後も、1回書こうと思った時があったけど書けず……で。
ようやくここで少し触れられました( ̄▽ ̄;

◆らふぃさん
そうきました!
拍子抜けかもと思いつつw
ここはくどくど書かずにさらっと行きたかったんですけど、結構文字数を割いちゃった気がします。
まぁでも、こんなものかなw
続きは、がんばらないけど、書きます~( ̄▽ ̄〃

◆ヒデタルさん
ありがとうございます。
私の文章は……自分でわかっているのですが、語彙が少なくて言い回しの種類も少なくて……同じ文章が何度も出てきます( ̄▽ ̄;
そのへんはもう開き直っているんですけどねw
理系人間としては、「わかりやすい」が最重要ということで( ̄▽ ̄)b
……文章センスが欲しいものです……。

なるほどー
鉄の塊は分解で取ったんだ!
ここにきて職人の技が冴えましたねw

物語はいよいよクライマックス!
お体に気をつけて、書ききって下さいw

◆Leppardさん
う……そこまで感心されると、なんだか申し訳ない気が……( ̄▽ ̄;
まったり書き上げます~w

コメントの投稿


管理者にだけOK


管理者に連絡する(メールフォーム)
※コメントを投稿できない場合にご利用ください。管理者からの返信はできません。

HOME

カウンタ

  • 閲覧/訪問数 since 2005
    hits / visits

最新の記事
最近のコメント
カテゴリ
月別アーカイブ

リンク
プロフィール

  • Author:笹谷周平(ささ)
  • 誤字、脱字、リンクミスにお気づきの場合は、コメント欄にてお知らせいただけると助かります。

最近のトラックバック
商標/著作権等