ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ5-4

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3)


 第五話 レッド・グー (4)

 大きな翼を広げて宙に浮く白い竜。その姿は、美しく恐ろしい。ビャッコが咆哮すると同時に空気が震えて、人々の鼓膜がぴりぴりした。
 同時に強い風が吹き始め、ゲンブが築いた土壁がサラサラと崩れだした。岩山が風化する姿を何千年もの間ビデオに収めて、早送りしたらこんな感じかもしれない。砂と一緒に流されるエルフ族たち。
「どうして……ゲンブの方が幼いから?」
 マティの疑問に、カイリが答えた。
「竜たちは、ナノマシンを介して分子を操る……同じナノマシンに二匹の竜が同時に干渉した場合の優先順位が決まっているんだ。火は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱い……」
 二人はエステルの簡易住居のそばに立って、白竜の眼下で崩れる土壁を見つめていた。
「そして、風は火に弱い……風《ガシアス》系のビャッコ姉は、火《プラズマ》系の私が止める!」
 カイリの横で、スザクが赤い光に包まれた。ビャッコの三分の一くらいの大きさの赤い竜が姿を現す。その大きな翼を広げて、飛び立った。
 向かう空では、すでに黒い竜に姿を変えたゲンブがビャッコと対峙していた。大きさはやはりビャッコの三分の一くらいだ。
(ビャッコ姉さん! どうして私たちがいると知って、攻撃するの?)
 ゲンブの思念に、ビャッコが超然と答えた。
(お前も、主人を愛すればわかります……主人の成功を見守るのが、竜の幸せだと)
(ぅああああぁあああああ!)
 体当たりするかのように、真っ直ぐに突っ込んでくる赤い竜を、白い竜が冷静な目で見下ろした。
(おばかさん……系統の優先順位が、力の優先順位ではないのですよ……頭を使わないとね)
 ビャッコが威嚇するように小さく咆えると、何かが起こって、スザクが止まった。
「…………!!」
 カイリの表情が固まった。どきりとするマティ。見ているだけでは、何が起こっているのかわからない。
「どうしたんですか!?」
「ビャッコは……スザクを殺す気か……」
 竜同士が本気で争う時、勝利に直結する戦法があることを、ビャッコが示していた。この方法は、空中にいるビャッコと、水中にいるセイリュウにしか使えない……。

   *

 大地の呪縛から解放されたドワーフの戦士たちが、エルフ族に襲いかかっていた。ここにいる数十人のエルフのほとんどは戦闘員ではなく、縦穴を掘るための作業員である。エルフ族のたしなみとして弓くらいは使えるし、一般の民より腕力と体力があるとは言え……敵戦士との闘いに対応するには、経験がなさすぎた。実質的に、まともな戦力はラウエルが率いる十二人の騎士小隊だけである。
「エステル様をお守りしろ! 騎士隊の意地を見せるんだ!」
 あごひげの隊長ラウエルの号令。一般的な戦闘において、魔道士隊が強力な呪文詠唱を完成させるまでの盾となるのが、騎士隊の役目である。だが今は……攻撃力の要である魔道士隊はここにいない。
「くそ……魔道士隊さえいれば、あんな奴ら……」
 一人の騎士の愚痴が、エステルの耳に届く。ドワーフ族は、特に打撃に対して異常に強いが、刃物による斬撃や魔法に対しては、他の種族と変わらない。ただその底無しの体力が、かれらをしぶとく生かしているだけである。いくらドワーフ族の屈強な戦士でも、強力なダメージを与える〈一気通貫《ライトニング》〉を二回続けて受けて生きていられる者は、ほとんどいない。
 エステルと騎士隊の前で、非戦闘員が殺されていく。エステルの魔法でドワーフ族にも被害は出ているが、数の差がありすぎた。カイ・リューベンスフィアとの接触には気をつかっていたエステルだが、千五百人のドワーフ族と闘うことは想定していなかった。それでもゲンブがいれば何とかなると思っていたのだが……。
 魔法を一回唱えるのに、長い詠唱時間を必要としてしまう。魔道士隊がいれば、多人数による〈一気通貫《ライトニング》〉の一斉掃射も、〈燐射火囲包《ファイアボール》〉の広範囲攻撃も可能なのに……騎士の愚痴は、そういう意味だ。
「ふふ……リュシアスの奴……ゲンブとスザクの戦力を割《さ》かれた以上……この戦力差ではな……」
 一瞬の悔しさに歪むエステルの顔。
 そこに、号令が飛んだ。
「全員、手近な者の手を取れ!」
 よく通る声の主は、レイウルフ。生き残っているエルフ族の全員が、その意味を理解した。
「よろしいですね、エステル様?」
 学者や生活支援者など、戦闘に参加できない者たちを〈離位置《テレポート》〉で神殿まで送っていたレイウルフが、近くまで戻ってきていた。神殿から即席で集めてきた数人の魔道士を連れている。エステルの短い指示。
「急げ」
 そして同時に、魔法の詠唱に入る魔道士たち。エステルは騎士隊を、騎士隊はその近くにいる者を。レイウルフは、少し離れた場所で闘っていた者たちをできるだけ集めていた。
「〈離位置《テレポート》〉……!」
 完成した魔法が、エルフ族たちの足元を白く光らせた。

   *

 空中で停止した赤い竜の身体が、少し膨れてぷるぷると震えていた。スザクの周囲を球状に包んでいるのは、〝真空〟である。空中に存在する窒素、酸素、その他のあらゆる分子と、それらを操っていたナノマシンの全てが、スザクから遠ざけられていた。竜同士は、互いの身体の構成原子にまでは干渉できない。だが、その外側に存在する分子は、それが気体であればビャッコの思うままだ。
 時間の経過とともに、スザクを捕らえた球内の真空度がどんどん上がっていく。身体の内圧でスザクがはじけ飛ぶのは、時間の問題だ……。
 一方、ゲンブはいわゆる〝かまいたち〟現象……真空の刃によって、その身体を切り刻まれていた。目に見える身体の破壊は、竜という精霊《スピリット》系の存在……ナノマシン上で動くプラグラムコードそのものの破壊に直結している。その基礎部分が破壊された時……竜は死を迎えることになる……。
「君が本気なら……覚悟してもらうぞ、ビャッコ」
 その言葉に、マティが息を呑んだ。カイリが、冷めた瞳を見せている。カイ・リューベンスフィアの屋敷で、〈燐射火囲包《ファイアボール》・度等《ブースト》3〉を放った時の、冷徹な瞳。エステルとの高度な闘いで見せた感情の見えない瞳。カイリが、高汎数《ハイレベル》の魔法を使う時の瞳だ。

 高目移行《ランクアップ》・汎数《レベル》6……
 通模《インプット》・要俳《キーワード》……

 驚くマティ。これまでカイリが放った攻撃魔法である〈燐射火囲包《ファイアボール》・度等《ブースト》3〉も〈一気通貫《ライトニング》・度等《ブースト》2〉も、汎数《レベル》4……それであの威力だった。汎数《レベル》6の魔法とは、どれほどの威力なのか……。

 〝静かなる魂〟……〝平穏の海〟……〝時の狭間にて〟……

 スザクの口の隙間から、ぴゅるぴゅると唾液が飛び、その一部が一瞬で沸騰すると同時に、周囲の熱を奪って氷を作る。竜でなければ、とっくに死んでいる超高真空環境である。

 転配《コンパイル》……
 役名《コマンド》……

 カイリ周辺のナノマシンの活動が急激に活発になり、地面が白い光を放ち始めた。そのエネルギーの動きが、汎数《レベル》6相当であることに気づく竜たち。ビャッコが、初めて狼狽した表情を見せた。
 ――完成する呪文。ビャッコがいる空を見上げたカイリの唇が、ゆっくりとその役名《コマンド》を呟《つぶや》いた。

「〈鎮溢《エナジードレイン》〉……」
 キ……ン。そんな音が響いたような気がするマティ。まるで時が止まったように、大きな白い竜の動きが止まった――。
「何が……」
 何が起きたのか。ただごとではないことが起きていることを直感する。
 ビャッコの周囲は、空気の動きさえない。実質的に時が止まっているのと同じ空間がそこに存在した。
「ビャッコ周辺の、あらゆる原子の動きを停止した」
 言葉にすればそれだけのことだ……が。真空を作るのとはわけが違う。高度なナノマシンが存在しなければ実現できない……自然現象ではありえない事態である。
 傷ついたゲンブと、ぐったりと動かないスザクが地上に落ちてきた。二人が赤い光に包まれて少女の姿に戻る。〈離位置《テレポート》〉で一人だけ戻ってきたレイウルフが、ゲンブに駆け寄ってその上半身を持ち上げた。
「ゲンブ、しっかりしろ! すぐに神殿に戻って、〈産触導潤《キュア》〉してもらおう」
「お……お父様……待って……」
 身体中から吹き出す鮮血で赤い水たまりを作りながら、ゲンブが震える右手を持ち上げてレイウルフの胸に当てた。再構成されたエルフ族の衣装もボロボロの布きれになっている。
「ス……ザク……を…………いっしょ……に……」
「しかし……」
 レイウルフとゲンブ、そして少し離れた場所のスザクの周辺を、ドワーフ族の戦士たちが囲み始めていた。目の前で敵に逃げられた彼らの、欲求不満の対象になりつつある。
「ここは、やばい……」
 〈離位置《テレポート》〉の詠唱にも時間はかかる。すでにドワーフ達に囲まれているスザクまで助ける力は、レイウルフにはない。一刻も早く脱出したいレイウルフの背後から声が聞こえた。
「〈翻弄頭《コンフュージョン》〉……!」
 汎数《レベル》4の魔法を唱えたのは、もちろん駆けつけたカイリだ。途端に、混乱し始めるドワーフ達。まるで幻覚でも見ているように、ある者は仲間に切りかかり、ある者は逃げ出していく。
 ゲンブがぽつりと呟《つぶや》いた。
「あいつが……ビャッコ姉さんを殺した……」
 スザクは、意識を失って倒れたままだ。

 ~(5)へ続く

コメント

カイリのことだから、スザクを殺されそうになって怒ったとはいえ
ビャッコを殺してはいない・・・と思う・・・
ので、あとはリュシアスをどうやって仲間にするかですね
そこは若いカイリよりも、経験豊富なエステルの出番でしょうか

◆Aryuさん
この小説でも、少しずつキャラが勝手に動き出したので、どうなるかわからないところも……。
なんとかエンディングに持っていきます。
早く終わらせたいですw

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