ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

【旧版】竜連れ3-1

 
「竜を連れた魔法使い」 目次

第一話 沈まない太陽 (1) (2) (3)
第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)




第三話 竜たちの覚醒 (1)


青く見える空に、強く輝く光点が浮かんでいる。

「ピージが、もうあんなに高く……」

マティの呟(つぶや)きにカイリが目を細めた。

「フェアリ族は、アレをピージと呼んでるの?」

見上げた空の光点は、じっと動かないように見える。
だが“ピージ”と呼ばれた光点は、実際にはゆっくりと空を横断しており。
一度沈んでから、24時間後には元の位置に戻ってくる。

「いえ、フェアリ族とエルフ族はアレを“精霊の騎士(エレメンタルナイト)”と呼んでいます。“ピージ”という名前は、マスターが教えてくれました」

マティがマスターと呼んだのは、過去に出会ってきたカイ・リューベンスフィアのことだ。
自分のことではないので、カイリもその呼び方まで干渉する気はない。

「そっか……」


太陽が沈まないこの世界で。
ピージが地平線から顔を出し、空を横断して太陽がある西の空に沈み、再び東の地平線から顔を出すまでの時間。
この世界の住人は、それを「1日」と呼んでいる。
そしてマティがピージと言ったのは、正確には“P.G.”のことだ。


カイリとマティは、雑木林の木陰で休憩をとっていた。
ドライアードは、どこかへ姿を消している。

目の前には屋敷の焼け跡があり、そこから掘り出した大きな箱が、陽の光を浴びて光っている。

カイリは「自分から出てきてもらおう」と言った。
それは本に書いてあった方法ではない。
試して何が起こるのか……カイリ自身もわからないので、心の準備をする時間がほしかったのだ。

休憩している間に、マティがレベル2の魔法“産触導潤(キュア)”で擦り傷を治してくれた。
屋敷から飛び出した時に負った軽い傷である……魔法とは、便利なものだ。


いきなり地面がぽこりと盛り上がって、木の芽が顔を出した。
その陰からドライアードが姿を見せて、カイリに話しかけた。

「コレデショウカ……」

地面から木の枝が伸びてきて、そこに白いローブやズボンがかかっている。

「うん、ありがとう。さすがカイ・リューベンスフィアが身につけていた装備……あの炎に耐えたか」

朝からTシャツとトランクスだけの姿だったカイリは、服を身につけ、最後に白いローブをはおった。
ふと気づくと、マティの瞳がうるうるとしている。
彼女が過去のカイ・リューベンスフィアとの思い出に浸っていることは間違いない。

「思い出させて悪いけど……この装備は俺が使わせてもらうよ」

「もちろんです!」

即答するマティ。
カイリが立ちあがった。

「さて……」

箱に向かって歩みを進める。

「出てきてもらいますか」



***



直径三十メートルはあろう巨大な縦穴の壁に足場が組まれ、地下に向かって伸びているハシゴのような狭い通路。
そこを、地下からたくさんの作業員が駆け上って来る。
木で組まれているので、人が通ると軋(きし)んで揺れる。

地上では重装備の騎士隊6名が集められていた。

「エステル様ご到着まで待機!」

「何があったんだ、ラウェル!?」

「レイウルフ様!」

ラウェルと呼ばれたあごひげの隊長がレイウルフに近寄り、耳打ちした。

「例の“箱”に、突然亀裂が入ったらしいのです。そこから白いガスが噴き出したために、作業員がパニックになり……」

それを聞いたレイウルフの顔色が変わった。

「死者が出たのか?」

「いえ、全員無事です」

ラウェルの言葉にホッとするレイウルフ。

「そうか……学者連中も呼んだ方がいいな」

ラウェルはハッとなり、「急いで先生方をお呼びしろ」と部下に指示を出した。


「レイウルフ様、危険です!」

「大丈夫だ」

縦穴の縁に歩み寄ったレイウルフが、通路の入口から下を覗きこんでいた。
穴の底には濃霧のような白いガスがたゆたっており、何も見えない。

「ふむ……」

アゴに手をあてると、何かを感じたレイウルフが近くにいたラウェルの部下に指示を出した。

「防寒具を持ってきてくれ」

「何を……」

いぶかしがるラウェルにレイウルフが微笑んだ。

「エステル様がいらっしゃる前に、もう少し情報を得ておく……下は寒そうだ」

「そのような危険な任務は、我々が……!」

レイウルフは「いいんだ」と言った。

「君たちはエステル様をお守りしながら、後から来てくれ」

部下から厚手のフード突きローブを受け取ると、彼は躊躇せず足場の悪い通路を駆け下りて行った……。



***



「マス……カイリ……、出てきてもらうって、どうやって?」

マティがふわふわとカイリの横を飛びながら話しかけてきた。
カイリは表情を変えずに答えた。

「本当は箱の中に入って、ハードスイッチを操作して箱を起動させてから、卵を孵化させるのが手順なんだ……」

「???」

マティは理解できないようだ。

「箱を起動させないままで、卵を孵化させる役名(コマンド)を唱えてみようと思ってね」

「…………」

くすりと笑うカイリ。

「俺もどうなるかわからないよ。……でも、“絶対に”必要なんだ」

マティがカイリの表情を見た。
いつの間にか真剣な顔になっている。
少し恐い顔……燐射火囲包(ファイアボール)度等(ブースト)3を放った時に見せた顔だ。

「出てきてもらわなければ、この世界を救えない」

カイリが両腕を伸ばして、箱の壁に両方の手のひらをぴたりと当てた。

「マティは下がってて」

「いえ、そばに居ます」

マティがカイリの右肩にくっつくように寄り添った。
カイリはそれ以上何も言わなかった。


そして始まる呪文の詠唱……。
この時、マティは初めて事の大きさを直感的に感じ取った。

カイリが口にした呪文の汎数(レベル)が、ふざけているのではないかと思えるくらい高い数字だったからだ。


 高目移行(システムアップ)・汎数(レベル)13……

 通模(インプット)・要俳(キーワード)……

 招くエネルギー……願う心……自己をもって……世界を開く……

 転配(コンパイル)……

 役名(コマンド)……


「召雛子(バース)……!」



その瞬間、地面が円を描いて光る。
マティがカイリの肩にしがみつく。

ピシッという乾いた短い音が聞こえた気がした。


箱の壁に当てていた手のひらを、カイリが急に離した。

「……やばい」

それだけ言うと、マティをつかんで箱に背を向けて走り出すカイリ。
それから急に足を止めて振り返った。

「ドライアード、来い!」

するりと地面から木の根が伸びたかと思うと、カイリの左肩にドライアードが姿を見せた。

はるか前方で、箱の表面が赤色に変色しはじめている。
その周囲の空気が蜃気楼のように揺れている。
内側からの熱のせいだ。
急激な温度上昇を感じて、カイリは手のひらを離したのだ。

カイリが“離位置(テレポート)”の呪文を唱えた。

(間に合うか……!?)


呪文を完成させた時。

オレンジ色にまで変色した箱が、どろりと崩れるのが見えた……。



***



離位置(テレポート)で跳べるのは、術者が訪れたことがある場所だけ。
カイリ、マティ、ドライアードの三人は、深い森の中にいた。

目の前には直径十メートル程度の小さな池。
周囲の木々で空が丸く切り取られている。

そこは、カイリが初めてマティと出会った場所だった。


カイリに振り回され、意識が遠のきかけていたマティが、丸い空を見上げて固まった。

「カイリ……あれは………」

「ああ……」

カイリも空を見上げていた。
青空を流れる雲を背景にして、一本の光の柱が上空に伸びている。

光はゆっくりと薄れ、やがて消えた……。
だが確かにそこに光の柱があったことを示すように、雲が乱れている。

「大した威力だ……だが……あれでもまだ足りない……」

カイリの言葉は、わからないことばかりだとマティは思った。

「カイリは……この世界がどのように滅びるか、知っているのですか?」

「ああ……間違いなくあと三年で、この世界は滅びる……」

空を見上げたままカイリは言った。

「戻ろう……生まれた子は、俺達が世話をし、教育しなければならない」

「子……?」

ようやくカイリがマティの方を見た。

「そうだ……放っておいたら、この世界の脅威になってしまう。でも……ちゃんと育てれば、この世界を救う鍵になる……唯一の……」

「…………」

黙りこんだマティに、カイリが微笑んだ。

「協力してくれ、マティ。世界を救えるのは俺たちだけだ」

「……はい!」

カイリが真っ直ぐに見つめる瞳には、嘘も偽善もない。
マティの頬が赤らんでいた。

「あの……」

マティが何かを思い出したように口を開いた。

「ん?」

「ドライアードは、どこに……」

「ああ!」

カイリが慌てて自分の左肩を確認する。
マティからは死角になっているそこに、ドライアードはいた。
カイリがくすりと笑った。

「どうしました?」

回りこむマティ。
そこには、すこやかな顔で眠っているドライアードの姿があった。

「おそらくこの一日二日、休みなく働かされていたんだろうな」

カイリの言葉にマティが頷いた。



(2)へ続く

コメント

おおお
箱の中身は卵だったのか!

これがタイトルにつながるんですね!

うーん。別の場所にも、似たような箱があり
これから、いよいよ物語が動き出す描写がよかったです^^

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こんにちわ~
ずーーっとリンクはるのわすれてましたw
はらせていただきました~w

カイリは炎、エルフは氷・・・この先どうなるのかなー
そして竜?がいないと救えない世界。
どうして、どんな風に世界が終わってしまうのか
この物語の核にして最大の謎がぁああああ

その日ドライアードをこき使ってたのはカイリじゃん!
と、つっこんでみるw

◆Leppardさん
ありがとうございます^^
そうやって褒められると、照れちゃいますw

◆むげつさん
こんにちはー。
リンクありがとうございます~^^

◆Aryuさん
そうそう最後はカイリが使ってます。
それは書いていて私も思いました( ̄▽ ̄;

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