ささやかに駅メモ!

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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

【旧版】竜連れ4-1

 
「竜を連れた魔法使い」 目次

第一話 沈まない太陽 (1) (2) (3)
第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)




第四話 エルフの族長 (1)


「エステルが、行方不明ですって!?」

宙に浮いたマティの小さな身体から大きな声が響いた。
その声の高さにカイリは驚いたが、マティと話していたエルフ族の神官はもっと驚いたようだ。

「テクニティファ様、どうかお静かに……」

おどおどして周囲を見回す白髪の老神官の様子は気の毒なほどだ。
筒状の大きな帽子がずり落ちそうになり、慌てて直している。

ここはエルフ族の大規模な集落の中心にある大きな神殿である。
周囲を森に囲まれ、巨木が組まれた造りは、神殿というよりも神社のイメージに近いかも知れない。
ただスケールが大きく、カイリたちがいる謁見の間だけで運動場くらいの広さがある。

この広間に離位置(テレポート)で突然姿を現したカイリたちを見ても、老神官はそれほど驚かなかった。
フェアリ族のマティとは顔見知りのようだ。

「ごめんなさい……」

口に手を当てて素直に謝るテクニティファを見て、老神官はかえって恐縮した。

「いえいえ、私の申し上げ方が率直すぎました。それに……公にはなっておりませんが、すでに皆が知っていることでございます……」

「…………」

だだっ広い謁見の間には、老神官とマティ、カイリの三人しかいない。
採光と通気が工夫された神殿は、明るくて涼やかだ。
老神官とマティが黙ると、急に平和な静けさが戻ってくる。

……再びマティが口を開いた。

「……それでは、あなたが族長の代理を?」

謁見の間では、小さな声もよく響いた。
そういう造りになっているのだろう。

老神官が大きく手を振った。

「滅相もございません。先ほど外出されましたが、神殿騎士団団長のサルネイア様が代理を……」

カイリがその名前を思い出した時だった。

静かな謁見の間に、大きな泣き声が突然響いたのだ。

「…………!」

オギャアオギャアという不満のこもったその泣き声は、赤ん坊に違いなかった。
静かだった謁見の間が、大音響に包まれている。

「あ……赤子を、お連れでしたか?」

老神官が、カイリの背後の床に置かれたバスケットを見つめていた。

「…………」

内心驚いたのは、老神官よりもカイリとマティの方だったろう。
そこに人間の赤ん坊を入れた覚えはない。

カイリがしゃがみながら、バスケットにかかっている白い布に手をかけようとした時。

泣き声がピタリと止んだ。

構わず白い布を剥ぎ取るカイリ。

「!」

「どうしたの、カイリ!?」

慌てると、タメ口になるマティ。
早く普段もタメ口になればいいのにと思いながら、カイリはつぶやいた。

「“箱”を作動させずに、無理矢理出てきてもらったのがいけなかったかな……」

バスケットの中には竜のスザクが丸まって入っていた。

ただし、最初に見た時よりも身体が大きく、猫くらいのサイズになっている。
バスケット一杯に詰まって苦しそうだ。

「……成長してる!」

驚いた声を上げたのはマティだった。
遠慮がちに覗き込んだ老神官も目を見開いている。

「この生き物は何ですかな……?今の泣き声は、この……?」

「今の泣き声は初めて聞きましたが……そうだと思います。これは“竜”という生き物で、名をスザクと言います」

カイリは最初に名乗って以来、初めて老神官と会話した。
スザクは“生き物”とは厳密には違うが、それを説明しても仕方がないことだ。

(狭くて、苦しくなって泣いたんだな……)

バスケットからスザクを出して、抱き上げるカイリ。
その頬を、スザクの細い舌がぺろぺろと舐めた。
……出してもらえたのが、よほど嬉しかったのだろう。

その様子を見て、老神官はスザクとカイリに興味を持ったようだ。

「私、三五〇歳を超えた老いぼれでございますが、かような生き物のことは話に聞いたことさえございません」

「そうかも知れませんね……珍しい生き物ですから」

そんなことより……と、マティが話を戻した。

「サルネイアって、あの……ブラウンの髪の……」

カイリも思い出していた。
カイ・リューベンスフィアの屋敷が燃えている時に、雑木林から出てきたエルフ族の若い女。
その印象は、“つっぱり娘”だった。

「おぉ、テクニティファ様はご存知でしたか。左様でございます……」

老神官はにっこりと微笑んだが、マティの美しい顔は不機嫌だった。

「アイツは、『エステルがくたばった後のエルフ族は、私が締めるんだ』って、言ったのよ!?」

興奮するマティの言葉は言いすぎかもしれないと思ったが、カイリは止めなかった。
老神官は、こんなマティの振る舞いに慣れているようだ。
動じずにゆっくりと答えた。

「サルネイア様は庶民の出でありながら、エステル様より神殿騎士団団長を任されている立派なお方でございます」

「それにしては、族長に対する礼儀が足りないんじゃないのっ!?」

その時だった。

突然後頭部をつつかれてびっくりするマティ。
振り向くと、カイリと目が合った。

「……この人にアタっても仕方ないだろ」

「……! そうだけど……」

老神官は、マティとこんなやり取りをするカイリにますます興味を抱いている。
フェアリ族は、あらゆる種族から畏敬の念で見られる特別な種族であることをカイリは知らない。
超長寿のフェアリ族は昔から、危機に陥った他種族に様々な知恵と知識をもたらしてきた特別な種族なのである。

老神官が何かを思い出したように声を上げた。

「もしや、あなた様は……そうです間違いありませんな。そろそろ百年目のハズです!」

老神官の顔が輝いている。

「ご無礼致しました!まさか、カイ・リューベンスフィア様とは思い至らず、この老いぼれ……」

「い……いいんだ、やめてくれ!」

うやうやしく扱われることに慣れていないカイリは面食らった。
森であった金髪の男も、サルネイアという娘も、エルフ族はことごとくカイ・リューベンスフィアに敵対しているように感じていた。
だがこの老神官の態度は、マティに対するのと同じか、それ以上に思える。

「俺は、まだ、何もしちゃいな……していませんから」

「いえいえ、そういうことでございましたら……」

老神官は、再び周囲を見回した。
改めてこの三人以外に誰もいないことを確認する。

「テクニティファ様と二人だけになったら、お伝えしようと思っておりましたが……」

誰もいないとわかっていながら小声になってしまうのは、声が反響するこの部屋の造りのせいばかりではないだろう。
マティも何かを感じ取って、二人に顔を寄せてきた。

老神官は、とっておきの秘密を打ち明けるように、声を落とした。

「このことは、ほんの一部の者しか知らないことですが……」


果たして、老神官は真実を語った。

族長のエステルは、姿を隠しているだけであること。

その目的は“世界を救うため”であること。

民に不安を与えず、サルネイアが族長を代行しやすいように“行方不明”としていること。

そして……。


「エステル様は、“竜”を発見され、発掘されているのです……世界を救うために」

「あんた、さっき、竜のことは話に聞いたこともないって……!」

カイリは開いた口が塞がらなかった。
「極秘事項ですから」と、あっさり答える老神官。
マティは、エステルの無事を聞いてほっとしている。

老神官は、愛想良くカイリに微笑んで頭を下げた。

「私の名は、ソロンと申します。前族長の時代から神官を務めておる者でございます」

ソロンはエステルの行き先まで教えてくれた。



***



別れ際に、カイリはお礼の言葉を忘れなかった。

「ありがとうございました、ソロンさん。食事までご馳走になって」

マティはため息をついた。

「あなたが族長代理だったら良かったのに」

ソロンは慌てたように手を振った。

「滅相もございません。老いぼれは、ただ時の流れを見つめるのみでございます」

そして最後にこう付け加えて頭を下げた。


「……どうか、エステル様をよろしくお願いいたします」


その言葉に違和感を覚えるカイリ。
エルフ族の族長が、助けを必要としているように聞こえたからだ。

ソロンの思慮深い瞳は、ただ微笑んでいる……。

この老人は、まだ明かしていない真実を胸に秘めている……。
それを尋ねてみたいとカイリが思った時。

マティの呪文が完成していた。

「離位置(テレポート)……!」



(2)へ続く

コメント

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◆秘密さん
ご指摘どうもありがとうございます!
完全に誤字ですね~( ̄▽ ̄;
こっそり修正しておきましたっ。

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