珈琲は一日二杯まで

あずの気が向いたときに気が向いたことを書く場所です

ゲームのことを書いたり、絵を描いたり、漫画を描いたり、小説を書いたり、適当に何でもありな趣味のブログです。

Cカーズ10-4

 
FFXI小説「カーバンクル・カーズ」
 目次
 登場人物紹介
 第一話 白絹の少女 (1) (2) (3) (4)
 第二話 罠 (1) (2)
 第三話 黒き雷光団 (1) (2) (3) (4)
 第四話 下層の歌姫 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 第五話 刺客の価値 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第六話 依頼と報酬 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第七話 月虹の契約 (1) (2) (3) (4) (5)
 第八話 裏切り人形 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 第九話 光陰の中で (1) (2) (3) (4) (5)
 第十話 決着 (1) (2) (3)


 第十話 決着 (4)

「くっ……!!」
 カリリエが放った神聖魔法フラッシュが、ベッケルの視界を一瞬白く染めた。同時にミサヨによる暗黒魔法スタンが、ベッケルの動きを止めた。
 いずれも、詠唱時間は〇・五秒……世界で最短の魔法である。
 サシュの足元に美しい楕円形の穴が斜めに開いていた。ベッケルの聖剣による攻撃が外れたのだ。
「小賢《こざか》しいわ!」
 叫ぶベッケルがもう一度サシュを見据えて、剣を構えようとした瞬間。
 ベッケルの意識が暗転《ブラックアウト》した……。
(アンティーナの弱体魔法……スリプルIIか……だが……)
 立ったまま意識を失ったベッケルの首で揺れたのは、〝砂の護符〟。氷、土、闇の三つの系統に属する魔法に耐性を発揮する希少アイテムである。それが霊獣ディアボロスの力で強化されていることを、サシュ達は知らない……。
 ミサヨのバインドが抵抗《レジスト》されるのを見た時。ベッケルが魔法耐性アイテムを持っている事をサシュは疑っていた。バインドは氷属性、フラッシュは光属性、スタンは雷属性、スリプルは闇属性の魔法である。最初にかけたフラッシュとスタンの魔法は、どちらかが効けばそれで良かった。砂の護符は光にも雷にも耐性はなく、結果的に両方が効果を発揮した。
 サシュ達にとって、絶対にレジストされてはならなかったのがスリプルII。これが効かなければ、聖剣の攻撃で誰かが死んでいただろう。
 だから……レベル90相当のアンティーナが、スリプルIIを担当した。レジスト率を大幅に下げるアビリティ〝精霊の印〟まで発動させて。
 間違いなく、スリプルIIは効いた。ベッケルの動きは止まり、サシュ達四人は安堵の息を漏らした。必ず効くはずのスリプルIIだったが、それでも不安だったのだ。
 互いの目を見て、心の準備を確認する。
「決めよう」
 サシュの合図と共に、サシュ、ミサヨ、アンティーナがそれぞれ強力な攻撃魔法の詠唱を始め……。
 もう少しで詠唱が終わるというその時。
 ……ベッケルの瞳が、動いた。

 レベル90のアンティーナが、精霊の印まで使って放ったスリプルIIだった。にもかかわらず……ベッケルはクォーターレジストを発揮した。
 きっかり九十秒間眠りに落ちているはずだったベッケルが……わずか二十二・五秒で目覚めたのだ。カリリエが再びフラッシュを放つより早く……ベッケルによる精神支配攻撃が、わずか〇・三秒で四人を襲った。
(ぐ……)
 サシュの目に浮かんだのは、夫の目を直視できないでいる愛する妻の姿。告白されて知ったのは……まもなく一歳になる娘メイルルが、自分の子ではないという事実……。
 一瞬の幻影を振り払う。詠唱は中断していない……完成するまで、あと一秒。
 ベッケルが聖剣を振るのが見えた。
(お前は何もわかっちゃいない、ベッケル……)
 聖剣の先端が青く光る。
(それでも俺は……二人を愛していた……)

 ギカッという鼓膜をつんざく放電音と、網膜を焼く眩しい雷光が同時だった。サシュの雷系精霊魔法サンダガIIIが、長い詠唱を終えてついに発動したのだ。
 同時に、サシュの身体が、聖剣から噴き出す青いエネルギーの奔流に飲み込まれた。
(お前と、俺の……運だめしだ………ベッケル!)
 世界が、光に包まれた……。

   *

 ピキ……ィィィン……!
 不吉な高音と共に、天文泉に細い光が走った。眉間にしわを寄せ、黒い瞳を細めたのは、ウィンダス連邦の統治者・星の神子である。
(この方角は……)
 ここはウィンダス連邦・石の区にそびえる星の大樹の中。そこに築かれている天の塔の最上階で、神子が天文泉を覗きこんでいた。
 頭に被った白いフードの中から神子の表情を読み取ったズババが、口を開き……再び閉じた。星詠み中の神子に話しかけることは、固く禁じられている。
「ズババ……」
 神子の方から声がかけられた。
「はい」
「……サシュカシュが向かったのは、サンドリア王国でしたね?」
 神子はまだ半トランス状態にある。長話は彼女の身体に負担をかけるだけだ。ズババは、素直に質問に答えることにした。
「いえ……ラングモント峠を抜け……ボスディン氷河に入ったという情報が入っております」
「……そうですか」
 そのボスディン氷河の地で……大きな星が一つ、流れて消えたのを神子は見た。
(信じています、サシュカシュ……)
 指を組んだ両手に額を当てる神子。
(どうか……ご無事で……)

   *

「マリィ……!!」
「やった!!」
 リタが泣きながらマリィに抱きつき、その横でアイルベーシュが飛び上がって喜びを表現した。
 リタ家に届けられた一個の指輪。それを運んだエグゾロッシュの部下も、胸を撫で下ろしている。
「う……あ…………」
 震えながら、再生した自分の左手を顔に寄せるマルガレーテ。もちろん右脚も取り戻している。
「あぁ……あ………」
 言葉にならないまま、少女のダークブラウンの瞳から涙が溢れていた。
(ありがとう……サシュさん……このご恩は、一生…………)

   *

「おい、ちゃんと前衛と後衛の歌い分けをしろよな、基本だぞ!!」
「ごめん、ごめん」
 夜の砂丘を、慌てて走り回るミスラ族の少女はウイカだ。
(サシュさん……今頃元気かなぁ。いつか……一緒にパーティを組みたいなぁ)
「だーっ!! だから俺はこんな子供とパーティを組むのは、嫌だったんだ!」
 メンバーの怒号にも少女は怯《ひる》まない。
「何よ、ちょっと〝ララバイ〟が遅れたくらいで! 私はね……超才能溢れる、歌姫の娘なんだから!!」
「また、それかよ……」
(あっと言う間にレベルを上げて、ミサヨ達の役に立てるようになるんだ!)

   *

「オジーチャン!! 新入りがどこに行ったか、知ってるんだろ!?」
 ホノイゴモイ邸に、スターオニオンズ団の子供たちが集まって来ていた。
「な、なんだ、こんな夜中に! まったく、お前たちは非常識な……」
「ピチチちゃんが見たんだ! 新入りが、ヒゲのオッチャンに殺されるのを!」
 ホノイゴモイが女の子を睨み付けた。
「見たって何を……」
「夢で見たの……。サシュのお兄ちゃんが、青い光に飲み込まれて……」
 老人が溜め息をついた。それを見た子供たちが、黙ってホノイゴモイの次のセリフを待つ。
「……大丈夫だ。アイツは死なん」
 ええ~!? と、声を上げる子供たち。
「なんだよそれ、オトナっていいかげんだ!」
「いいかげんだ!」
 そうじゃない……と、ホノイゴモイは子供たちをなだめた。
「アイツはな……最強の御守りを持って行ったんだ」
「サイキョウノオマモリ?」
 ゆっくりとソファに腰を降ろすと、目を細めるホノイゴモイ。
(あいつに渡した〝ソ・ジヤ識別札〟……あれは……)
 子供たちは、ポカンとしている。
(古《いにしえ》の神子ミラテテ様一行が初めて霊獣ディアボロスと対峙し、生きて戻られた時に持っていらしたという品だ……これ以上の御守りがあるものか)
「そうだ……裏で売れば、数億ギルは下らない超高価アイテムを持たせてやったんだ。死ぬわけがなかろう!」
「ス……スウオクギル??」
 老人が再び溜め息をついた。
「……もういいから帰れ、お前たち」

   *

「サシュ!!」
「サシュ……!」
 ミサヨが叫んだ。カリリエとアンティーナが叫んだ。
 サシュが放ったサンダガIIIは、ベッケルによる聖剣の一振りとほとんど同時だった。聖剣から流れた青いエネルギーは、確かにサシュの小さな身体に命中したように見えた。
 ソ・ジヤ遺跡・中央塔の最下層にある霊獣ディアボロスの間。赤い光に満たされたその部屋で……サシュがしっかりと立っていた。
「賭けに……勝った……か」
 緊張が解けて、ヒザをつくサシュ。その近くに、三人の仲間が駆け寄った。
 サシュの身を守ったもの。それはもちろん、ホノイゴモイが御守りと呼んだ〝ソ・ジヤ識別札〟の奇跡でもなければ、〝呪いの指輪〟が都合の良い効果を発揮したわけでもない。
 サシュが最初にベッケルの気を引くために唱えた白魔法……明滅《ブリンク》の効果だった。ブリンクは二回まで、あらゆる攻撃から術者の身を守る。ただし、効果の発動は百パーセントではない……ベッケルの攻撃をまともに受けるか、完全に無効化するか……その決定はランダム……運まかせなのである。
「ベッケルは……?」
 顔を上げるサシュに、ミサヨが答えた。
「死んだよ……サシュのサンダガIIIと……私のサンダーIV、それに……アンティーナのバーストIIの魔法で」
「そうか……」
 ベッケルがスリプルIIをある程度レジストすることは想定していた。カーバンクルの聖剣が範囲攻撃ではなく、単体を攻撃するアイテム……しかも効果時間が一瞬であることがわかった時点で、今回の作戦を思いついた。
 ベッケルは、最初の攻撃で誰かを倒しておくべきだったのだ。その前に聖剣の力を晒してしまったことが、奴の敗因だ……サシュはそう分析していた。

「まさか……」
 突然緊張した声を上げたのは、カリリエだった。その目は、ベッケルが死んでいるはずの方向を見据え、身体は震えている。
「そ……んな…………」
 アンティーナも目を見開いて、その場に固まっていた。二人の視線の先を、サシュとミサヨが確かめた……その場には……。
「ふ……ざけやがって……俺様を……誰だと………」
 炭のように黒焦げになっているベッケルの身体が、ヨロヨロと立ち上がっていた。カーバンクルの聖剣だけが、何事もなかったように美しい刀身を輝かせている……。
「貴様ら……全員……死ぬがいい………っ!!」
 ベッケルが、デタラメに聖剣を振り回した。青いエネルギーが描く直線が、あらゆる角度で明滅した。明滅のたびに、壁のどこかに深い穴が穿《うが》たれる。
 迸《ほとばし》るエネルギーが、いきなりサシュの頭上を撫でた。背後の壁に十数個目の穴があく……滅茶苦茶だった。
「やば……い……」
 サシュがそうつぶやいた時……。
 聖剣の切っ先が、その場を動けずにいるサシュ達を捉えていた……。

 ~(5)へ続く


コメント

更新はやっw(°0°)wベッケルめしぶといな><

◆ヒデタルさん
更新が早いのは、私自身が続きを早く知りたくて、かもです( ̄▽ ̄;
実はもっとあっさり決着をつけるつもりだったんですが……思ったよりベッケルがしぶとくて、私も困っています。
聖剣は、その力を見ないまま終わるはずだったのになぁ……ベッケルの馬鹿野郎~。

え~まだ生きてるの~?
なんかくやしいよ~o(`ω´*)o

ちょwさしゅさん書いたのに馬鹿野郎は・・・・・・・・・

◆さとぽん
次回で第10話が完結しそう。
そしたら、いよいよ最終話……これはエピローグみたいなものなので、1、2回分で終わる予定。

いや、だって、ベッケルが勝手に聖剣は使うわ、蘇るわで……ふぅ( ̄▽ ̄;

ベッケルってターミネーターみたい・・・
しぶといw

ベッケルの攻撃がディアボロスに当たって、
怒ったディアボロスがベッケルを闇の世界に飛ばせばいいのにw

◆Leppardさん
ぎくっ。
そんな、先を読んじゃいけませんってΣ( ̄▽ ̄;
というのは、冗談のようなそうでもないようなw

はじめまして!
いつも、たるきちさんのところからオジャマしては、拝見してました。
「カーバンクル・カーズ」、すごいですね。
引き込まれるように一気に読んでしまいました。
次の展開が楽しみで楽しみで、一日何回もここを見て、読み返してしまうありさまです。(^_^;)

登場人物が勝手に動き出すなんて、すごい!
世界が出来上がってるんですね。
どんなラストシーンが待ってるのか・・・楽しみにしています。

◆izumiさん
はじめまして!
こんな素人小説に過分なお褒めの言葉をくださり、ありがとうございます!!
照れを抑えて作者が楽しみ、書きたいように書いていますが、よろしければ是非最後までお付き合いくださいませ( ̄▽ ̄〃

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