ささやかに駅メモ!

駅メモの旅先でたまに娘キャラ活動と出会うブログ
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駅メモ!の世界に足を踏み入れたところ、なんだか楽しいのでそのまま彷徨い始めました。ウロウロ。怖くないですよ?

竜連れ5-5

 
「竜を連れた魔法使い」
目次
 第一話 沈まない太陽 (1) (2)
 第二話 手に入れた力 (1) (2) (3)
 第三話 竜たちの覚醒 (1) (2) (3)
 第四話 エルフの族長 (1) (2) (3)
 第五話 レッド・グー (1) (2) (3) (4)


 第五話 レッド・グー (5)

「やめて、リュシアス!」
 マティが、そう叫んだ時。屈強なドワーフの戦士リュシアスの手から、渾身の力で放たれたウォーアクスがカイリの顔面を襲った。……が、まるでカイリの顔が硬い岩ででもあるかのように、湾曲した大きな刃をもつ戦斧が弾かれて、飛ぶ方向を変えた。
 カイリがエステルと出会う前にあらかじめ唱えていた〈衣蔽甲《シールド》・度等《ブースト》5〉の発動条件は、?周囲の原子速度が急激に変化した場合?と設定されている。それは、飛来した矢さえ止めるほどの発動速度だ。
 うおおおお、という大声とともに、丸い体型からは想像できない猛スピードでカイリに接近するリュシアス。彼のこぶしの連打が身体中を襲ったが、カイリはそれを完全に無視した。瞬間加重が1トンに迫るリュシアスの一撃。それが、全くダメージを与えることができない。
「返せ! 俺のビャッコを返せっ!」
 レイウルフとゲンブの近くにかがんだカイリが、ちらりとリュシアスを見た。銀のひげをもつドワーフの男が、目に涙を浮かべている。
「度等《ブースト》を乗せていない〈鎮溢《エナジードレイン》〉だ……すぐに効果が切れます」
「なに?」
 リュシアスの手が止まる。近くに全身から赤い血を流す少女がいることに、ようやく気づいた。ビャッコを殺したと思っていた男の姿を、懐かしい顔が隠した。目の前に飛んできたのは、マティだ。
「カイリに、なんてことをするのよ、リュシアス!」
「……テク……なのか。どうしてここに……」
 驚くリュシアス。
 カイリがぽつりと言った。
「本来、竜に有効な魔法は、開発者しか知らない?役満《フルコマンド》?だけだ」 
 
 高目移行《ランクアップ》・汎数《レベル》13……
 通模《インプット》・要俳《キーワード》……

 カイリの流暢な呪文が空気を介して、ナノマシンに伝わる。その動きを感じて、気を失ったように見えたゲンブが再び目を開けた。
「ビャッコ姉さんは……無事なの? スザクは?」
「無事よ」
 リュシアスの背後に、気を失ったままのスザクを両腕で抱えたビャッコが立っていた。
「ビャッコ……!!」
 背の低いドワーフが横からビャッコを抱きしめると、腰に抱きついたように見える。顔を赤らめるビャッコ。
「リュシアス……人が見ています……」
 ドワーフの男は、人目をはばからず、おいおいと声を上げて泣いた。
 カイリの長い呪文がようやく終わる。

 転配《コンパイル》……
 役名《コマンド》……

「……〈大産源《リジェネレート》〉」
 空気が震えて、教会の鐘のように厳《おごそ》かな音が辺りに鳴り響いた。〈翻弄頭《コンフュージョン》〉中のたくさんのドワーフ達がその音に驚いて、混乱したまま走り去っていく。その中には、仲間からさんざん切りつけられて満身創痍になった族長レブリオスの姿もあった。
 カイリの?役満《フルコマンド》?によって、ゲンブの身体が白く眩しい光に包まれていく。同時に、レイウルフの右手首も白い光に包まれた。
「これは……」
「ついでです」
 レイウルフに微笑むカイリ。光の中で、ゲンブの削り取られた身体の組織と、レイウルフの失われた右手が再生されていく……。
「お父様……右手が……」
 再生中のレイウルフの右手を自分の頬に寄せて涙を流すゲンブ。
 リュシアスが驚嘆の声をもらした。
「こんな魔法は見たことも聞いたこともない……テク……この男は、まさか……」
「そうよ、リュシアス。あなたが殺そうとした男は、私たちが九十年待った……二十一代目のカイ・リューベンスフィアです。私が一緒にいる時点で、気づいてほしかったわ」
 まるで子供を叱るように振る舞うマティを前にして、リュシアスが縮こまった。
「す……すまん」
「戻りますか、リュシアス?」
 ビャッコがマティを睨んだままそう言った。彼女は、リュシアスに対するマティの態度が気に入らないようだ。
「いや、そうはいかん」
 真剣な眼差しをカイリに向けるリュシアス。
「また……旅を始めるんだな?」
「ええ……九十年前に先代とあなた達が目指した場所を、今度こそ見つけます」
 カイリの瞳もまた真剣だった。それを受けて、少し表情を崩すリュシアス。
「その……アテはあるのか?」
 黙って頷くカイリに、リュシアスはそれ以上聞かなかった。アテがあるにこしたことはないが、確かめたかったのは、二十一代目のカイが本気かどうかである。
「本気らしいな……よし、俺もつき合うぞ」
「それは助かります。先代の日記に書かれていたあなたの活躍には、目を見張るものが……」
 カイリの言葉が終わらないうちに、リュシアスが手をつかんできた。その手から、?世界を救いたい?という思いが伝わってくる……。そこにさらに手を重ねる者がいた。
「私も行きますよ」
 レイウルフだった。
「エステル様から命を受けています。?ゲンブを連れて、世界を救いに行って来い?と……。あなたが右手を治してくれた恩は、必ず返します。それから、今さらですが……」
 言いにくそうな表情のレイウルフ。少々、声がうわずった。
「マナオスの森であなたに矢を放ったのは私です……申し訳ありませんでした」
 レイウルフが言っているのは、カイリが初めてマティと出会った時のことだった。今さらそのことを謝られるとは思っていなかったカイリは、びっくりした。
「いえ、事情は、エステルさんから聞いています……気にしないでください」
 一度、エルフ族の中央神殿エリアに戻る案も出たが、リュシアスがきっぱりと断った。ドワーフ族の誇りが許さないらしい。長い間戦争を続けてきた二つの種族である。その間に失われた命のことを思うと、エルフ族と共に旅をすることに対してさえ、リュシアスの胸の内は複雑だった。それはエステルも同じで、二人が難しい関係にあることは、過去のカイ・リューベンスフィアの日記にも書き残されている。
 結局、レイウルフの提案にリュシアスが妥協して、今夜は川の近くにあるエステルの簡易住居に皆が泊ることになった。
 意識を取り戻したスザクが、目をこすりながら身体を起こした。ビャッコが地面に立たせる。
「ビャッコ姉……もう終わったの?」
 間抜けなセリフに、ビャッコが溜息をついた。
「不本意だけどね……あんたの主人には、勝てないわ」

   *

 簡易住居の中。二つのテーブルを寄せて作られた食卓から、食事が片付けられた後。カイリが皆を前にして、?世界の滅び?について語った。それは、昼間にエステル達に伝えた話の続きである。旅の仲間に話しておくべきことだと思っていた。
「数匹のナノマシンが世界に放たれた数年後……最初に異変に気づいたのは、天文学者たちだった」
 この世界にも天文学者がいることを、カイリは日記の知識から知っている。太陽の周期活動に対する研究が特に進んでいるようだ。未だにナノマシンをよく理解できないレイウルフでも、天文学者については知っていたので、カイリは話を進めた。
「地球の自転が減速し始めている……それに合わせて、月も遠ざかり始めている……と気づいた」
 天文学の知識については、カイリも乏しい。なぜそうなるのかは、よくわからないが、そのことはカイ・リューベンスフィアの屋敷で最初に手にした本――?沈まない太陽?と題された本――に、しっかりと記されていた。
「ナノマシンが地表を覆ったことが……地球の磁場や引力に影響を与えたのだろうと言われている。それが、誰にも予想できなかった……?誤算?だ」
 皆が、ぽかんとした表情をしている。地球の自転とその速度が変わることについて、すぐに理解できる者はいなかった。?月?という存在さえ知らないのだ。最初は説明を試みたカイリだったが、すぐに諦めて続きを話した。
「自転の減速がどこまで進むかは、観測結果を元にすぐに当時のコンピュータが答えを出した。……それが、今の公転周期と一致した状態だ。その惑星で生物が生き残る可能性があるとすれば、昼と夜の境界……太陽が地平線に張り付いて見える赤い世界の中だけだった……。当時の研究者は、その世界を?グレイ・グー?にちなんで、?レッド・グー?と呼んだらしい」
 九十年前からエステルが用意していたというワインを一気にあおったリュシアスが、グラスをテーブルに置いた。
「よくわからんが……今の世界を、昔の世界に戻すという話なら、俺はおりるぞ」
「それなら、あと三年で世界が滅びるとは言わんだろう……そのワインは、貴様のために用意したものではないんだがな」
 いつの間にか部屋の中に立っていたのは、エステルだった。〈離位置《テレポート》〉とは、便利な魔法だ。
「げ……エステル!」
 狼狽するリュシアスを見て、エステルが笑っている。
「はははっ、その老体に鞭打って、また旅に出るそうだな」
「お前が一緒じゃなくて、せいせいするわ!」
「おやめください、お二人とも……」
 オロオロと止めに入るレイウルフ。マティは、笑って見ているだけだ。
「もちろん、そうじゃないよ、リュシアス」
 すでに呼び捨てにすることに決めていたカイリが声をかけると、リュシアスとエステルが振り返った。
「レッド・グーに生物が生きている可能性があると言ったけど、それはカビのような原始的なものだ。俺達のような人類が生きていられるのは、その後に開発されたテラ・フォーミング装置のおかげなんだ」
「てら……?」
 間抜けな顔を見せるリュシアス。上空の強烈なジェット気流を作り出している装置のことだが、造られたのは今から五千万年近く前のことだ。この世界の人々が知らないのも無理はない。ともかく……とカイリがまとめた。
「あと三年で、その装置が破壊される事態が起こる……。それを防ぐのが、俺達の目的だ」
 夜だと言うのに、窓からは明るい光が射している。その窓の外に細身の人影があった。
「いくら竜がいたって……お前達に、アレを防げるのかよ……」
 独り言を漏らした女性が、ブラウンヘアーを風に揺らせた。〈離位置《テレポート》〉を唱えて消えた後には、髪の毛一本さえ残らない……。

 ~第五話完、第六話へ続く


コメント

前回、正義の主人公として、怖い場面があり
姉妹での戦いもあってハラハラしましたが
今回でまるく治まってよかったです。





 

◆Leppardさん
とりあえず物語も、種明かしも一段落というところですが……我ながら設定の説明部分を読んでいてイヤになります。
うまくドラマに紛れて説明しようとすると、いつまでたっても説明が終わらないし……難しいです( ̄▽ ̄;


カイリのPTはリュシアスとビャッコ。レイウルフとゲンブが加わって一段落ですね。
それにしても、サルネイアはいまだ謎がおおいです。
その行動原理やカイリに匹敵する知識をどこから得たのか・・・。
それに、最後のセリフ
「いくら竜がいたって……お前達に、アレを防げるのかよ……」
は、サルネイア(または他の誰か)なら防げるともとれますが、
竜がいても、何をしても止められない。という投げやりな態度にもとれて
3年後にテラ・フォーミング装置になにが起こるのか
地球滅亡の原因について考えさせられます。

◆Aryuさん
いつにもまして鋭いコメントっΣ( ̄▽ ̄;
サルネイアについては、5-2でLeppardさんも気にしてくれていたので、作者としてはありがたい反応です。
背景世界を説明するのに、ここまでかかってしまいました。
物語や人物に関する伏線を収束させたり、新たな展開を見せるのは、これからになります。
うまく盛り上げてまとめられるといいのですが……どうなりますことやら。

面白い
世界観も良い

でも全てのページが重すぎて開くまで時間を食い過ぎる
読み物を載せるサイトとしては酷い

物語は面白いのに…他のサイトと比べても一番ストレスがたまるレベルです

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