ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに萌えキャラ公式活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ5-3

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2)


 第五話 レッド・グー (3)

 「いくぞ!」と短く叫んで、ドワーフ族族長が鉄の板から飛び降りた。上空五千メートルからのダイビング。同時に千五百の兵士が自然落下を開始した。ビャッコによる補助は何もない。ヒューマン族よりやや体力に劣るエルフ族とは逆に、ドワーフ族の頑丈さは桁外れだ。事実、数分後には、彼らが何事もなかったように地上で戦闘態勢に入ることになる。
 ――よろしいのですか?
 耳元で囁《ささや》かれるように聞こえた声に、リュシアスが視線を上げた。スーツ姿のビャッコが眼鏡越しの理知的な瞳で見据えている。気体を操る彼女が、リュシアスの耳の中の空気を直接震わせて声にしているのだ。
「……族長命令は、絶対だ」
 リュシアスの声に、サルネイアが一瞬振り返った。彼女はリュシアスの独り言だと思ったのだろう。気に止めず、鼻を鳴らした。
「お前らも行くんだろう? 私はここで消えるよ」
 〈離位置《テレポート》〉で消えるサルネイア。今頃は別の場所で、その原子構成情報を元に、ナノマシンによって彼女の身体が再構成されているだろう。それを確認して、ビャッコが鉄板の上をゆっくりと歩き、リュシアスに近づいた。
「初めてお会いした時の、私の言葉を覚えていらっしゃいますか?」
「…………」
 黙ったままのリュシアスに、ビャッコが言葉を重ねた。
「〝あなたのために、何でもいたしましょう〟――その誓約は、あなたが死ぬまで有効です」
 リュシアスの脳裏に、ビャッコとの出会いが蘇った。

 先代カイ・リューベンスフィア、フェアリ族のテクニティファ・マティ・マヌファ、エルフ族のエステルとソロン……彼らとリュシアスの〝世界を救う旅〟が、先代カイの死によって失敗に終わった後。ドワーフ族が直面していたのは、鉄資源の枯渇であった。地下の鉄資源は彼らの生活と文化に欠かせないものだが、それをあと百年程度で使いきってしまう……そのことに気づいたのがリュシアスだった。
 当時の族長も今のレブリオスと同じく、力でのし上がった剛の者だ。資源が眠る土地は、エルフ族に勝利すれば手に入る……それがリュシアスの懸念に対する族長の返事だった。そもそも千年以上、大昔の先祖が発見した巨大な鉄鉱脈を消費することしか知らない世代である。その鉱脈が枯渇するという言葉を信じる者はほとんどいなかった。多くの者が、大地の恵みである鉄鉱脈は永遠のものだと信じているのだ。いつしかリュシアスは、〝変人〟と呼ばれるようになった……。
 そしてリュシアスは、たった一人で鉄鉱脈探しの旅に出た。今から三十年前のことである。場所を移動しては、地下深くまで穴を掘った。鉱脈を探るのも、穴を掘るのも、精霊《スピリット》系である土の精《ノーム》の役目である。ドワーフ族は代々、直系の男子として土の精《ノーム》を引き継いだ者が、鉱石の掘削から精錬、加工までの工程で重要な役割を果たしている。
 そして数週間前。
 三十年かけても見つからない鉄鉱脈探しを諦めかけていたリュシアスが、〝竜〟と出会った。
 身長二十センチ程度の老人の姿をしたノームが、螺旋状の金属に見える触覚器《フィーラー》を何本も使って地面を垂直に掘り下げていく途中で何かに気づいた。そこから横穴を掘りはじめ、ぼろりと崩れた壁の向こう側に空洞があり、〝それ〟がいた。
 リュシアスの目に飛び込んだのは、美しい純白のウロコを持つ、大きな知らない生物であった。長い首と尾、そして巨大な翼を身体にぴったりとくっつけるように丸まっていたが、それでも身体の高さは二十メートル近く。恐怖はなかった。ただその美しさに見とれていた。
 いきなり頭を動かした白い生物と目が合うと、耳元で声がした。
 ――助けていただけませんか?
 その巨大な生物は、助けを求めてきた。
 ――〝箱〟がエラーを起こし、勝手に起動して私が生まれました。十年前のことです。ずっと一人でこの狭く暗い場所に閉じ込められています。……助けていただけませんか?
「……どうやって?」
 それが、リュシアスがかろうじて搾り出した言葉だった。それに答えた〝白竜〟の言葉は、リュシアスの理解をはるかに超えていた。
 ――箱の中のコンソールを操作して、プログラム上のエラー箇所を特定し、修正して再起動してください。
「なんだって??」
 ――孵化したにも関わらず、私の身体からインターロック・ケーブルが外れないのです。これが私の行動を制限し、自由に活動することができません。気圧によって、この大きさの空洞を作ったのが精一杯です。
 竜の身体の陰に隠れていた大きな箱らしき物に近づくリュシアス。見ると、箱から一本の太いケーブルが伸びて、竜の白い身体の下に消えている。
 ――コンソールの起動スイッチは、右にある青色の……。
「黙ってろ」
 そう言うと、背中の戦斧に手を掛ける銀髪のドワーフ。三十キログラムを超える鋼鉄製の斧が、空気を唸らせて振り下ろされた。
 バシッ……電気のスパーク音とナノカーボン繊維の切断音が洞窟に響く。
 ――……!!
 見事な切り口を見せるケーブルが転がった。
 戦斧を手にしたまま無骨にたたずむリュシアスの前で、純白の竜が赤い光に包まれた。そして消えた竜に替わって現れたのは……輝く白い髪と、なめらかな白い肌を持つ、美しい全裸のヒューマン族に見える女だった。
 女の声は、耳元で聞こえていた声と同じだ。
「ありがとうございます。よろしければ、名前をお聞かせください」
「……リュシアスだ」
 銀髪のドワーフ族は、頬を赤らめながらも、女から視線を外すことができなかった。釘付けと言っていいだろう。三十年間、一人で旅をしてきた。女を見るのは三十年振りだ。
 その女の言葉に、リュシアスは耳を疑った。
「リュシアス様。あなたのために、何でもいたしましょう……あなたが望むなら、世界を統べる王にいたしましょう」
「……世界などいらぬ……願わくば……お前が欲しい」
 ヒューマン族から見れば老人の姿であるドワーフ族の男が、慌てて視線をそらした。銀色のひげの間に見える顔が真っ赤だ。
 女が胸に手を当てて優しく微笑んだ。
「私の名は、ビャッコ……喜んで、あなたのものになりましょう」
 ノームしか知らない、地下での出来事だった……。

 目の前にビャッコの顔があった。初めて出会った時から変わらない、理知的な美しい瞳。
「地上の戦力は六十八。いくら魔法を操るエルフ族であっても、その族長を守ることは不可能と考えます……族長のエステル様は、リュシアス様の旧友とお聞きしておりますが……」
 リュシアスの表情が厳しくなる。
「俺は……何よりもドワーフ族が大切だ。だが……あの世界を救うための旅もまた、俺にとって……」
「命じてください。あなたをドワーフ族の族長にすることを」
 ビャッコの目は真剣だ。
「私が、あなたを……あっ」
 リュシアスが右手のこぶしで、ビャッコの頭を小突いていた。ひげが盛り上がって、微笑んでいることがわかる。バツが悪そうな顔のビャッコ。
「族長になりたいなら、自分の力でなっているさ。俺の望みは、そういうことじゃない……ついて来い、ビャッコ」
「はい」
 鉄板から飛び降りるリュシアスとビャッコ。再びリュシアスの耳元で声がした。
 ――このまま戦闘に関わるのであれば、報告しておくことがございます
 何だ?……と答えたかったが、わずかに吐いた息は上空に置き去りにされた。
 ――地上には、二体の竜がおります。ゲンブは、私には無力。スザクは生まれたばかりで手玉に取るのはたやすいと考えますが、念のため。
「…………」
 無言のままのリュシアス。視界に広がる地面が猛スピードで迫って来るのを見つめていた。

   *

 地上に落下したドワーフ族の部隊。その数、およそ千五百。その中の三百人程がノームを連れていた。着地と同時に放ったノーム達が、一気に森林を掘り返し、荒地に変えていく。森に身を潜める習性があるエルフ族をあぶり出すためだ。
 一瞬で直径百メートルの広大な荒地が出来上がる。続けてその直径を広げるはずだった……が、止まっていた。円形の荒地のすぐ外側にエステルの簡易住居があり、その前に少女姿のゲンブが立っていた。
「止まったか?」
「はい」
 すぐ横に立つエステルの言葉に答えるゲンブ。
「よし、やれ」
 エステルの指示と同時に、荒地の周囲の地面が盛り上がり、即席の土壁ができあがる。壁の内側では、ノームもろとも地面に足を絡め取られて動けないドワーフ達がもがいていた。
 ドワーフ族の部隊を囲むように、土壁の上に無言のエルフたちが姿を見せた。手には弓を構えている。遅れて壁の上に現れるエステルとゲンブ。
 そこに、何かが飛んできた。間一髪で避けたエステルの白い髪が風に舞い、頬に赤いスジが走って、血が垂れる。高速で回転しながら飛んできた重さ三十キロの両刃斧が作った傷だ。
「くそ、エステルっ! なんだこれは……卑怯だぞ。俺様と勝負しやがれ!!」
 声がした先に、斧を投げたレブリオスの顔があった。それを冷徹に見おろすエステル。
「これだけの数で奇襲をかけた貴様を、対等に扱う必要なし」
 エステルによる魔法詠唱が始まった。ナノマシンにより瞬時にチャージされた荷電粒子が、エステルが広げた手のひらの前に集まる……。
「〈一気通貫《ライトニング》〉!」
 レブリオスを含む直線上にいるドワーフの戦士たちを、雷光が一瞬で貫いた。彼らが身に付けている鉄製の鎧は、電気がよく通る。問答無用だった。
「くそ……これくらいで……」
 それでも倒れないのが、ドワーフ族だ。彼らの身体の丈夫さは半端ではない。歯ぎしりするドワーフ族族長の頭の上から声がした。
「待たせたな、レブ……反撃だ」
「リュシアスか……早くしろ!」
 空中にリュシアスとビャッコが浮いていた。
「ビャッコ姉さん!!」
 ゲンブの叫びを無視して、ビャッコが赤い光に包まれ……大きな白い竜が姿を見せた。

 ~(4)へ続く

コメント

ほほ~
ワープはナノマシンによる分解と再結合によるものでしたか!

なんとなく「ザ・フライ」っていう映画を思い出しましたw

◆Leppardさん
ぎく!
そのまんまですねw
あれはナノマシンじゃなくて、よくわからない仕組みだった気がしますが、まさにそんな感じ。
再構成するのは同じだった気がしますー。
我ながら、結構強引な理屈という気はしていますが……( ̄▽ ̄;

地上5000メートルから落下しても怪我一つしないなんて、どんだけ頑丈なんですかーーー!!!
ってか、それだと エルフの弓矢なんて当たっても蚊に刺されたほどにも感じないのでは?
ドワーフ自身が持っている30キロを超える重さの斧で思い切り切りつけても
切れると思えないです・・・

竜の姉妹喧嘩はどうなるのでしょうね。

あと、ランキングで投票しようとしても受け付けてもらえません(T-T)
ノートン先生が邪魔してるのかしら???

◆Aryuさん
あれですよ、ゴムゴムの……?
実を食べたわけではないですが、割と近い感じの設定です。
そのうち忘れずに本文中で書いておかないといけないですね。
ランキング、投票しようとしてくださって、ありがとうございます。
……私もよくわからないです( ̄▽ ̄;

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